〜想い出の西部劇・音楽/2〜
 
 想い出の西部劇映画や俳優なんて、半世紀前のことを今さら、と思っていたのですが、
一度書き出すと次から次へと記憶が蘇り、簡単にはすまなくなってきました。

 前頁の続きとして、J.ウェイン、G.フォード、G.クーパー、B.ランカスター以外の
俳優や映画の想い出を綴ってみたいと思っています。
 この写真の俳優以外にも、ロバート・テーラー、グレゴリ−・ペック、
ロバート・ミッチャム、ランドルフ・スコット、レイ・ミランド、ロリー・カルホーン等など、
想い出の西部劇俳優を挙げだすとキリがありませんが…。

 
             H.フォンダ」                  「A.ラッド」      「J.スチュアート」                「A.マーフィー」 

 
 ★ 心に残る西部劇映画・俳優/2

 5.西部劇では頑固者:ジェームス・スチュアート


私にとってのジェームス・スチュアートは、
現代劇のほうに、想い入れの強い作品が沢山あります。

「グレン・ミラー物語」「知りすぎていた男」「裏窓」「めまい」は、
ジャンルを超えた、全ての想い出の作品中でも、
上位にランクされるものばかりです。

「翼よ!あれが巴里の灯だ」「連邦警察」「媚薬」…、他にも好きな映画はいろいろあります。
 
背が高く、ヌーボーとした風貌ということもあって、
優しく温かい人柄を演じることが多かったようですが、きっと実像も変わらないのでしょう。
彼の話す言葉は、何となくシャ・シ・シュ・シェ・ショという発音が耳に残り、
そこらあたりも、素朴でお人よしというイメージを与えていたのかもしれません。
 「グレン・ミラー物語」が、私の洋楽への入り口になっただけに、特別な俳優でもあります。

 とは言え、彼はジャンルを超越した俳優でしたから、
子供の頃から、ジョン・ウェイン、ゲーリー・クーパーなどと一緒に、
彼の西部劇映画も沢山観ました。
 そして、西部劇での彼は、ただ寡黙でお人よしという感じではなく、
どちらかというと、自分勝手で意固地な役を演じることが多かったような印象があります。
 
「ウインチェスター銃‘73」

彼には、拳銃よりライフルのほうが向いている
と思い込んでいるのは、
恐らくこの映画のイメージが、
いつまでも残っているからだと思います。
拳銃の決闘でも、ゲーリー・クーパーのような
早撃ちシーンが印象に残っていないせいもあります。

 独立記念日の行事として、射撃大会が行われている町へ、
風采の上がらない男がやってくる。腕に自慢の彼は、
名品といわれる優勝商品のウインチェスター銃73年型を、
必ず手にすることができるという、自信があった。
コンテストに出場した彼は、次々と、遠くにある標的を撃ち抜いては、
勝ち上がっていく。そして見事優勝し、念願のライフルを獲得する。
ところが、父親を殺した男の兄に、大切な銃をあっさり奪われてしまう〜。

 彼は、友人と共に憎い敵をやっつけ銃を取り戻すために、旅に出る。〜
その後、ストーリーはウインチェスター銃が、
様々な人間の手に渡っていくエピソードがメインになり、
悪党からインディアンに、またアウトローにと、銃が転々と持ち主を替え、
最後は、宿敵との決闘によって、めでたく銃を取り戻すという話でした。


 
この映画を観た後、「妖刀村正」という時代劇の本を読んだ憶えがあります。
刀が血を求めて、持ち主が変わるたびに凄惨な殺しが起こるという、
おどろおどろしい話でした。
この映画も銃が主人公という、ややサスペンス・タッチの異色西部劇でした。
 悪党役で、ダン・デュリエが出ていましたが、
彼は、当時の西部劇映画では欠かせない脇役でした。
東映時代劇でも、原健作、薄田研二、上田吉二郎などの、
曲者が忘れられませんが、さしずめ原健作タイプといったところかもしれません。
ダン・デュリエはもう少しチャーミングで、憎めない悪役といった感じでしたが…。
上田吉次郎は、リー・J・コップやアーネスト・ボーグナインあたりでしょうか。

