ジャズ・ヴォーカリスト〜   
   
  
  

■ 「Vocalist」


モダン・ジャズのプレイヤーに関しては、
かなり黒人である事にこだわる私ですが、
ジャズ・ヴォーカルでは、白人に好きな歌手が多いようです。

女性歌手で、最も実力のあるといわれた、エラ・フィッツジェラルドや、
サラ・ヴォーン、カーメン・マクレイなどは、確かに上手いとは思います。
が、音楽に、“くつろぎ” を最優先する私としては、ちょっとしんどい時があります。
特に、“円熟期”の作品にそれを感じます。
 ジャズ・ヴォーカルの定義も、専門的にはいろいろあるのでしょうが、
ポピュラー・シンガーという題名でも良かったぐらいの認識ですから、あまり小難しい話にしたくないものです。

 ビッグ・バンド出身の洗練されたヴォーカリストが好きな私ですが、
 アニタ・オディ、 ジューン・クリスティ、 クリス・コナー、 ダイアナ・クラール、 エラ・フィッツジェラルド
 リー・ワイリーその他、現在もっているCDを元に、思いつくままとりあげてみました。



 アニタ・オディ
  

■ 「Anita O'day」


▽ 1955年: 「This Is Anita」  
アニタ・オディの、唯一好きなアルバムで、そばに置いて、時々楽しんでいます。
彼女は、声の弱さを、卓越した音楽センスで、独特な雰囲気を創り上げた、
丁度、ビリー・ホリディを白人にしたような歌手です。

アップ・テンポのフレージングの見事さ、スロー・バラッドでの情感溢れる説得性、
このアルバムには、彼女の、ひたむきな歌への情熱が、素直に伝わってきて、
全ての曲が、心に響きます。
 1945年:ジーン・クルーパ楽団での 「Opus 1」 や、スタン・ケントン楽団での
 
「I Can't Believe You're In Love With Me」 等を聴くと、ほとんどのビッグ・バンド出身の歌手同様、
稚拙でも若い頃の溌剌とした歌声に魅力を感じる私ですが、
独立後の数少ないお気に入りのアルバムが、これです。 


 「You're The Top」
 スタートの、この曲が粋です。
途中から、歌詞を変えて、リナ・ホーンとか、レスター・ヤングなど、人名を上手く織り込んで、
スィンギーな曲を、さらにゴキゲンにしています。
トロンボーンの分厚いサウンドとの、コール&レスポンスも、曲にリズム感を与えています。

「Honeysuckle Rose」
 なじみの曲ですが、ベース・ソロで静かに立ち上がり、段々盛り上がっていくアレンジも、見事です。
アニタの、モダンで、説得力のあるフレージングを楽しめます。

「A Nightingale Sang In Berkeley Square」
 優しく、しっとりとした、情感溢れるアニタの語り口は、バックのストリングスともフィットして、
最高のバラッドを聴かせてくれます。

「Who Cares ?」
 静かに始まり、ポール・スミスのピアノにのって、徐々にテンポを速めていく、アニタのスィング・センス、
曲のイメージに合った、ノリノリの、フレージングが見事です。

「I Can't Get Started」
 ヴァースから、やさしく、切々と歌い上げていく、スロー・バラッドでのアニタの歌心は見事です。

「Fine And Dandy」
 ポール・スミス、バーニー・ケッセルの、アップ・テンポでのソロがスィンギーです。
アニタも負けずに一気に歌い上げていきます。

「As Long As I Live」
 
センスの良さを、感じさせる曲です。
ミディアム・テンポでの、アニタのスィングは、カッコよく、ポール・スミスのピアノも粋です。

「No Moon At All」
 この曲も、私の特に気に入ったものです。スキャットでさりげなく始まり、途中変調していくところなど、
シャレていて、モダンな感覚の、スィング感に満ちています。

