7-@ テナー・サックス・プレイヤー
 
■ 「Tenor Saxophone」

 
レスター・ヤング、ワーデル・グレイ、デクスター・ゴードン、
ハンク・モブリー以外の、サックス奏者、…思いつくまま…。
そして、アルト・サックス・プレイヤーへ続けたいと思います。

 
  


 ・コールマン・ホーキンス (創始者としての貫禄)

 ■ 「Coleman Hawkins」

 テナー・サックスを、ジャズ分野で、メジャーな楽器として
定着させた、“テナー・サックスの父”と言われています。
ニュー・オールリーンズ・ジャズなどでは、サックスは、あまり使われず、
その後も、アンサンブルのための、一楽器にすぎなかったのです。
 初期の頃から、50年代全盛期を通して、ジャズの花形楽器は、コルネットや、トランペットでした。
トランペット、トロンボーン、クラリネットのアンサンブルは、オールド・ジャズの典型的な音色で、私は、今でも、
その心地よい、ミックス・サウンドの醍醐味を味わっています。

 彼のテナー・サックスのスタイルは、力強く、グイグイと吹くことで、男性的な音色が人気のようですが、
特に初期の演奏では、スムーズな、メロディの流れを感じません。それに、チョッと上ずった音程が気になり、
音色も、私好みではありません。
 レスター・ヤングとも、何度か共演していますが、流れるようなフレージングを奏でる、レスター・ヤングに対して、
コールマン・ホーキンスのテナーは、スタッカート・プレイによる、断続的で、強引なスタイルです。
 二人の魅力の差は歴然としています。

 
1924年には、もうフレッチャー・ヘンダーソン楽団の、花形ソロイストとして人気者だったらしく、
彼のテナー・サックスの音色に慣れていた楽団員が、その後入団したレスター・ヤングを冷遇したという話は有名で、
モダンなセンスを理解できなかった、当時のバンドの体質がわかるような気がします。
 フレッチャー・ヘンダーソンのテナー・マンとしては、ホーキンスやウエブスターに比べて、
チュー・ベリーのほうが、同じエネルギッシュなプレイといっても、ずっとソフトな音色で、スムーズで、好感が持てます。

 

「Body And Soul」
 
お馴染みのラブ・バラッドですが、ほとんどをアドリブで歌い上げ、ホーキンスのソロの極致と言われています。
十分なテクニックと創造性は感じるのですが、私が、テナー・サックスに期待する、心地よい安らぎを、
彼のプレイから感じ取れません。

 私の好みとは別に、男のダンディズムを匂わせる、テナー・サックスの第一人者にして、
優れたクリエーターであったことは理解できます。

▽ 1944年: 「The Complete Coleman Hawkins」
 
「Just One Of Those Things」 「Night And Day」
 テディ・ウィルソンの、軽快なピアノにもかかわらず、グリグリとソロ・プレイを繰り返す、ホーキンスのサックスに、
スタンダード・ミュージックの美しさ、くつろぎは、感じられません。

▽ 1957年: 「Monk's Music Thelonious Monk Sextet」 これは、セロニアス・モンクのアルバムです
「Ruby,My Dear」
 モンク・ワールドに包まれて、ホーキンスのスロー・バラッドが優しく、
あまり感情移入しない、素直なテナーが聴き所です。 

「Well, You Needn't」
 たどたどしい感じの、コルトレーンのテナーと、手馴れたホーキンスの差が聴き取れます。


・「Off Minor」

 ホーキンスの、説得力のあるテナー・プレイが良い感じです。 

「Epistrophy」
 テーマの分厚いサウンドと、ソロ・プレイが見事にハモッていて、ここでの、コルトレーンのソロは、
モダンで感じがよく、ホーキンスも味が出ています。
 ドラムのアート・ブレーキーも、力強くリズムを刻んでいます。
アルバムを通して、感じるのは、モンクの音楽に、ホーキンスのテナーが、よく合っているということで、
さすがに一流テナー・マンであることを証明しています。
所々に、連携のミスが見られるようですが、曲の流れに全く関係ありません。

 このアルバムは、モンクのオリジナル・ナンバーで占められていますが、モダン・スィング(?)ともいえる、
斬新なアイディアに満ちた、素晴らしいアルバムです。
三管編成にもかかわらず、重厚なハーモニーを生み出していて、
モンクの豊かな音楽センスを感じさせ、好感が持てます。 

▽ 1957年: 「The Genius Of Coleman Hawkins」 

・「Ill Wind」 「The World Is Waiting For The Sunrise」 「I Wished On The Moon」

 このアルバムでの彼は、感情をおさえた、モダンなプレイに終始し、素晴らしいものがあります。
加えて、バックをつとめる、オスカー・ピーターソンも、なぜか嫌味の無い、
素直なプレイに終始していて、好感が持てます。
スウィング系のピアニストとして、過度な装飾的プレイさえしなければ、
きっと好きなピアニストになっていたと思うと、残念です。

▽「Masters Of Jazz: Coleman Hawkins / Lester Young」
 ホーキンスの54〜68年までの、そしてプレスの51〜56年までの演奏を
単純にまとめただけのアルバムですが、気に入らないのは、プレスよりホーキンスのほうが
良い演奏をしていることです。
 このアルバムをもって、二人のアーティストの実力を評価されたらたまったものではありません。
ということで、このCDは購入してから1度聴いただけでお蔵入りしています。

 
テナー・サックスという楽器が、本来的にもつ性格…男性的な、豪放さ、野性味等を、
コールマン・ホーキンスが追求したとすると、もう一つの、この楽器の魅力…
上品で、優しく、豊かな音色、流れるようなスィング感の表現を追求したのが、レスター・ヤングで、
私は、レスター・ヤング・スタイルが好きなのです。

  厳密に言えば、男性的な音を嫌いというわけではなく、
一般的に、彼らは、ヴィブラートを効かせて、感情表現する事が多く、
また、スィング感や、ハーモニーに対する、デリカシーに欠ける場合が多いから、嫌なのです。

 
 ■ 「London 1」

 私は、ブルースが嫌いではなく、様々なスタイルの、
ブルース歌手にも興味がありますが、
R&Bでの、ブローするテナー・サックスを、
特に嫌いではありません。…でも、ジャズには、気品が必要なのです。
あの、カンザス・シティ・ジャズにも、レスター・ヤングが不可欠だったように…。


 ・ベン・ウエブスター (最も苦手なプレイヤー)


▽ 1932年:「Bennie Moten's kansas City Orchestra」: 「Moten Swing」 「Prince Of Wales」
 初期の、彼のサックスを聴く事が出来ますが、レスター・ヤングのお父さんのバンドで学び、
カンザス・ジャズの中枢で、サックスを吹いていたらしいのですが…、納得できません。
 ビリー・ホリデイや、ジョー・スタッフォードのセッションで聴く、彼のソロは、テナー・サックスが、
曲全体のハーモニーを乱している、と言わざるをえません。
(これは、個人的感情に基づいた偏見といったものですが。)
 フレッチャー・ヘンダーソン、デューク・エリントンなど、ビッグ・バンドでのスィング・ナンバーでは、
音色以外に、特に気になるものはありません。


▽ 1957年: 「Soulville」 このCDを買ってしまった事が、悔やまれます。
荒い吐息の聞こえるような、ヴィブラートをきかせて得々として吹く、
ウエブスターのテナーには我慢できません。
コールマン・ホーキンスの音色もあまり好まない私ですが、そんなレベルではありません。
気持ち悪いのです。
 
 ベン・ウエブスターのことを考えると、いつも、サム・テイラーを思い出します。
50年代中頃
「Harlem Nocturn」  のヒットがさきがけとなって、
 “ムード・テナー・ブーム” がおこったのです。
彼のテナーは、ウエブスター同様、ヴィブラートを効かせた嫌らしいもので…。
考えてみると、彼のせいで、スロー・ナンバーに、ヴィブラートをきかせるプレイヤーを、
すべて嫌いになったのかもしれません。

でもその頃、同じ路線の、ジョージ・オールドのレコードは、かなり気に入っていたので、
私の好き嫌いの基準は、全くの気まぐれといえるかもしれません。



 ・ソニー・スティット (変わらぬスタイルが見事)