 この映画では、銃に対する執念や、射撃の腕前はもの凄いのに、
格闘となるとからっきしという、いかにもジェームス・スチュアートらしい役柄でした。
ジョン・ウェインなら、ライフルでも格闘でもおまかせ、といったところですが、
ここらへんが、彼の西部劇映画の特徴でした。

 若き日の、シェリー・ウインターズも出ていましたが、
彼女の映画で忘れられないのは、
「黄金の銃座」です。
ロリー・カルホーンまでたどり着けたら触れてみたい、想い出の映画です。
彼女は晩年、太っちょおばさんとして、いくつかのパニック映画に出演しましたが、
50年代の美しい彼女を知っていただけに、できれば止めて欲しかったものです。
まあ、イングリッド・バーグマンやジェニファー・ジョーンズも、
晩年まで頑張っていたのですから、それを思えばまだましかもしれませんが?。
ストーリーをよく憶えているのは、その後リバイバルでも観たせいでしょう。
 
「折れた矢」

こちらのほうが異色といえそうです。
金鉱探しをしていたジェームス・スチュアートが、
インディアンの娘を見初め、
結婚して幸せに暮らしていたのに、
ある日、白人に妻を殺されてしまうという
悲運のストーリーでした。

 インディアンの酋長を、ジェフ・チャンドラーを演じていましたが、
彼は銀髪のせいで、年齢不詳の俳優というイメージが強く残っています。
インディアンを主題にした映画は、あまり好きではありません。
 ただ、インディアンの娘役を演じたデブラ・バジェット…、
プレスリーの
「ラヴ・ミー・テンダー」にも出演したカワイコチャンですが、
「捜索者」のナタリー・ウッドとイメージが重なります。
人気絶頂のプレスリーと、ナタリー・ウッドが結婚するのでは、
と噂されたことがあったことを想い出します。
 話しが違う方向へいきそうなので、止めておきますが…。
 
「怒りの河」

友情と裏切り、復讐への執念、
西部劇映画のお約束どおりのストーリーです。
インディアンとの戦いや、クライマックスの格闘シーンなど
それなりのアクション場面がありましたが、
あまり心に残っていません。

開拓時代のストーリーは、あまり好みではありません。
「大いなる西部」「リバティ・バランスを撃った男」「シェナンドー河」「西部開拓史」など、
大自然の讃歌とか、ヒューマン西部劇というのをあまり好きではありませんから、
映画に関しては、かなり幼稚な嗜好ということになりそうです。
 
「裸の拍車」
ジャネット・リーがきれいだった、ということだけ良く憶えています。
ジェームス・スチュアートが賞金稼ぎで、彼が捕まえた男が、
ロバート・ライアン、それに他の男達も絡んで、護送の旅をするなかで、
彼女を巡って醜い争いをする〜。
大人になってから観れば、もう少し面白いと感じたはずです。
 
「遠い国」

この映画は比較的よく憶えています。
恐らくリバイバルでも上映されたのでしょう。
舞台がカナダやアラスカで、雪のシーンがでてきたり、
アラスカの金鉱探しがあったり…
その後観た
「アラスカ魂」と似ていますが、
こちらの映画のほうが、大自然の描写がきれいでした。

 ジェームス・スチュアートと友人のウォルター・ブレナンは、
牛を売って金鉱の採掘権を得ようと、はるばるアラスカまで牛を運んで行く。
途中、殺人の嫌疑をかけられたところを酒場の女:ルース・ローマンに救われたり、
酒場の主で、町を牛耳っている悪党に牛を奪われるが、それもなんとか取り戻す。