「Time After Time」
 一転して、スローな曲を、アニタは、素直なフレージングで、しっとり歌い上げています。
ストリングも効果的に、このバラッドを支えています。

♪ 「I'll See You In My Dreams」
 このアルバムで一番というより、私のヴォーカル・ランキングでもかなり上位のナンバーです。
おなじみの曲を、スィンギーに歌っています。
後半での、アニタの、先乗りしていくスィング感覚は、カッコよく、彼女の抜群の、ジャズ・センスを感じさせます。

「I Fall In Love Too Easily」
 ヴァイオリン主体のアンサンブルに、切ないまでの、アニタの歌が、見事にハーモナイズされていて、
バラッドとして一級品です。シナトラがしっとり歌っているテープが残っているのですが、
「惚れっぽい私」 なんていう女々しい歌を彼から聴きたくないものです。

「Beautiful Love」
 ミディアム・スィングの曲を、バーニー・ケッセルのギター、ポール・スミスのピアノ、そしてアニタのヴォーカルが、
心地よくバランスされていて、小粋なスィング・ナンバーです。

 
良かれと思って、次々、聴いていったその後の、彼女の歌は、期待はずれに終わりました。
誠実な歌心が、どこかへ飛んでいってしまい、テクニックに頼った、安易なフレージングが、鼻持ちならないのです。

  

■ 「Louvre 1」


▽ 1956年: 「Anita Sings The Most」 
「S'wonderful/They Can't Take That Away From Me」 
「Old Devil Moon」 「Love Me Or Leave Me」
「We'll Be Together Again」 「Taking A Chance On Love」 
「Them There Eyes」 「You Turned The Tables On Me」
 
 軽快なピアノに乗って、軽快にスィングしていると言えば、確かにスィングしていますが、オスカー・ピーターソンの、
お調子者のように弾くピアノと、心のこもらない、軽い調子のアニタの歌が、変にマッチして…、嫌いです。

「Tenderly」 「Stella By Starlight」 「I've Got The World On A String」 「Bewitched,Bothered And Bewildered」 
 スロー・ナンバーも、くせのある歌いまわしが、気になります。
ジャズらしいアルバムといえるのでしょうが、いかにも、というところが微妙に嫌味です。
オスカー・ピーターソンが、嫌いでなかったら、意外と、このアルバムも、違った印象になっていたかもしれません。

▽ 1958年: 「Anita O'day / Sings The Winners」
有名なジャズ・オーケストラ、コンボの代表曲を、アニタが歌うという企画モノです。
「Take The A Train」 「Tenderly」 「Night In Tunisia」 「Four」「Early Autumn」 「Four Brothers」 「Sing,Sing,Sing」
 「My Funny Valentine」 「Frenesi」 「Body And Soul」 「What's Your Story,Morning Glory」 「Peanut Vendor」

 スィングからモダンと、幅広いスタイルのおなじみの曲を彼女らしい解釈で歌っていますが、
全体的には大人しい感じのアルバムで、それほどのクセは感じません。

 その後のアルバムでは、ビリー・メイ・オーケストラが、好きという事もあって、
次の2つのアルバムが、やや、安心して聴く事が出来ます。

▽ 1959年: 「Anita O'Day Swings Cole Porter With Billy May」 
「Just One Of Those Things」 「You'd Be So Nice To Come Home To」 「Easy To Love」
 「I Get A Kick Out Of You」 「All Of You」 「Love For Sale」 「Get Out Of Town」 「I've Got You Under My Skin」
 「Night And Day」 「It's De Lovely」 「I Love You」 「What Is This Thing Called Love」
 

 有名な、スタンダード・ナンバーばかりで、聴きやすいアルバムです。
アニタ・オディも、のびのび歌っていますが、なんといっても、ビリー・メイ・オーケストラの迫力ある、スィング感が、
全体をコントロールしていて、趣味の良い、ダイナミックなアルバムに仕上げています。
 