  
■ 「Sonny Stitt」

▽ 1949年: 
「Sonny Stitt /Bud Powell /J.J.Johonson」
 
アルト・サックスが本業なのに、パーカーと似ている事を嫌って、
テナー・サックスで、プレイしたという彼ですが、
このアルバムは、好きなバド・パウエルの魅力も、一杯詰っています。

「All God's Chillun Got Rhythm」 「Sonny Side」
 いきなり、スティットのハードにスィングするテナーで始まり、パウエルのピアノも、
同等の立場でガンガン弾きまくり、圧巻です。


「Bud's Blues」
 ブルースで聴く二人の魅力は、格別で、
黒人の生まれながらにもっているフィーリング、ぴったり息のあったプレイ、申し分ありません。

「Sunset」
 技術的にも完成された、スティットのソロが光るバラッドです。


「Fine And Dandy」
 溢れるアイディアを抑えきれないような、二人のスピード感あるプレイに魅了されます。
バド・パウエルは、自分のアルバムのようにガンガン弾きまくっています。

「Strike Up The Band」 「I Want To Be Happy」 「Taking A Chance On Love」
 スティットのソロはますます冴えわたり、触発されたようにパウエルが、見事なプレイを聴かせます。

 
このアルバムは、ビ・バップを好まない私の、数少ない、大好きな一枚です。
バド・パウエルが、サックスと同等に渡り合って、これほど熱の入ったプレイを披露する事は、
他に無かったはずです。
技術を超えて、歌心が伝わってくる、二人のアーティストに心が踊ります。

 
■ 「London 2」


▽ 1961年: 「Boss Tenors」

Gene Ammons(ts) Sonny Stitt (ts,as) John Houston (p)
Charies Williams (b) George Brown (ds)
ジーン・アモンズとソニー・スティットの、
テナー・バトル再演アルバムです。レスター・ヤングの
影響から出発して、独自の野太いスタイルを確立した、
ジーン・アモンズをさす言葉:ボス・テナーが、このアルバムでは、テナー・デュオを指しています。

「There Is No Greater Love 」
 
ソニー・スティットは、アルト・サックスを吹いていますが、テナーと変わらないスムーズなプレイです。
ジーン・アモンズのテナーも上品で、スィング感、一体感が心地よいナンバーです。

「The One Before This」

 二人のテナーでは、ジーン・アモンズのほうが、線の太さを感じさせますが、
どちらも嫌味のない音色で、好感が持てます。

「Autumn Leaves」
 スムーズで、スィンギーです。
アモンズのテナーは、デクスター・ゴードンより、柔らかく、ワーデル・グレイより、
力強いといった適度な音色で、心地よい響きがあります。
 チョッと、バイブレーションが入るのが気がかりですが、サックスで聴く、
この曲も、また違った魅力があります。

「Blues Up And Down」
 
メロディの良さ、バトルの楽しさ、スィング感とも文句無く素晴らしいナンバーです。
ソニー・スティットのテナーは、いつものように、目まぐるしいばかりのバップ・フレーズを
披露していますが、あくまでも、スィンギーです。
段々熱くなってくる、アモンズのテナーもスムーズで、
チョッとレスター・ヤングを思わせるフレーズも聴かれて、なかなかのものです。

「Counter Clockwise」
 
ソニー・スティットのオリジナルで、スロー・ブルースの魅力に溢れた曲です。
アモンズのテナーは、あくまで力強く説得力があります。スティットの優しく、
やや軽快なテナーも対照的で魅力があります。
長いソロ・プレイを楽しめるナンバーです。リズム陣も、ジャズの醍醐味を十分感じさせる、
くつろぎに満ちている好プレイです。

 
他にも、ジーン・アモンズのアルバムを聴きますが、意外と単調に感じるものが多く、
このアルバムでの、音色を気に入っていますし、バトルというものの、
上品なプレイ・スタイルに終始していて、アルバムの完成度も高いと思います。
ソニー・スティットは、いつ聴いても、安心して聴けます。
 

▽ 1972年: 「Tune-Up!」 
「Blues For Prez And Bird」
 モダンジャズの創始者、チャーリー・パーカーと、彼に多大な影響を与えた、
レスター・ヤングに捧げた曲ですが、ソニー・ステットの全ての演奏の中で、最も好きなナンバーです。
 馴染みやすいメロディーとスムーズなリズム、ソニー・ステットのテナーも心地よく、
最高のブルース・ナンバーに仕上がっています。

 レスター・ヤングと違って、ハードにスィングするスタイルだし、チャーリー・パーカーとは、
むしろ敵対関係にあったのですが、巨星に敬意を表したテーマのようです。
 デイビスの 
「Tune-Up」 ガレスピーの 「Groovin'High」 「I Can't Get Started」 
「I Got Rhythm」
 などスタンダートもあり、魅力的なアルバムと言えます。

 
彼は、40年代から、スタイルを全く変えない、そのひたむきさに好感がもてます。
一時も休むことなく、次から次へと湧き上がる、バップ・フレーズが、ダイナミックで、スィング感も十分です。
 彼が素晴らしいのは、あれだけのバップ・フレーズを多用しても、メロディの美しさを決して損なわない、
歌心に満ちているプレイヤーだということです。好きなアーティストです。
アルト・サックスが本業というものの、私は、テナーが当然好きで、アルトでの音色は苦手です。



 ・ソニー・ロリンズ (身近に感じる、偉大なプレイヤー)
 

■ 「Sonny Rollins」


マイルス・デイヴィス、セロニアス・モンク、ソニー・ロリンズと、
三人のプレイは、学生時代、レコードが家にあった関係で、
なじみが深いのですが、ポピュラーな曲をとりあげていたことから、
身近だったのは、ロリンズでしたし、今でも、サックスが好きな私には、
3人のなかでは、ロリンズが好きである事に変わりはありません。

 いろいろな曲を聴いた結果、気に入ったものは、結局、50年代のものに、集中してしまいます。

▽ 1956年: 「Sonny Rollins Plus 4」 
「Valse Hot」
 この曲は、なぜか、相当気に入っています。ジャズ・ワルツという変わった音楽です。
 ソニー・ロリンズのサックスに続いて、クリフォード・ブラウンのソロがあるのですが、
モダン・ジャズでありながら、優雅にスィングしていて、曲全体を通して、
心地よい雰囲気に包まれて、踊れる感じなのです。
このアルバムには、これしか好きな曲がありません。


 クリフォード・ブラウンとマックス・ローチ・クインテットでは、オリジナルメンバーの、
ハロルド・ランドの、ブルース・フィーリング豊かなテナー・サックスが、とても魅力的です。
 どちらかというと、クリフォード・ブラウンは、スロー・ブルースで、あまり心震わすプレイが無く、
私が、ブラウンを凄いとは思っても、もう一つ身近に感じない原因の一つになっています。

▽ 1956年: 「Volume One Sonny Rollins」 

「Decision」

 マイナー・ブルースの極致といった印象です。
ゆったりしたメロディーの流れに、ロリンズのプレイが冴え渡ります。
ドナルド・バードのトランペットは、もちろんファンキーのかたまりで、好演していますし、
ウイントン・ケリーのピアノが、また良いのです。彼のシングル・トーンに、全く無駄が無く、
彼のスィング感覚は、天性のものでしょうが、たまらない魅力です。
マックス・ローチのドラムも、歌うがごとく、見事な“間”をきかせて、文句無しに、
ソニー・ロリンズの曲の中で、一番のお気に入りです。

「Sonnysphere」
 超スロー・バラッドでの、説得力のあるサックス、ピアノ・ソロを展開していますが、
ソニー・ロリンズの非凡な才能を垣間見る感じで、ゆったり聴かせてくれます。

▽ 1956年: 「Saxophone Colossus」
「St.Thomas」 「Moritat」
 彼の代表曲として、あまりにも有名です。
彼の、陽気で豪放なプレイ・スタイルを、よくあらわしている名演奏といえます。

「You Don't Know What Love Is」
 バラッドも、心地よい演奏を楽しめます。

「Blue 7」
 ロリンズの意欲的な作品で、マックス・ローチのベスト・プレイと評されているけれど、
私にとっては、ちっとも良いとも思わないし、好きではありません。
このアルバムは、私の評価では、あまり高くはありません。
あまりにも、ポピュラーになりすぎた結果かもしれません。