 ようやくアラスカで金鉱探しを始めた2人だが、今度は金を狙われる〜。
自分勝手で他人の事など気にもしない、ジェームス・スチュアートだったが、
苦労を共にしてきた友人を、悪党に殺されるに至って、ついに立ち上がる。


 クライマックスで、彼が、決着をつけるために町にやって来るシーン…、
馬の鞍に付いている、小さな鈴の音だけが、チリン・チリンと聞こえてきて、
酒場で待ち受ける悪党同様、こちらも緊張してゾクゾクしたものです。
早撃ち対決ではないので、もう一つピンとこなかったのですが、
なかなか迫力のある決闘シーンでした。

 この映画でジェームス・スチュアートの友達役を演じた:ウォルター・ブレナン、
彼は、西部劇映画では欠かせない脇役としておなじみです。
ゲーリー・クーパーの西部劇で好演していたのですが、題名を想い出せません。
「打撃王」にも出ていましたから、幅広い役をこなす俳優だったようです。
 印象深い2つの作品は、
「荒野の決闘」で、ヘンリー・フォンダと対決する、
悪党クラントン役と、
「リオ・ブラボー」での、ジョン・ウェインの片腕役です。
 映画ファンというのは、主役より脇役に優れた俳優が出ていると嬉しいものですが、
彼は特に存在感のある演技で、映画に厚みを与えた名優と言えるのでしょう。
 
「夜の道」

この映画を観た事は間違いないのですが、
オーディ・マーフィーが殺されるシーンや、
ダン・デュリエが、相変らずにやけた顔の
悪役を演じていたことぐらいしか憶えていません。

 50年代、オーディ・マーフィーやランドルフ・スコットは、
一番親しんだ西部劇俳優で、彼らの映画は途切れなく観たものです。
彼らには、ガンマンのイメージが今でもしっかりあるのですが、
ジェームス・スチュアートや、グレゴリ−・ペックは、西部劇をいくつも観たのに、
どうもしっくりしません。
恐らく、私のイメージするガンマン像が、彼らには無いせいだと思っています。
 
60年代以降も、
ジェームス・スチュアートの西部劇映画は
いくつも上映されましたが、あまり気に入ったものはありません。
50年代初めに観たもののほうが、
本格西部劇として面白かったはずですが、
残念ながら、リバイバルされたもの以外あまり憶えていません。

成人してから観た中では、
「スタンピート」が、
やや正統派西部劇だったかな、と感じているぐらいです。


 ジェームス・スチュアートは、何と言っても現代劇が良かった、
というのが私の結論ですから、どうしても西部劇の印象は希薄になります。
西部劇映画の主題曲も、
「西部開拓史」で使われた「グリーン・スリーブス」 
「リバティ・バランスを撃った男」
位しか思い浮かびません。

 ということで、そろそろ次へ移りたいと思います。

 
6.スタイリスト・ガンマン:ヘンリー・フォンダ
 

 ジョン・ウェインやバート・ランカスターと同じように、彼の物まねは得意です。
襟を立て、胸を張り、まっすぐ下ろした両腕をやや前後に揺らしながら、
かかとに重心を置いて、ゆったり歩く姿は彼独特のスタイルです。
 サミー・デイヴィス・Jr.なら、ジェームス・キャグニー、ハンフリー・ボガート、
ジミー・スチュアート、マーロン・ブランド、ケーリー・グラント、ジェリー・ルイス、
そしてディーン・マーティンなどなど、得意な俳優も沢山いるのですが、
こちらは日本人、彼らの、しゃべりのまねまではとてもできないというものです。

 ヘンリー・フォンダはかなりのスタイリストで、気取った仕草が魅力ですし、
体型的にも、ガンベルトがよく似合う俳優です。
ゲーリー・クーパー、グレン・フォード、ヘンリー・フォンダの3人が、
私のお気に入りガンマンなのは、ともかく彼らはサマになっているからです。
  