「What Is This Thing Called Love」 だけ、アニタが自由に、スキャットを使ったりして、
アドリブに終始していますが、曲全体の雰囲気をくずくことなく、許せる範囲です。


▽ 1960年: 「Anita O'Day And Billy May Swing Rodgers And Hart」 
「Johnny One Note」 「Little Girl Blue」 「I'm Falling In Love With Love」 「Bewitched」 「I Could Write A Book」
 「Have You Met Miss Jones」 「Lover」 「It Never Entered My Mind」 「Ten Cents A Dance」
 「I've Got Five Dollars」 「To Keep My Love Alive」 「Spring Is Here」

 
 主に、ミュージカル・ソングで、知らない曲もありますが、ここでのアニタは、心を込めて、熱唱しています。
地味な曲のほうが、彼女の粋で、センスに溢れた実力が、素直に伝わるのではないでしょうか。
 それにしても、ビリー・メイは、シナトラとの共演でも、最高ですが、圧倒的なスィング感溢れる
素晴らしいオーケストラです。スィング・ジャズ・ヴォーカリストにとっては、最高の味方でしょう。

 
アニタ・オディに関しては、せいぜいここまでで、その後、何度も来日し、姉御などと言われ、
技巧的で、くせのあるシンガーになってしまい、私にとっては、さようならという感じです。
        

 ジューン・クリスティ 
  
■ 「June Christy」

 彼女の音楽を聴きたいというわけではなく、可愛い笑顔と、
コリンズ・グラスという、粋なジャケットが気に入って買ったレコードが、
「Something Cool」 です。
 中味も素晴らしかったけれど、彼女を知って、
もっと素晴らしいアルバムを購入する事になりました。
 
▽1945: 「Complete Capitol Small Group Transcriptions」
 
:
Ray Wetzel (tp).Gene Roland (vtb).Boots Mussulli (as).Fred Zito(p).Dave Barbour(g)
.Eddie Safranski(b).Eddie Spanier(d)
 ・「Early June」 と同じ内容だと思います。

 女性のハスキー・ボイスは、セックス・アピールがあり、男なら誰でも好きなものですが、
ここでの彼女の歌は、チョッとニュアンスが違います。若々しい、チャーミングな、ハスキー・ボイスなのです。

 概して、私は、女性歌手に関しては、若い時代の歌を好み、男性は、円熟した時期のものが好きです。
が、このアルバムのジューン・クリスティの可愛らしさは、尋常ではありません。
後年の歌声を先に知っていただけに、新しい発見に、すっかり彼女がお気に入りになりました。
ヘレン・フォレストと同じような印象を、今では抱いています。
 もっとも、ジューン・クリスティは、顔ではなく、歌そのものに、魅力があるのですが…。


「Make Love To Me」
 まず、最初にびっくりします。幼い子が、大人の歌を歌っているような、妙な感じを受けるのです。
ハスキーな声で、精一杯、大人の歌に挑戦している少女のような感じです。

♪ 「How High The Moon」
 愛らしいフレージングです。後に、スタンケントン・オーケストラでも歌っていて、
スローからチョッと、スキャットを入れて、アップテンポへと、すっかり大人のスィングですが、
ここでは、まだそこまでいっていません。でも、こちらの方が気に入っています。

♪ 「Wrap Your Troubles In Dreams」
 このアルバムで、最も可愛らしい彼女を聴けるナンバーです。まだ、少女のような語り口で、
バックのペットやサックスの大人っぽさと、妙なバランスを感じさせます。

「Can't Help Loving That Man」
 これは、比較的大人びた歌い方で、ムードを感じさせますが、ジュリー・ロンドンの、妖艶な歌い方などと比較したら、
当然色気はありません。それがまた良いのです。

「Sweet Lorraine」
 ナット・キング・コールによる、56年の録音がベストのこの曲も、彼女は、一生懸命歌っています。
ギターのデイブ・バーバーが、良い味を出しています。