▽ 1957年: 「Volume Two Sonny Rollins」 
「Misterioso」
 セロニアス・モンクとホレス・シルバーが、ピアノを入れ替わる珍しい、そして、
歴史的名演奏といわれる曲。モンクの世界です。 
「Reflections」
 モンクと対照的な、ロリンズの熱いプレイが光ります。
 
■ 「London 3」


▽ 1957年: 「A Night At The Village Vangurd」 

・「Sonnymoon For Two」 「Old Devil Moon」 
「I Can't Get Started」 「Softly As IN A Morning Sunrise」

 ウイルバー・ウエア(B)、エルヴィン・ジョーンズ(Ds) 
ピアノ・レス・トリオの名作として名高い演奏で、
アドリブのあらん限りを尽くす、ロリンズの熱演が光るアルバムです。

これは、チョッと想いがあるのですが、彼のアルバム全体から見たら、好きでもない分野のものです。
私は、アドリブの超人的テクニックだけでは、評価しません。

 ソニー・ロリンズは、マイルス・デイヴィスや、セロニアス・モンク名義の作品の中にも、
名曲・名演奏があり、そちらで好きな曲があるのですが、省略します。
 彼は、たゆまぬクリエイターとして、さまざまな曲に、演奏にトライしていますが、
私が好きな、ロリンズの作品やプレイは、結局、ファンキーなものに限られてしまうようです。

 今でもすぐ聴けるように、「Volume One Sonny Rollins」: 
「Decision」 は、身近においています。

 レスター・ヤング、ワーデル・グレイ、デクスター・ゴードン、ハンク・モブリーが、
文句無く好きなプレイヤーということに変わりはありませんが、ソニー・ロリンズも、
相当好きな事に気付きます。
 彼は、ベニー・ゴルソンと同様、優れた曲を残してくれたことも、お気に入りの理由です。

 「The Best Of Sonny Rollins」 を買い足しました。
ベスト盤は常に過不足があるのですが、どうしてもお手軽に楽しみたいと思って、手が出てしまいます。


 ・ベニー・ゴルソン (美意識と才能では、一番のお気に入り)

  

■ 「Benny Golson」


▽ 1959年: 「Blues-ette /Curtis Fuller」 
「Five Spot After Dark」 「Minor Vamp」 「Blues-Ette」
 カーティス・フラー名義でも、いわゆるゴルソン・ハーモニーに溢れた、
名盤として有名です。フラーのトロンボーンと、ゴルソンのテナーだけで、
よくこれほどの音を、作れるものだと感心させられます。
この時代のファンキーという言葉のもつ、上品な、アーシーさが、十分出ていると思います。

 ゴルソンのテナーは、かなりブローするのですが、チッとも嫌味でないところが、彼の持ち味です。
トミー・フラナガンのピアノも上品で心地よい響きです。


▽ 1957年:「Benny Golson's New York Scene」 
「Whisper Not」 「Step Lightly」 「Blues It」 特に、「Blues It」では、
スロー・ブルースに、ファンキーな香りいっぱいの、ゴルソンの才能を感じさせるアルバムです。
 

▽ 1959年: 「Groovin' With Golson」
 
・「My Blues House」 「Drum Boogie」 「I Didn't Know What Time It Was」 「The Stroller」 「Yesterdays」

 「Blues-ette /Curtis Fuller」 と同じ、フロント・ラインで、ピアノが、レイ・ブライアント、ドラムが、
アート・ブレーキーに変わっても、ブルース・フィーリングは、十分です。
サックスとトロンボーンのハーモニーの美しさと、ブレーキーのドラムスによる、
ジャズ・メッセンジャーズの香りが、ミックスして魅力的なアルバムになっています。
 私にとっては、「Blues-ette」 より気にいっています。

「My Blues House」
 
親しみやすいテーマのハーモニーで始まる、スロー・ブルースですが、
フラー、ゴルソン、ブライアント、チェンバースの心地よく、落ち着いたソロが魅力のナンバーです。
このアルバムでは一番気に入っています。

「Drum Boogie」

 
ジーン・クルーパのナンバーですが、ここでのブレーキーは、落ち着いたプレイに終始し、
スィング感が心地よい、素直な仕上げになっています。

「I Didn't Know What Time It Was」

 
典型的な、ゴルソン・ハーモニーで、美しい音色が楽しめます。

「The Stroller」
 唯一のアップ・テンポのブルースで、各アーティストの、ダイナミックなソロが楽しめます。
 ゴルソンも、ジャズ・メッセンジャーズを彷彿させる、熱いテナーを、グリグリ吹きまくっています。
ブライアントのピアノは、ティモンズとは違って、スピーディな中にも、上品さがのぞきます。
ポール・チェンバースのアルコ・ソロは、スピーディですが、全体の力強さを削いでいる感じで、
気に入りません。ブレーキーも、ここでは本来の味をだして、頑張っています。


・「Yesterdays」

 このようなスタンダード・ナンバーでは、ゴルソン・ハーモニー、
レイ・ブライアントのピアノ・ソロの美しさが際立ちます。
 
■ 「London 4」


▽ 1958年: 
「Moanin'Art Blakey And The Jazz Messengers」
 

「Moanin'」 「Are You Real」 「Along Came Betty」 
「Blues March」 「Come Rain Or Come Shine」


 恐らく日本中の、ジャズ・ファンにとって忘れられないアルバムでしょうし、私にとっても、
お気に入りの定番です。

「Moanin'」
 作曲者は、ピアノのボビー・ティモンズですが、彼の、ゴスペル風ピアノも最高ですが、
ゴルソンの、編曲になるこのアルバムは、ハード・バップ・ジャズの歴史的名盤、といえると思います。

 リー・モーガン(Tp)、ベニー・ゴルソン(Ts)、ボビー・ティモンズ(P)、ジミー・メリット(B)、
アート・ブレーキー(Ds)。
これが、最高のメンバーで、私は、これ以降の、ジャズ・メッセンジャーズを好みません。
 すぐ後、テナーが、ウエイン・ショーターに変わりますが、彼は、嫌いなプレイヤーです。
そして、ベニー・ゴルソンも、この時期が一番好きで、あまり、ハーモニーを追求する彼には、飽きがきます。

「Blues March」
 バイタリティに満ちた曲、無鉄砲のような、ハードなスィング感が、聴く側に興奮を呼び起こすのです。
それにしても、ボビー・ティモンズのピアノも最高です。ピアニストについては、別のページにしますが、
好きなピアニスト、ベスト・5 に入るお気に入りです。
 当然ながら、アート・ブレーキーのドラムは、絶好調で、私は、ドラマーでは、彼が一番好きです。

 ベニー・ゴルソンは、彼の、グリグリくる、テナー・サックス・プレイも不思議と好きですし、
「Whisper Not」 「I Remember Clifford」 などの作曲、編曲をみても、
彼のアーティストとしての、才能の豊かさがわかります。
♪ 「Whisper Not」 は、1956年:「Lee Morgan Vol.2」 で聴けるのですが、
ミュートが効いている、リー・モーガンのトランペットと、お気に入り、ホレス・シルバー、
ハンク・モブリーとの共演で、大変魅力的です。
なお、ジャズの名曲として、また、郷愁を感じることで、ベスト・5にランクされる、好みの曲でもあります。



 ・ジョン・コルトレーン (好きな時期は短い)
 
 
■ 「John Coltrane」


▽ 1957年: 「Blue Train」: 
このアルバムは、文句無く好きです。
全体の構成と、各自のソロ・プレイの見事さ、
メロディの心地よさに溢れています。

 「Blue Train」
 若き、リー・モーガンのはちきれそうで、ブリリアントな音色のトランペット・ソロ、
カーティス・フラーのトロンボーンのアーシーさ、ケニー・ドリューのファンキーなピアノも申し分なく、
なんと言っても、コルトレーンが目一杯ハードにスウィングしていて、好感が持てます。
 バックで繰り返される、リフもシャレていて、ハード・バップの定番として有名ですが、
私にとっても、お気に入りの一曲です。

「I'm Old Fashoned」
 スロー・バラッドのこの曲も、無駄を削った素直な表現で、
丁度、デクスター・ゴードンのバラッドを聴くような感じで、好感が持てます
。レッド・ガーランドも、シングル・トーンに徹して気持ちよく、リー・モーガンのあの若さでの、
天才的歌心にも、驚かされます。

