　日本人大リーガーの代表は野茂英雄だ。ノーヒットノーラン２回、通算80勝（2001.7.26）の実績は立派と言うほかは無い。彼と郷里が同じで、しかも近鉄ファンの私にとってはまさに英雄である。近鉄で奪三振王はじめ投手のタイトルを総なめにしたとき、大リーグでトルネード旋風を巻き起こしたとき、そして今年レッドソックスで復活したとき、彼が輝くと嬉しくて似顔絵を描かずにいられない。ところで最初に描いた近鉄バージョン（'90）は良い出来ではなかった。原因は“口”だ。当時私は「野茂の口は“たらこ唇”」という先入観から抜けきれなかった。実は野茂は“たらこ唇”ではなく“おちょぼ口”だ。ドジャースバージョンを描くときそれに気づいたので、自分自身でおちょぼ口を真似しながら描いた。これで似度はぐぃっと上がったが、長時間の“おちょぼ口”はちょっとした唇の筋肉痛を招いた。

　中央は近鉄バージョンのたらこ唇をおちょぼ口にしたもの。これをさらに進化させるとドジャースバージョンになる。近鉄バージョンはひょんなことからNHKの「大リーグ特集」のタイトルバックに使われた。事前に番組のどこで使うか知らされてなかったが、マスコットみたいに番組中ずっと使うのかとふてぶてしくも思っていた。家族が見守る中、番組の冒頭で突然画面いっぱいに私の野茂が映し出された。一瞬喜んだがたった数秒で消えてしまいそれきりだった。親戚に電話する暇もなかった。