「Don't Worry About Me」
 スロー・ナンバーを、彼女なりに、情感を込めて歌っています。短い曲でも、彼女のフレージングは、独特です。

「I Can't Believe That You're In Love With Me」
 アップ・テンポで、おなじみの曲を歌う彼女です。
これも、一分チョッとしかない短い歌ですが、カワユイとしか言いようがないスィング感です。

♪ 「June's Blues」
 珍しく、アップ・テンポのマイナー・ブルースです。
背伸びして歌っているといった感じで、頑張っている口元が見えるような愛らしさです。
彼女のフレージングは、若い躍動感に満ちていて、このアルバムで一番のお気に入りナンバーです。

「Mean To Me」
 ビリー・ホリディと比べたら、そのフレージング、声の質が、同じ曲かと思わせるほどの違いで、且つ可憐です。
もっとも、ビリーは、原曲がわからないほどのアドリブで、その曲の解釈が、抜群に素晴らしいのですが…。


「September In The Rain」
 ジョージ・シアリングのスィンギーなピアノが、すぐ思い浮ぶ、名曲です。
彼女は精一杯、メランコリックに歌っていて、それが、また何ともいえない愛らしさです。
後の「Something Cool」 で顕著な、独特の歌心は、この曲でも十分感じ取れます。
 レスターを期待しても無理なのでしょうが、アルト・サックスのソロでは、あまりレージーな感覚がありません。


「Stompin' At The Savoy」
 ベニー・グッドマンで、なじんだ曲です。バックに男性コーラスを配し、スィンギーに、明るく歌っています。
ドライで、クールなハスキー・ボイスという評価の彼女ですが、私は、そう感じた事はありません。
この曲でも、スィング感に満ちた、心癒される、優しいハスキーな歌声です。

「The One I Love Belongs To Someone Else」
 大人びた歌を、彼女なりの解釈で歌っています。時々怪しくなる、音程も魅力です。
バックのピアノや、ギターは、見事な演奏で、曲を盛り上げています。

「Moonglow」
 この歌は、すぐピクニックのキム・ノヴァクを思い浮かべてしまう、私の想いの強い歌ですが、
彼女も、スローから、アップへと、変化をつけて頑張っています。彼女に足りないのは、恋の経験だけ、といった感じです。

 ともかく、可愛らしい歌声です。ハスキーで、心もとなげで、こんな愛らしいジャズ・ヴォーカルが、
あって良いものかと思うぐらいの魅力に満ちています。特別な基準のもとで、私の、ベスト・アルバムです。
  

■ 「Louvre 2」


・▽1946年:
「Get Happy」 「I've Got A Guy」 「Lover Man」 「Lullaby In Rhythm」 
「This Is Romance」 「Supper Time」 「I'm Thrilled」 「
I Can't Give You Anything But Love」 「How Long Has This Been Going On」
 「You're Blase」 「Prelude To A Kiss」 「What's New」
:John Anderson(tp).Kai Winding(tb).Bob Cooper(ts).Arnold Ross(p).Dave Barbor(g).Eddie Safranski(b)
.Shelly Manne(d).Tommy Todd(arr) 


 一年経つと、ずいぶん変わってしまうものだな、と思わせる歌いぶりです。
ここで、テナー・サックスの、ボブ・クーパーと結婚したらしいのですが、そのせいもあるのかな、と思わせる落ち着きです。
やや、モダンなプレイに変わってきていて、45年ほどの感激はありませんが、愛らしく、ハスキーなそして、
真面目に歌うジューン・クリスティに、好感が持てます。

 
「Lover Man」 は、曲の美しさもありますが、ここでの彼女は、表現力も増していて、
落ち着いた、大人の魅力を発散させています。さすがに、ビリーとレスターのようにはいきませんが、
ジューンの歌に、ボブのテナー・サックスが優しく応えています。