▽ 1958年: 「Soul Trane」 
「Good Bait」 「I Want To Talk About You」 「Theme For Ernie」 「Russian Lullaby」
 レッド・ガーランド(P)、ポール・チェンバース(B)、アーサー・テイラー(Ds)という仲間をバックにして、
コルトレーンが、思いっきりテナー・ソロを吹きまくっています。
 バラッド曲での、ガーランドのブロック・ピアノは、相変わらず華麗で心地よいのですが、
私は、コルトレーンの、例の、シーツ・オブ・サウンドがあまり好きではありません。

「Theme For Ernie」
 スローな曲を、素直に聴かせる時の、コルトレーンの音色は、素晴らしいものがあります。

「Russian Lullaby」
 このすざまじいまでの、コルトレーンのバップ・フレーズは、不思議と好感が持てて、
マイルス・デイヴィス・クインテット初期の頃から比べて、格段の技術力であることがわかります。

 マイルス・デイヴィス・クインテットでは、
▽ 1955年: 
「Round About Midnight」 ・「Round About Midnight」 「All Of You」 
▽ 1956年: 「Cookin'」 
・「Airegin」 ぐらいが、コルトレーンのサックスで、良いなと思うだけで、
他はぎごちなく、イマイチです。

・「Round About Midnight」 
私の、マイルス・デイヴィス評価の中でも、特に気に入ったアルバムです。
 
■ 「London 5」

▽ 1959年: 「Giant Steps」 
「Giant Steps」 「Cousin Mary」 「Countdown」
彼の、代表的なこのアルバムも、私は好きではありません。

▽ 1961年: 「Ballads」
人気のバラッド・アルバムですが、高音でのやや、ヒステリカルな響き、
全体に漂う、悲壮感みたいなものが嫌いです。
ブルースそれ自体が背負う哀感を、ダイレクトに感じて好きではありません。

▽ 1959年: 「Cannon Ball Adderley Quintet In Chicago」
 これは、キャノンボール・アダレイのアルバムですが、二人の火の出るようなバップ・プレイが展開され、
コルトレーンも最高なプレイを聴かせています。キャノンボール・アダレイは、大好きで、
これは、お気に入りアルバムです。

 コルトレーンは、スタイルを変えていくタイプのミュージシャンで、私にとっては、
ハード・バップを素直に表現している彼にしか、魅力を感じませんし、
シーツ・オブ・サウンドも嫌いなことから、好きなアルバムも、少ないということになってしまいます。
 テナー・サックスの巨人として有名なコルトレーンですが、
ソフトな音色が最低条件の、私の評価では、彼の音色はヒステリックすぎます。
 技術がどうのという事は、心地よい音楽を求める者にとっては、たいした問題ではありません。



 ・スタン・ゲッツ (ボサ・ノヴァが印象的)
  

■ 「Stan Gets」


彼は、最もレスター・ヤングの影響を受けた、
白人テナー・サックス奏者だと知って、身近に感じて、
何枚ものCDを買い集めました。

クールという言葉を、レスター・ヤングは、“かっこいい” という意味で、
初めて使ったのだと思いますが、文字どおりの、クール・サウンドと
いわれる演奏を好みません。マイルス・デイヴィスを、イマイチ好きになれないのは、
彼は、いろいろやりすぎた、ということが主な原因になっています。


▽ 1950年: 「Stan Gets Quartets」 
「There's A Small Hotel」 「I've Got You Under My Skin」「What's New」 「Too Marvelous For Words」 
、魅力あるスタンダード・ナンバーが並ぶのですが、彼の、くぐもった音、アルト・サックスのような、
高音部の音で、折角のフレージングの良さを、台無しにしています。

・「Wrap Your Troubles In Dreams」 「My Old Flame」 「The Lady In Red」
 
メロディは、親しみやすく、ソフトに吹いているのは解りますが、心に響きません。

▽ 1950年: 「The Complete Roost Session Vol.1」
 
・「On The Alamo」 「Gone With The Wind」 「You Go To My Head」
:
 曲も良く、メロディー・ラインの構成力など、非凡さを感じますが、相変わらず、
音色が気に入りません。


・「Yesterdays」
情感たっぷりのプレイですが、心地良いリズムを感じません。
・「Imagination」
 へんてこな、バップ・フレーズを入れたりして、折角のバラッドが、台無しです。

▽ 1951/52年: 「The Complete Roost Session Vol.2」
 このアルバムは、ホレス・シルバーのピアノに触発されたのか、強いリズム、
スィング感のなかで、音色も、だいぶ、好みに近くなっています。

「Split Kick」 「The Best Things For You」 「Melody Express」
 だんだん、男らしい音になってくるのが解るようで、興味深いものがあります。
 お気に入りの、ホレス・シルバーも、この時期、バッパーの域にあって、
ファンキーな味は、あまり出ていないけれど、それでも、ぼやぼやしているゲッツを、
追い立てるような、躍動的なプレイに、さすが大物の片鱗を感じます。

 デューク・ジョーダンのピアノでの、
♪ 「Lullaby Of Birdland」 「Autumn Leaves」 「Fools Rush In」 「These Foolish Things」
 この4曲は、彼が、今までの、やわなクールとかいう、小手先の手法や、
単なるバップ・フレーズを連発する奏者から脱皮した、豊な歌心が楽しめるナンバーです。
 暖かい音色で、スィング感に溢れていて、リラックスした心地よさが、こちらにまで伝わってきます。
この4曲(別テイクを入れれば、6曲)は、このセッションでのベスト・プレイと思っています。

▽ 1952年: 「Stan Getz Plays」
 ルースト・セッションでの最後と絡んだ時期の、ノーマン・グランツでの録音ですが、
デューク・ジョーダンのピアノも変わらず、彼のベスト・アルバムと評価の高いものです。

♪ 「Stella By Starlight」 「Time On My Mind」 「'Tis Autumn」 
「The Way You Look Tonight」 「Lover Come Back To Me」 「Body And Soul」 
「Stars Fell On Alabama」 「You Turned The Tables On Me」 「Thanks For The Memory」 
「」Hymn Of The Orient 「These Foolish Things」 


 どれも彼のベスト・プレイの延長ということで、ルースト・セッションの4曲とこれらを一緒にした、
自分なりのアルバムを作って楽しんでいます。
レコード会社に影響されずにベスト・アルバムを作れるのが、趣味の音楽の最大のメリットですから。
   ■ 「London 6」
 スタン・ゲッツは、ボサ・ノヴァ・プレイヤーになったことで、
ジャズ・ファンから、ひんしゅくをかったようですが、
私は、ボサ・ノヴァを演奏する、スタン・ゲッツが、嫌いではありません。
 「The Girl From Ipanema」 「Favela」「One Note samba」 
「Quiet Nights Of Quiet Stars」 「Menina Moca」 「O Grande Amor」
 どの曲も、音楽として完成されており、今聴いても、心地よいボサノバ・ナンバーです。
当時、飽きるほど、やりすぎたともいえますが、ポピュラー音楽の宿命で仕方ありません。

▽ 「 Stan Getz Bossa Nova」 : 62年〜67年、
彼の全盛期のボサ・ノヴァが楽しめる、コンピレーション・アルバムです。

▽ 「The Antonio Carlos Jobim Songbook」

 
ゲッツ、サラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルド、ウエス・モンゴメリー等など、
当時のボサ・ノヴァの人気がうかがえる、オムニバス・アルバムです。


※ 他人が、レスター・ヤングのコピーをしても、全く魅力の無いものの例として、
ビル・パーキンスのアルバムがあります。

▼ 1978年:
 「Plays Lester Young/Bill Parkiins」 
・「Lester Leaps In」 「A Ghost Of A Chance」 「These Foolish Things」

 ウエストコースト・ジャズ奏者による、レスター・ヤング特集。
ビル・パーキンスも、レスター信奉者ですが、これを聴いても、ただ、スタイルをまねただけという、
薄っぺらで、チッとも心を動かすような、作品になっていないのです。


 ・ズート・シムズ (白人では一番かな)     
  