「荒野の決闘」

繰り返しテレビで放映されていますから、
ストーリーはよく憶えています。
ジョン・フォード作品では
「駅馬車」と双璧を成す
名作なんでしょうが、なんと言っても
「駅馬車」では、
折角の1対3の決闘がライフルですから、好みに合わないのです。
ジョン・ウェインが、拳銃ではなくライフルを得意にしたのも、
よくわかりますが、やはり、ガンマンたるもの拳銃の早撃ちが命です。

 メキシコからカリフォルニアへ牛を運んでいた途中、
アリゾナのトゥームストンへ立ち寄るワイアット・アープとその兄弟。
夜、町へ繰り出す兄貴達の留守をまかされた末弟は、
何者かに殺され、牛も盗まれてしまった。
 クラントン一家がその犯人であると踏んだワイアットは、
保安官となってトゥームストンに留まる事を決意する。
町では賭博師ドク・ホリデイと知り合い、次第に友情を深めていく一方、
ドクを追ってやって来たクレメンタインという名の美しい婦人に一目惚れするワイアット。
 やがて、ドクの愛人チワワが、殺された末弟のペンダントを持っていた事が発覚。
それは、クラントンの息子に貰った事が判明する。

…そして映画は、宿敵クラントン一家が待ち受けている夜明けのOK牧場の決闘へ〜。
激しい銃撃戦によって、クラントン一家を全員倒したものの、ドクも死んでしまう。
生き残ったワイアットとヴァージルは、父への報告の為に町を去って行く。


 見送るクレメンタインと再会を約束して、ワイアットが遠ざかっていくラスト・シーンは、
何度観ても感動的で、映画史上に残る名シーンと言われるのも納得です。
「マイ・ダーリン・クレメンタイン」 は、西部劇音楽で最も有名な曲になりました。

 大人になってから観ると、かなりストーリーも素朴で、
1万頭の牛が一夜にしてどこかへ消えてしまうなど、納得のいかないところもありますが、
愛あり、友情あり、ガン・プレイあり、そして心に残る大西部の描写や音楽ありと、
およそ西部劇に求められる全ての要素を満たしてくれる、素晴らしい映画です。

 ホリディが、病身ゆえにクレメンタインの愛を拒否し、彼女のもとを去って行くシーン〜。
チワワがドクにペンダントを貰ったと嘘をついたため、馬を乗り継いでワイアットが追いかけ、
先回りしたワイアットとドクがいよいよ、早撃ちの決闘をします。
 一瞬ワイアットの抜き打ちが早く、ドクの拳銃を飛ばすのですが、
これが、二人とも歩きながら近づいてきたなと思ったら、立ち止まらずいきなり撃ちあい…。
あっけない幕切れでガッカリしました。折角の対決、もう少し緊迫感が欲しかったところです。

 OK牧場での決闘も、せいぜい最後にクラントンのオヤジが立ち去ると見せかけて、
馬上から振り返りワイアットを撃とうとする瞬間、弟のバージルが柵に座ったまま、
腰撃ちで連射するところがカッコ良かったぐらいで、他は大味なものでした。
 ワード・ボンドの映画も沢山観て好きな俳優ですが、いつもジョン・ウエインの後見人といった
雰囲気がありましたから、彼のさっそうとした早撃ちを観たのは、後にも先にもこれだけです。

 教会の棟上式にダンス・パーティをするのですが、クレメンタインと踊る彼の姿は最高でした。
西部きっての早撃ちなのに、弟ならずとも、“なんてざまだ!”と言いたくなるような、
それでいて、当時の西部の男の朴訥な味がよく出ていました。
 ヘンリー・フォンダは実生活では、かなりの発展家だとゴシップ記事を読んでいましたから、
ドクの恋人を好きになって、積極的にモーションをかけるところなど、いかにもという感じでしたが〜。

 
古典的名画ですが、彼はこの映画でガンマンのイメージができたのでしょう。
リアル・タイムに観た西部劇映画では、ほとんど名うての早撃ち役でしたから…。


 
「胸に輝く星」

  下へ続ける予定です。


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