 このCDは、ジューン・クリスティの、愛らしい、女性としての魅力の原点ともいえるアルバムです。
スタンダード・ナンバーばかりということで、親しみやすく、他のシンガーでも聴く事の多い曲ばかりですが、
全く違った魅力が、このアルバムにはあります。

  

■ 「Something Cool」


▽1955年: 「Something Cool」 
 このアルバムに聴く、彼女の歌は、一般的な、スィング・ジャズとも違う、
都会的で、モダンなセンスに満ちています。
これをクールと言うのかもしれませんが、彼女にしか表現できない洗練された、
リリシズムを感じます。
今まで味わったことのない、ジャズの魅力がここにはあります。

♪ 「Something Cool」
 
アルバム・タイトルにふさわしい熱唱です。ドラマティックな、ラブ・ストーリーを見ているような、
これは、単なるジャズのジャンルを超えた、印象的なナンバーです。

「Magazines」
 
スロー・ブルースを情感を込めて歌っています。
スムーズなメロディに、オーケストラがドラマティックにサポートしていて、心地よい安らぎを感じます。


♪ 「Midnight Sun」

 アルバムの中でも特に気に入っているナンバーです。
彼女のハスキーなバイブレーションが、上品な色気を発散して、他人には真似の出来ない表現です。
ライオネル・ハンプトンのヴァイブも雰囲気があって良いのですが、ヴォーカルだったらこれがベストだと思っています。

「Lonely House」 「A Stranger Called The Blues」 「I'm Thrilled」 「The Night We Called It A Day」
 スロー・バラッドでの彼女は、オーソドックスな、表現の中にも、ハスキーなバイブレーションで余韻を残し、
女性らしい優しさが、曲全体を包んでいて魅了されます。やや幻想的な印象もあります。

「I'll Take Romance」
 
テンポに変化をもたせてドラマティックに熱唱しています。題名どおりロマンティックな表現です。

「I Should Care」
 お馴染みのスタンダード・ナンバーで、いろいろな歌手が歌っていますが、独特の優しさに溢れた語り口が魅力です。
この曲のベストは、ジョー・スタッフォードだと思っていますが、彼女の女らしい解釈にも魅力があります。

「It Could Happen To You」 「This Time The Dream's On Me」
 軽快なスィング・ナンバーを、独特のフレージングで歌う彼女は、ビッグ・バンド出身である事を感じさせ、
一流のジャズ・シンガーである事を証明しています。

♪ 「Softly As In A Morning Sunrise」
 大好きな、スタンダード・ナンバーです。ミディアム・テンポの中にもスィング感が心地よく、彼女のハスキーで、
やさしい表現は、格別の味わいがあります。曲自体が短いのが残念です。

「Look Out Up There」
 オーケストラをバックにスィンギーに歌っています。なかなか魅力的な曲で、彼女の選曲のセンスを感じます。

「Out Of Someewhere」
 彼女の清楚な歌いぶりが、軽快な曲に、こじゃれた印象を与えています。

「Love Doesn't Live Here Anymore」
 チョッと投げやりの歌い方が、可愛らしく感じられてしまうのは、彼女ならではの事です。
ペギー・リーあたりだと、相当捨鉢に聴こえるところでしょう。

 
亡くなるまでに沢山のアルバムを残していますが、終始、一貫したスタイルは、
ジョー・スタッフォードにも通じる、見事なアーティストと言わざるを得ません。
彼女の歌は、上品で、清楚な魅力に満ちています。
 特にこのアルバムは典型的なジューン・クリスティの音楽を表現した代表作だと思います。



その後、気に入ったナンバーとしては、
▽ 1955年: 「Duet」
 
「Baby All The Time」 スタン・ケントンのピアノで、珍しくジューンは、スキャットを披露します。

▽ 1958年: 「June's Got Rhythm」 
「Rock Me To Sleep」 ベニー・カーターの曲、ストレートなジャズを、見事に歌う、彼女のセンスが光ります。