■ 「Zoot Sims」

▽ 1956年: 「Zoot Sims Quartet」:
「9:20 Special」 「The Man I Love」 「The Blue Room」
「Gus's Blues」 「That Old Feeling」


力強くスィングするズート・シムズのプレイは、レスター・ヤングを卒業して
、自己のスタイルを感じさせるもので、好感が持てます。
彼は、アルト・テナー・バリトンと、サックスを自由にあやつりますが
、私には、テナー・サックスだけが、興味の対象です。

▽ 1956年: 「The Art Of Jazz Zoot Sims」 
「September In The Rain」 「Ghost Of A Chance」 「Them There Eyes」 
 おなじみの曲を好演していますが、バルブ・トロンボーンの、ボブ・ブルックマイヤーとの共演で、
ゆったりした中にも、ブルース・フィーリングがあり、気に入ったアルバムになっています。
 彼の作った3曲も、ブルージーで、意欲的な作品といえます。

▽ 1960年: 「Zoot Sims Down Home」 
「Jive At Five」 「Doggin' Around」 「Avalon」 「I Cried For You」 「Good Night Sweetheart」
 安定したリズムにのって、スィンギーに歌う、ズート・シムズのテナー・サックスが楽しめます。
プレス、バード、ロリンズでおなじみの曲ですが、スタン・ゲッツが、フレージングに味があるとすると、
ズート・シムズには、黒人ばりの、アーシーさと、何よりもスウィング感が備わっているようです。

時々、悪ふざけのように吹くのが、気になりますが、
白人のプレイヤーのなかで、私の尺度では、一番なのかもしれません。

 モダン・ジャズの分野では、黒人プレイヤーを基準にしているので、
特に、彼が好きというわけではありません。
チョッとした人種差別ですが、ブルース・フィーリングには、歴史的背景があり、白人が、
それに近いものを表現しても、限界があると思っているのです。
 ブルースを感じる唯一の白人となると、ジャンルが違いますが、
トロンボーンの、ティ・ガーデンぐらいかな、と思っています。

 白人は、伝統的に、アンサンブルが得意な分野だと思います。
デューク・エリントンが、黒人でありながら、その方向を目指したようで、
彼が好きではないのです。
また、ホレス・シルバーの後半も、かなり統制のとれたバンド・カラーを目指したようですが、
彼の場合は許しています。



 ・アレン・イーガー (レスター・ヤングに似ている白人)
  

■ 「Allen Eager」


最も、レスター・ヤングと似ていたと言われる
アレン・イーガーですが、活躍した期間が短く、
よい状態での記録が、あまり残されていないのが残念です。

▽ 1948年: 「Al Haig & The Modern Sax Giants」 
「Pogo Stick」 「Alleytalk (Bow Tie)」 「The Way You Lock Tonight」
 このアルバムは、近年購入したCDで、ワーデル・グレイ、スタン・ゲッツ、アレン・イーガーという、
当時の、名手3人が、アル・ヘイグのピアノをバックにして、録音された、
貴重な記録らしいのですが、確かに、アレン・イーガーのサックスは、
レスターとそっくりの音色で、フレージングまでよく似ています。

▽ 1947年: 「Anthropology」 
「Donna Lee」 「Groovin' High」 「Ko-Ko」
 ファッツ・ナヴァロ(Tp)、チャーリー・パーカー(Ts)などとのセッションで、
堂々としたサックスを聴かせます。

▽ 1948年: 「Fats Navarro Featured With Tadd Dameron」
「Good Bait」 「Lady Be Good」
 ここでも、レスター・ヤングを土台に、チャーリー・パーカーのバップ・手法を融合した
、アレン・イーガーのスィンギーで、流れるようなアドリブソロを聴く事が出来ます。
 でも、私が、興味を持つのは、ファッツ・ナヴァロのほうで、50年に、
27才の若さで亡くなったトランペッターですが、メロディーと、音色がとてもきれいです。
ハード・バップの旗手にして、最高のアドリブを聴かせた、クリフォード・ブラウンの手本になる、
豊かな音色とフレージングを満喫できます。

 
レスター・ヤングに似ているからといって、イーガーを、特別素晴らしいとは思いません。
彼は、その後、クール・ジャズを志向していくのです。
 ワーデル・グレイは、レスター・ヤングを出発点として、自己を確立していったアーティストで、
その生涯変わらない、自由なフレージングと、スィング感覚の素晴らしさで、
私の好きなサックス・プレイヤーなのです。

  ■ 「London 7」
 〜チョッと気になる、その他のサックス・プレイヤーについて。〜

 ・ジョージ・オールド

 1940年、チャーリー・クリスチャンのプレイに憧れ、ベニー・グッドマン楽団で活躍しました。
▽ 1941年:「Charlie Christian With The Benny Goodman Sextet & Orchestra」 
「Blues In B」 「Air Mail Special」 「Waitin' For Benny」 
 チャーリー・クリスチャン(G)、グッドマン(Cl)、クーティ・ウイリアムス(Tp)、カウント・ベーシー(P)など、
そうそうたるメンバーとのセッションで、暖かく、堂々とした音色のサックスを聴くことが出来ます。

 その後、バップ・コンボでの演奏などを経て、1951年ウエスト・コーストへ移り、
ヴォーカル・グループと一緒に商業主義的演奏を始めたらしいのです。

▽ 1955年:「Georgie Auld In The Land Of Hi-Fi」 
17人編成のビッグ・バンドでの、アルバムも作っています。
 私が、レコードで初めて、テナー・サックスを、魅力ある楽器だと感じた、
「Manhattan」 は、この頃のものだったのでしょう。

▽ 1959年:「George Auld Homage」
「Air Mail Special」「Seven Come Eleven」 「Flying Hmoe」 など
グッドマン時代の懐かしいナンバーが楽しめます。 
 彼は、カナダ生まれで、コールマン・ホーキンスにあこがれて、テナー・マンになったらしいのですが、
グッドマン、アーティ・ショウなど、のスィング・バンドでのプレイが一番似合います。
 でも、私にとっては、テナー・サックスの魅力を知ったきっかけとしての、
ジョージ・オールドというだけで、特別、好きなプレイヤーというわけではありません。



 
・ラッキー・トンプソン
 
▽ 1954年、
「Walkin'」: 
「Miles Davis All Stars 」
での、
 
「Walkin'」 「Blue'N'Boogie」モダンで、
スウィングするテナーを聴く事が出来ます。
 彼は、ホーキンスより、はるかに優しく、あたたかい中にも、
さらっとした音色と豊かな歌心を感じ、好きなプレイヤーです。

▽ 1964年:「Lucky Strikes」  
「Fly With The Wind」 「Reminiscent」 「I Forgot To Remember」 「Invitation」
 テナー・サックスの音色は、ウエスト・コーストを想わせる、乾いた清涼感が漂っています。
スロー・バラッドの情感、ラテン調の軽快さなど、十分な説得力ですが、
曲自体に魅力が無く物足りません。

「In A Sentimental Mood」
 まるでジョニー・ホッジスを想わせる、ソプラノ・サックスでの、スロー・バラッドです。
子供時代からの友人らしい、ハンク・ジョーンズのピアノと共に、情感たっぷりの名演と言えます。

「Mid-Mite Oil」 「Mumba Neua」 「Prey-Loot」
 ソプラノ・サックスでのこれらの曲には、あまり魅力を感じません。

 
このアルバムは、私の期待に応えてくれません。
もっと、ジャズを感じさせるものであって欲しかったものです。

  ■ 「London 8」
 ・スタンリー・タレンタイン

▽ 1961年: 「Up At Minton's」 
「Later At Minton's」 「Come Rain Or Come Shine」
 グラント・グリーンのギターも手伝って、かなりブルージーです。 

「Summer Time」
 ムード溢れる、スローなソロ・プレイも好感がもてて、悪くありません。

「Love For Sale」
 スローからアップ・テンポに変わって、熱いプレイが聴けます。
グリーンのギターもここでは、相当冴えていています。

 ライブの雰囲気も良く、全体としては、ブルース・フィーリング溢れる、
なかなかのアルバムだと思います。

▽ 「Ballads」: 