▽ 1963年: 「The Intimate Miss Christy」
「Fly Me To The Moon」
 ギター、フルートをバックに、しっとりと、情感たっぷりに歌います。女性の優しさに溢れたナンバーです。

▽ 1962年: 「Big Band Spedials」
「It Don't Mean A Thing」
 バド・シャンクのサックス、ジミー・ロウルズのピアノに乗って、スィンギーに楽しむように、歌っています。
スキャットも交えて、ゴキゲンな、彼女の一面を見る事が出来ます。


▽ 「June Christy Sings The Standards」 
 「The Best Of June Christy」 
 現在は、彼女の幅広い活躍をセレクトした、このようなCD盤で、楽しんでいます。
彼女の歌は、大げさに言えば、心洗われるような力があります。が、何と言っても、
45年・初期の彼女のアルバムだけは、大のお気に入りとして、常に身近に置いてあります。


 ※ ここで、ヘレン・メリルのハスキー・ボイスについて一言。
▼ 1954年: 「Helen Merrill With Clifford Brown」 超有名なアルバムです。
2曲目の、
「You'd Be So Nice To Come Home To」 は、彼女のベスト・ナンバーです。確かに、
情感たっぷりのヘレン・メリルと、クリフォード・ブラウンのトランペット・ソロは、歌心に溢れていて、魅力があります。

 すごく流行った曲で、私も少年時代に憶えた曲でもあります。が、それ以降の彼女を、ちっとも良いと思いません。
基本的に、彼女のハスキー・ボイスが、あまり好きではないのです。
 “ニューヨークのため息” とか言われて、あの声が売りなのでしょう。
でも、ジューン・クリスティの、可愛らしい、微妙なバイブレーションの効いたハスキー等とは違って、
ここまで、しゃがれていると、私にとっては、心地よさを通り越して…、疲れてしまうのです。
 
 
■ 「Manhattan」

 〜 脱線ついでに、カクテルの話です。〜
ジューン・クリスティの写真にある、コリンズ・グラス
(本当は、単なるタンブラーかもしれませんが。)
などに興味をもつ理由は、高校生の時代に、カクテルを、家で作るのが趣味だったからです。

きっかけは、父に連れられて行った、チョッときれいなママのいる小さなバーでした。
カウンター越しにある、様々な色や形の洋酒の美しさ、また、ママの動作の手際よさ、そしてグラス、
シェーカー、ジガーなどの小物が何とも魅力的に見えました。
 (父の外出の口実を手伝っただけですから、他に見るものも無かったともいえます。
 まあ、強いて気になったと言えば、流れていたジャズぐらいです。
ヘレン・メリルの例の歌なども、恐らくこんな所で聴いていたのだと思います。)

 父が好きだった、カクテル:「アラスカ」 を作ってあげるという名目でスタートし、その世界にはまっていったのです。
参考書にしたがって、道具をそろえ、レパートリーの広がりと共に、洋酒の数も増えていったものです。
ベースのウイスキー、ジン、ブランデイ、ウオッカ、ラムなどの蒸留酒以外は、出来るだけミニチュアで集めようとしましたが、
当時はリキュール酒も、あまり種類が無く苦労しました。
でも、高校生にして50種類以上のレパートリーがありましたから、我が家の客人には好評でした。
もっとも、お客の方が、あまり種類を知りませんでしたから、珍しがられた程度だったとは思いますが…。

 最初に憶えたカクテルは、「マンハッタン」 でした。
ウイスキーとイタリアン(スイート)・ヴェルモットは比較的容易に手に入った事もありますが、
一番の理由は、ジョージ・オールドのテナー・アルバムにあった
「Manhattan」
と言う曲が大好きで、親しみがあったのです。
そして、カクテルの女王と呼ばれている事も、気に入った原因です。
マラスキーノ・チェリーの沈んだ、チョッとオレンジがかったカクテル・グラスが、今でも鮮明によみがえります。

■ 「Martini」 

 
007の映画で、ショーン・コネリーが、“マティーニをシェイクして!” というセリフも、
マティーニがカクテルの王様という事もあって、懐かしい想い出です。
ジンとフレンチ(ドライ)・ヴェルモットを、ミキシング・グラスでステアし、
決してシェーカーは使わないカクテルを、敢えてシェイクしてというところがミソなのです。
(007はウオッカ・ベースだったかもしれませんが…。)

 当時、ゴードン・ジンは、高嶺の花で、国産のものしか買えませんでしたが、最近購入した河内屋では、
1000円もしませんでした。つくづく時代の流れを感じました。(丁度、バナナのような感慨です。)


 
私は、酒が飲めませんが、ジンだけは、カクテル・ベースとして一番活躍した事と、
あの独特の杜松の香りがなつかしくて、時々買う事があります。
カクテルにすると、くせが無くなる奇妙な酒ですが、私が飲む場合は、ナイト・キャップとして、
クッと一気に飲むことにしています。
西部劇では、バーボン・ウイスキーを、その様に飲み干すシーンを沢山観ていましたが、
ウイスキーはあまり好きではないので、気分だけ真似るのです。が、いつもやっているわけではありません。

 当時は、カクテル・バーがかなりあったように記憶していますが、最近また流行しているようで、結構な事です。
やはり、酒飲みもカルチャーを志向してもらいたいものですが、日本では、カクテルを片手に、
ピアノの弾き語りを楽しむなど、トレンドとしてはあっても、生活文化に定着するまでには、なかなか至らないことでしょう。
 日本酒の世界では、歴史もあり、ごく自然にカルチャーが醸成されているとは思いますが…。
 
■ 「Cocktail」

 一番高価だったのは、「アラスカ」 を作るためのイエロー・シャトリューズという、
細長く美しい姿の洋酒でした。
当然父に買ってもらい、時々作ってあげましたが、
恐らく、余計なお世話と感じた事でしょう。
息子が家で作るカクテルに、どれほどの意味があるのか、今考えると苦笑ものです。
(実は、父の馴染みのママのいるバーの隣が、私の馴染みのカワイコチャンのいる、
喫茶店だったのです。親子して一体何を考えていたのでしょうか?!。)

 トム・コリンズなど、ロング・ドリンクものは、当時は、あまりカクテルとして認めていませんでした。
なんと言っても、カクテル・グラスに、氷の溶ける量を計算して作った作品が、ピタッとグラスに収まった時は、
プロ気分に浸れて、気持ちがよく、それが一番の楽しみでしたから。

 ほとんど自分では飲みませんでしたが、「サイド・カー」 は、私にとっても、
さっぱりして口当たりの良いカクテルで、気に入っていました。
材料のホワイト・キュラソーの、素焼き風のボトルがカッコよく、洋酒だな(食器棚)に映えていた事を想い出します。
 
 大学へ入ってからは、全く興味も無くし、今に至っています。
趣味としては、もう一度挑戦しても面白いテーマですが、チョッと背伸びして、粋がっていた昔と違って、
もう一つ、モチベーションが上がらないことも事実です。
 目新しさもスリルも無く、何より、あまり苦労しないで、世界中の酒が集まってしまうというのも、
挑戦意欲を削ぐ原因になっています。

 年をとっても、あの頃と同じように、無心にのめり込めるテーマを見つける事は、
意外と難しく、しかし、大切な事かもしれません。


 リー・ワイリーが 「I've Got A Crush On You」 
をステージで歌っていた時期、高校生の私は、
そんなシーンに憧れて、ひたすらカクテルを作っていたのですが、夢を叶えられるはずの現在、
彼女の、ハスキー・ボイスを聴きながら、コーヒーをすすって夜のひとときをくつろいでいる有様です。