・「Willow Weep For Me」 「Since I Fell For You」 「Then I'll Be Tired Of You」 
「Someone To Watch Over Me」
 等、全九曲のバラッド特集ですが、
ムードのある、暖かい音色で、夜のひとときを、ゆっくり過ごしている時に
流れてくる音楽としては、かなりピッタリのアルバムです。
 彼は、私の好みの、ぎりぎりに位置するアーティストです。
 ソフトな音色・ハードな音色、低音・高音など、器用に音を作りすぎるところが気になります。
デクスター・ゴードンのように、ストレートな表現のほうが、聴く側の心を打つのに…、
チョッとひっかかります。


 ・アイク・ケベック


 ブルー・ノートを影で支えた功労者らしいのですが、彼のテナーは、あまり好みません。
▽ 1961年: 「Blue And Sentimental」
全編ブルース感覚に溢れているけれど、垢抜けないものを感じます。

▽ 1962年: 「Soul Samba」  
これも、チョッと嫌らしい感じがします。かなりねちっこいプレイです。


 あまりブローしない、テナー・マンのスロー・バラッドでも、アーシー過ぎたり、
メリハリが無く退屈したりと、微妙なところで、好みが分かれます。
ジャズで聴くテナー・サックスは、適度なスィング感覚や、上品さが、どうしても私には必要です。

  ■ 「London 9」
※ ハロルド・ランドやジョニー・グリフィンなどは、好きなアルバムの中で触れたいと思います。
また、エディ・ロックジョー・デイヴィスや、イリノイ・ジャケイ、フリップ・フィリップス、
ウエイン・ショーターなど、気に入らないアーティストについては、扱わない事にします。
CDを買ってしまって、後悔しているプレイヤー達です。

 ジャズ奏者のテープも随分ありますが、サックスでは、デイブ・ペルは意外と好きなアーティストなのに、
CDを持っていないので、「プレス・コンファレンス」 あたりから聴いてみようかと考えています。

 コレクションに対する執着というものは、もともと無いので、他のプレイヤーについては、
もう良いかな〜、と思っています。



  7−A アルト・サックス・プレイヤー

 
・チャーリー・パーカー 

■ 「Charlie Parker」
モダン・ジャズの創始者にして、アドリブ芸術の最高峰。
などという、彼への賛美と評価が、定着しています。
彼を理解しないものは、ジャズ・ファンではない、などと評論家が言うと、
それだけで、拒否反応を起こしてしまいます。
…が、興味もあって、いろいろ聴く事になりました。

 (学生時代にも、彼のプレイを聴いた覚えが無いので、テープ録音なども当然ありません。
社会人になってから、彼のプレイや他のビ・バッパーの演奏を聴いたのですが、
私の音楽体験の中で、唯一スムーズに馴染めなかったのが、このスタイルです。)


 彼のプレイで、気になった曲、気に入った曲は、
▽1944年: 「Tiny Grimes Quintet」  
「Tiny's Tempo」 「Red Cross」 
軽快なテンポで心地よく、パーカーのサックスは、スムーズで、タイニー・グライムズのギター・ソロが
チャーリー・クリスチャンを思わせて力強く、好感が持てます。

▽1945年: 「Charlie Parker's Reboppers」 
「Now's The Time」 パーカーの有名なオリジナル。
出だしがスリリングで、続くパーカーのソロに比べて、若いマイルス・デイヴィスのトランペットは、
レスターのフレージングを思わせる、ゆったりしたもので、マイルスのオリジナリティを感じさせます。

▽1945年: 「Slim Gaillard And His Orchesutra」 
「Dizzy's Boogie」 
スリム・ゲイラードのブギ・ウギ・ピアノが心地よく、パーカーのサックスは、
少ないソロですが、メロディアスです。

▽1945年: 「Dizzy Gillespie Sextet」 
「Groovin' High」 「All The Things You Are」 
ガレスピーのトランペット、パーカーのサックス、スラム・スチュワートのベースもシャレていて、
歌心に溢れたソロ・プレイを、皆が好演しています。

▽1947年: 「Charlie Parker's All Stars」 
「Another Hair-Do」 「Blue Bird」 
パーカーのバップ・フレージングは、個性的ですが、整っていて、マイルス・デイヴィスのミュートによる、
中音域の落ち着いたトランペットと、よくハーモナイズされ、聴きやすいナンバーです。
  ■ 「Milano 1」
▽1947年: 
「A Night In Tunisia」ガレスピーの名曲。
パーカーのサックスに比べて、ガレスピーのトランペットは、数段優れているように思えます。

▽1947年: 
「Confirmation」
 パーカーの有名な曲、さすがに圧倒的なバップによる、自由なフレージングは
、際立っており、ガレスピーのトランペットも、あまり好まないプレイヤーですが、うまさでは安定しています。

▽1948年: 「Charlie Parker's All Stars」 
「Parker's Mood」
 スロー・ブルースは、好きなので、こういう曲は、まず気に入ってしまいます。
ジョン・ルイス(P)、カーリー・ラッセル(B)、マックス・ローチ(Ds)と、メンバーの好演も光ります。
 
▽1949年: 「Charlie Parker With Strings」 
「Just Friends」
 パーカーは、オーケストラを好んだらしく、何曲もレコーディングしていますが
、中では、これが一番だと思います。
ミッチ・ミラー楽団のスムーズなバックに、漂うようにソロ・プレイを展開し、全体の構成も見事です。

▽1951年: 「Swedish Schnapps」 
「K・C・Blues」
 マイルス・デイヴィス、マックス・ローチ。カンザスの香りのするブルース。マイルスのミュートが瑞々しく
、彼が、オリジナルな、方向を目指している事がわかります。

▽1951年: 「Swedish Schnapps」 
「Lover Man」
 情感たっぷりのスロー・バラッド。
くぐもったようなパーカーの音色、ジョン・ルイスのピアノも、しっとりとしていて素晴らしい作品です。

▽1953年: 「Now's The Time+1」 
「Now's The Time」
  ブルース形式のリフ・ナンバー。曲の流れもスムーズ、ノリの良いバップで、
アル・ヘイグ(P)、パーシー・ヒース(B)、マックス・ローチ(Ds)も好演しています。

▽1953年: 「Now's The Time」 
「Confirmation」
 アル・ヘイグ(P)、マックス・ローチ(Ds)も良く、曲全体の構成もよく、洗練されたプレイが展開されます。


 アイドル、レスターとの共演
▽1946年: 「J.A.T.P」 
「I Can't Get Started」
レスターの後を受けて、パーカーのソロ、スローなテンポで、若いが落ち着いたプレイに好感がもてます。
「Blues For Norman」
 アップ・テンポのブルースで、カーター、ホッジスとならんで三大アルト奏者といわれる、
ウイリー・スミスが共演していますが、どちらも良くありません。
また、我がレスター・ヤングも、あまり冴えません。

▽1949年:「J.A.T.P」 
「Lester Leaps In」 「The Closer」
 レスターのソロは、もの足りません。パーカーもチョッと上ずっている感じです。
ここでは、ロイ・エルドリッチのトランペットにハリがあって良いのと、皮肉にもレスターのコピー、
フリップ・フィリップスのテナーの方が、冴えていて、観衆の受けが良いのには、がっかりさせられます。

 J.A.T.Pなど、ライブ・セッションものは、私にとって、プレイヤーの豪華さに感動するだけで、
内容については、ほとんど気に入りません。大観衆の前では、音楽を聴かせるというより、
派手なプレイの、パフォーマンスのほうが受けるというのは、現代でも変わらない事のようです。
  ■ 「Milano 2」
 パーカーの作品を聴いて、心揺さぶられるほどの、感動を覚えることはありません。
でも、音楽の楽しみは、それだけではないわけで、彼の人間的魅力、
背景、などを知るにつれて、愛着が湧いてくるのも事実です。
 特に、彼は、ジャム・セッションが盛んなカンザスで、創造意欲を掻き立てられ、
カンザス・ジャズの頂点で、花形スター:レスター・ヤングの、卓越したフレージングに、
大きな影響を受けたに違いないのです。

 いってみれば、我が、レスター・ヤング・ファミリーといっても良いとの結論から、
だいぶ彼への見方が好意的になります。

 彼の生きざまは、私の好きなジャズ・プレイヤー達と同じように、時代に悶々とする、
黒人の人生観が垣間見え、それが魅力の大半を占めているようです。
 パーカーのメロディアスなプレイを、嫌いではありませんが、
夜のひととき、ゆっくり聴きたい音楽ではないといえます。

 バド・パウエルもそうですが、鬼気迫る、超人的プレイなどと、評論家が書くものの中に、
好きな曲はほとんどありません。
 メロディの美しさ、流れるようなフレージング、ブルース・フィーリングなど、
ジャズのもつ、普遍的魅力に溢れているものは、有名、無名に関係なく、気に入っています。
(マニアではないので、無名のプレイヤーを知ることはありませんが…。)

 


 ・キャノンボール・アダレイ
  
■ 「Cannon Ball Adderley」
 キャノンボール・アダレイが好きになったのは、学生時代、
ほとんどポピュラー・ミュージック化していた、
「Work Song」 に親しみがあったからかもしれません。
そして、その音色が、アルト・サックスのあるべき音だと、私の心の奥で定着したのだと思います。
 彼は、チャーリー・パーカーの再来という言われ方をしますが、
私は、キャノンボールのサックスの、よりスィンギーで、メロディの美しさを損なわないアドリブ・プレイは、
パーカー以上だと思っています。
それに、まろやかで、暖かい、キャノンボールの音色は大好きです。

▽1955年: 「Bohemia After Dark Kenny Clarke」 
・ 
「Bohemia After Dark 」 「Willow Weep For Me」 「Hear Me Talkin' To Ya」 「Late Entry」
 その後のファンキー・ジャズの代表格…キャノン・ボール・アダレイとホレス・シルバーの、
くつろぎに満ちたハード・スィングが楽しめるこのアルバムは、大のお気にいりとなっています。

 弟のナット・アダレイは、二人よりもっと、アーシーなコルネット奏者なのですが、
彼は、技術的にやや問題があり、お兄ちゃんのスムーズなアルト・サックスとは、ずいぶん差があります。
 モダンジャズの創始者である、ケニー・クラークと、若い、ナット・アダレイ(Cor)、ドナルド・バード(Tp)、
キャノンボール・アダレイ(As)、シルバー(P)、ポール・チェンバース(B)の面々が、
ハード・バップの典型をきかせてくれます。
 
 「Willow Weep For Me」
 好きな曲で、様々なアーティストで聴きますが、キャノンボールとホレス・シルバーの、
ファンキーな演奏は格別で、特に気に入っています。

▽1958年: 「Somethin' Else」 
 
「Autumn Leaves」
 マイルス・デイヴィスの、デリケイトなトランペットと、キャノンボールの豪放なサックスの音色、
ハンク・ジョーンズの完成したピアノ。モダン・ジャズの定番として、枯葉のベスト・プレイとして、
あまりにも有名ですが、私も気に入っています。

・ 
「Dancing In The Dark」
 キャノン・ボール・アダレイのソロが堪能できる、スロー・バラッドです。
解説に、マイルス・デイヴィスの参加していないこの曲は、物足らない、というようなことを書いていますが、
とんでもない間違いで、彼の、バラッドは最高です。

▽1958年: 「Things Are Getting Better」 
・ 
「Things Are Getting Better」 「Serves Me Right」 「Groovin' Higi」 「The Didewalks Of New York」
 「Sounds For Sid」 「Just One Of Those Things」

 ミルト・ジャクソン(Vib)、ウイントン・ケリー(P)、パーシー・ヒース(B)、アート・ブレイキー(Ds) 
メンバーを見ると、もっとブルージーであってもよいのに、全体に軽快で、上品過ぎるところが、物足りません。

・ 
「Just One Of Those Things」
 スィングするキャノンボールの名演奏を、楽しめるぐらいで、私ごのみで言えば、スィング感の中にも、
ファンキーさが欲しい、物足らないアルバムです。

  ■ 「Milano 3」
▽1958年: 「Portrait Of CannonBall Julian Adderley Quintet」
「Minority」 ハード・バップの典型というような、
キャノンボール(As)、ブルー・ミッチェル(Tp)、ビル・エバンス(P)、
サム・ジョーンズ(B)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(Ds)、の熱演が楽しめます。

・ 「Straight Life」
 キャノン・ボールの、スロー・バラッドを好む私ですが、ここでも聴かせてくれます。
ビル・エバンスは、もちろんこの手は、得意ですが、ブルー・ミッチェルのトランペットが
なかなかのものです。

・ 「Blue Funk」
 キャノンボール得意の、ファンキー・ナンバーで、のびのび吹きまくっています。
ここでも、ブルー・ミッチェルのトランペットは、良いのですが、こういう曲での、
ビル・エバンスは少し、上品過ぎて、ボビー・ティモンズであって欲しかった感じです。

・ 「People Will Say We're In Love」
 スタンダード曲ですが、キャノンボールの、よく歌うテナーは、音色はちがうものの、
ベニー・カーターに似ています。ビル・エバンスが入っている為、極端なファンキーに偏らず、
ハード・バップの名盤といえるのではないでしょうか。

  ■ 「Milano 4」
▽1959年: 「Cannon Ball Adderley Quintet In Chicago」 

・ 
「Limehouse Blues」 「Grand Central」 「The Sleeper」
キャノンボールのアルトと、コルトレーンのテナーの
目のさめるような、バップ・プレイが楽しめます。
また、キャノンボールのアルトは、テナーに負けない野太い音色で、本当に好きです。
コルトレーンが思い切り、ハード・バップに徹していて、好感が持てますが、
歌心ではキャノンボールが勝っています。

 「Stars Fell On Alabama」
 キャノンボールのサックス、ウイントン・ケリーのピアノと、スィング感に満ちたスロー・バラッドで、
気に入りナンバーです。
 
・ 
「You're A Weaver Of Dreams」
 コルトレーンのスロー・バラッドですが、素直な表現に好感が持てます。
  
■ 「Go...」 : 1959
▽1959年: 「Go Paul Chambers」マイルス・デイヴィス抜きのマイルス・バンドで、
ポール・チェンバースの、珍しいアルバムですが、
ここでは、ハード・バップを思い切り、皆が楽しんでいる雰囲気が伝わってきます。
・ 
「Awful Mean」
 ミドル・テンポのブルースで、キャノンボールのアルトのテーマに続く、ウイントン・ケリーのピアノは、
ファンキーに溢れていて魅力的です。
キャノン・ボールのソロも、バップ・フレーズを多用しても、メロディの美しさを損なわない、
見事なプレイに終始しています。

・ 「Just Friends」
 
フレディ・ハバードは、好きなほうではないのですが、トランペットを受けて、
ピアノ、アルトが雰囲気を守った、やや、モダンなフィーリングから、ポール・チェンバースの
ベース・ソロ、テーマへ戻るという解りやすい編成です。


 「There Is No Greater Love」
 
キャノンボール、ウイントン・ケリーのメロディは、明快で、歌心に溢れています。
バックで、ポール・チェンバースのベース、ジミー・コブのドラムが、力強いリズムで、
全体に曲アクセントを与えています。

 
 「I Got Rhythm」
 
アップ・テンポでも、キャノンボールのプレイは、よどみなく、バップ・フレーズでも失わない、
スィング感は見事です。 

 「I Heard That」 
 
スロー・ブルースは、キャノンボールの独壇場です。
ファンキーさと、スィングするバップは、私の最も好きなところです。
フレディ・ハバートより、リー・モーガンや、ドナルド・バードのトランペットを好む私ですが、
ここでは彼もアーシーなソロを、聴かせてくれます。
ウイントン・ケリーの、シングル・トーンの美しいソロは、盛り上がりに連れて、
ブロック・コードへと移り、多才なところを披露します。

 キャノンボール・アダレイと、ウイントン・ケリーの共演が聴けて、好きなアルバムです。

  
 ■ 「Julian “ Cannonball ” Adderley & Nat Adderley」
▽1959年: 「The Cannonball Adderley Quintet In San Francisco」 


♪ 
「This Here」 この曲は、「Dat Dere」、「Mornin'」 と並んで、
ボビー・ティモンズの代表曲ですが、ソール・チャーチ・ミュージックと、
キャノンボール・アダレイが紹介するとおり、ファンキーなテーマの繰り返しから、力強く、
比較的素直なフレージングのアルト・ソロのあと、ナット・アダレイのコルネットへつながります。

 ここでのコルネットは、キャノン・ボールの手拍子に合わせて、スムーズなプレイです。
ボビー・ティモンズのピアノは、例によって、静かなシングル・トーンに始まり
、徐々にヒート・アップしていきます。
バックのリフも雰囲気を盛り上げていき、ゴスペル調の熱演の末、親しみやすいテーマに戻っていきます。
 テンポの良い曲と、プレイヤーの好演がマッチした、私の大のお気に入りナンバーです。

・ 
「Spontaneous Combustion」
 キャノンボールの作品で、アルトのソウルフルな中にちりばめられた、バップ・フレーズが、
曲の流れに溶け込んで、見事です。
ティモンズの、ブロック・コードにあおられて、ナット・アダレイのコルネットは、ここでも好演です。
ピアノ・ソロも、単にファンキーというのではなく、確かな技術を披露しています。
それにしても、ラストへ向かって盛り上げていくティモンズのピアノは、ライブのなかで、
最高の効果をあげています。


 「Hi-Fly」
 ティモンズのドラマティックなピアノからスタートし、比較的大人しいこの曲を、全員がファンキーで、
上品な作品に仕上げています。サム・ジョーンズのベース、ルイ・へイスのドラムも、
的確なリズムを刻んでいます。

・ 
「You Got It!」
 スピード感のあるキャノンボールの、バップ・フレーズが、スィングし、メロディの心地よさの中で見事です。
ナット・アダレイも、プレイの破綻も無く、スムーズです。

・ 
「Bohemia After Dark」
 キャノンボールにとって、縁の深い、オスカー・ぺティフォードの曲ですが、
目まぐるしいほどのスピード感のあるアルト・ソロ、ナット・アダレイのコルネットも見事です。
 ボビー・ティモンズは、美しいシングル・トーンを披露し、ルイ・へイスのドラムも冴え渡っていて、
素晴らしいプレイです。

 私にとって、最高のアルバムで、ジュリアン・キャノンボール・アダレイ(As)、ナット・アダレイ(Cor)、
(ボビー・ティモンズ(P)、サム・ジョーンズ(B)、ルイ・へイス(D)。このメンバーでの、クインテットが、
最も、キャノンボールの良い味がでるのではないでしょうか。

 
 ■ 「Milano 5」
▽1960年: 「Them Dirty Blues」 
 「Dat Dere」ボビー・ティモンズの曲で、このアルバム一番の聴きものです。
ゴスペル調のこの曲を、サンフランシスコ・ジャズ・ワークショップと同じメンバーが、
のびのび好演しています。

ドラマティックな、この曲の意味を理解した、キャノンボールの
アルト・サックスは、スィング感に溢れています。
ティモンズの、ブロック・コードでの独特の表現も素晴らしく、1番のお気に入りです。

・ 
「Del Sasser」
 
サム・ジョーンズの曲ですが、キャノンボール、ティモンズも軽快で、
スィンギーに演奏していて、心地よいナンバーです。

・ 
「Work Song」
 ナット・アダレイ作曲のこの曲は、あまりにもヒットしすぎましたが、単にアーシーなだけではなく、
曲のまとまり、プレイヤーの力量が、見事で、ヒットした理由が解ります。
 ここには、2つのバージョンがあり、世に出たのは、ピアノがバリー・ハリスのものですが、
私は、ボビー・ティモンズのほうが、好きです。ただ、アダレイ兄弟のプレイは、
バリー・ハリスの時のほうが、出来が良いかもしれません。

・ 
「Jeannine」
 こういう軽快な曲を、キャノンボール・アダレイは、実にスィンギーに演奏します。
アーシーなだけのプレイヤーではない、優れたアーティストである事を証明しています。
ピアノが、バリー・ハリスに変わって、アルバムの中に、2つのスタイルが同居している感じです。

・ 
「Easy Living」
 キャノンボール・アダレイの、得意なスロー・バラッドです。
情感たっぷりで、豊かなフレージングも心地よく、彼をお気に入りの理由が、ここにあります。
   ■ 「Milano 6」
 「Them Dirty Blues」タイトル曲です。こういう、スロー・ブルースは、大好きで、
キャノン・ボールのアルトは、見事な歌心を披露しています。
それに、ナット・アダレイは、最も得意なジャンルとあって、
切なく語りかけるような、素晴らしいソロを聴かせてくれます。
バリー・ハリスは、スムーズ且つ流れるようなスタイルをもつプレイヤーで、曲に上品さを与えています。


▽1966年: 
「Mercy Mercy Mercy」 1967年: 「Why Am I Treated So Bad」 「Wall Tall」
 ジョー・ザビヌルのオルガンによる、スローなソウル・ナンバー。
単調なテーマの繰り返しは、黒人の聴衆が異常に盛り上がるものの、もうすっかりジャズではなく、
ポピュラー・ミュージックとしてヒットしたのでしょうが、私の興味からは、外れてしまっています。

 キャノンボール・アダレイは、アルト・サックスという楽器を、あまり好まない、
私の例外的お気に入りアーティストです。
 スィング・ジャズでの、ジョニー・ホッジスや、ベニー・カーターのアルト・サックスは、大好きなのですが、
モダン・ジャズでのアルトは、線の細さが、神経質な音色に聞こえて、くつろぎ感に欠けるのです。
 むしろ、ソプラノ・サックスや、クラリネットの音色の方が、中途半端でなくて、好感が持てます。
バリトン・サックスのように、鈍い音色も嫌いですから、
テナー・サックスが一番好き、ということになってしまいます。

 そんな私が、キャノンボールのアルトを気に入っているのは、野太い音色と同時に、
スィングするプレイヤーだからです。
当然、ブルース・フィーリングがベースにあることが重要な要因でもあります。


 ・アート・ペッパー
   
■ 「Art Pepper」
 彼は、日本人の情感にフィットした、微妙な翳りをもった
アーティストで、日本人好みのアーティストだそうです。

▽1956/57年: 「Modern Art Art Pepper」 
「Blues In」 「Bewitdhed」 「When You're Smiling」 
「Cool Bunny」 「Dianne's Dilemma」 「Stompin' At The Savoy」 
「What Is This Thing Called Love」 「Blues Out」

 
彼の代表アルバムです。繊細な音色、アドリブもよし、曲もブルース・フィーリングにあふれた題材で、
彼の、麻薬におぼれる、人間的弱さなど、本来なら私の好みのタイプで、
心動かされるはずですが…、ピンときません。
恐らく、ウエスト・コーストのジャズメン共通の、軽さ、クールさが、原因だと思います。

▽1957年: 「Art Pepper Meets The Rhythm Section」
 
彼の、超人気アルバムです。
・ 
「You'd Be So Nice To Come Home To」 「Red Pepper Blues」 「Imagination」 
「Waltz Me Blues」 「Straight Life」「Jazz Me Blues」 「Tin Tin Deo」 「Star Eyes」 「Birks Works」
 
 マイルス・デイヴィス・クインテットのリズム・セクション: レッド・ガーランド(P) 
ポール・チェンバース(B) フィリー・ジョー・ジョーンズ(Ds) をバックにしたアルバムです。
さすがに、ハードにスィングするメンバーを得て、しっとりした味わいと、リラックスしたプレイは、
ジャズの魅力に満ちています。

 
「You'd Be So Nice To Come Home To」 「Imagination」 「Tin Tin Deo」 
などは、好みのナンバーですが、
「Birks Works」 は、
ケニー・バレルのアルバムに、ベスト・プレイがあり、こちらは、チョッと物足らない感じです。
「Jazz Me Blues」 
アート・ペッパーも、ディキシーランド・ジャズが、好きだったらしく、私の大好きな、
この曲を演奏していますが、モダンジャズでは、ご愛嬌程度にしか聴けません。


 
アルト・サックスが、好きであれば、このアルバムなどは、最高にゴキゲンというところでしょうが、
やはり私にとっては、心を打つまでには至りません。
 例えば、ハンク・モブリーの 「Remember」 等を聴いてしまうと、
アルト・サックスの、線の細さ・ふくよかさに欠ける音に、物足らないものを感じてしまいます。
 
■ 「Milano 7」
・ベニー・カーターにも好きなアルバムがあるのですが、とりあえずサックスはここまでにします。


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