 クリス・コナー
 
 
■ 「Chris Connor」


 「Lullaby Of Birdland」 で、親しみのあった彼女ですが、
その後、何枚かのアルバムを聴いてみて、
やはり、あの曲が一番良かったと、今でも思っています。

 彼女は、年代的にも新しく、ジャズ・フィーリングは、3人の中で
一番だとは思いますが、彼女を、好きだけれど、
大のお気に入りに出来ない理由があります。歌い方が、チョッと、間の抜けた、
(ポカッと口を開けたままのような) しまらない感じがするのです。
あの声で、あのセンスで…、惜しいところです。

 
彼女が、レズビアンであるかの文章を見かけましたが、私にとっては、うらやましい事はあっても、
その事が、彼女への評価にいささかも、影響を及ぼすような事はありません。
ただし、知的でクールと言う表現には、やや、異論があります。
その言葉は、ジューン・クリスティにふさわしいと私は感じています。音楽は、学歴とは関係ありません。


▽ 1954年: 「Chris Connor Sings / Lullabys Of Birdland」 

♪ 「Lullaby Of Birdland」
 テンポといい、メロディの美しさといい、クリスのフレージング、エリス・ラーキンスのピアノの、
リラックスしたスィング感、全てが申し分ない出来栄えです。
ポピュラー・ソングの感覚で、少年時代は聴いていましたし、当時、彼女の歌は、これ位しか、
聴いた事がなかったような気がします。この曲をCDで聴きたくて…、
結果、いろいろなアルバムに、手を出す事になりました。

「What Is There To Say」
 スローな、ラブ・バラッドを、情感を込めて、ていねいに歌っています。
エリス・ラーキン・トリオの上品な演奏も好感が持てます。

「Try A Little Tenderness」
 これも同様に、スロー・バラッドで、クリスはここでも、見事なフレージングを聴かせますが、
ちょっと、語尾で、だらしない感じが気になります。
決してそのつもりではないのが解りますが、余韻の残し方が、私の嫌いなところです。

「Spring Is Here」
 スロー・ラブ・バラッドを、しみじみ歌う、やや、ハスキーな声は、魅力があります。
トリオのバックも、ムード溢れる演奏で、効果的です。


「Why Shouldn't I」
 やや、自嘲的な意味をもつこの曲を、クリスは、しっとり歌っています。

「Stella By Starlight」
 ジャズ・シンガーお好みの曲です。アコーディオンの間奏に、チョッと違和感を感じますが、
クリスのスィンギーな歌は、申し分なく、ジャズを感じます。

「He's Coming Home」
 あまり馴染みのない曲ですが、言葉を選んでいるような、ていねいな語り口は、
彼女の歌唱力の豊かさを感じます。

「Goodbye」
 ベニー・グッドマンのクロージング・テーマとして、広く知られている曲ですが、
情感溢れるクリスの、歌も捨てがたいものがあります。

 全アルバムの中でも、これらの曲は、彼女の、歌唱力の確かさ、情感のこもったフレージングと、
文句なしに、ジャズ・ヴォーカルの中でも、トップ・クラスの出来栄えであることは、間違いありません。
但し、雰囲気の違いすぎる曲もあって、全部を通しで聴くには、チョッと辛いところです。
 私にとっても、なじみの曲が多いことで、ベツレヘム3部作のなかでも、このアルバムが、
一番気に入っています。

 「Lullaby Of Birdland」 は、特別ジャズ・ファンでなくても、知っている曲です。
音楽好きだった私も、少年時代から、この歌や、クールの代表的歌手として、
アニタ・オディは知っていました。彼女が、なぜクールなのかは、未だに理解できませんが…。
 ついでに言えば、今、一番お気に入りになっている、ジューン・クリスティを知ったのは、
一番遅く、大学時代以降だったと思います。

 家にあった、スィング・ビッグ・バンドの、テーマ曲だけを集めたLPの中で、スタン・ケントン楽団だけが、
馴染みも無く、魅力を感じないテーマ曲だったことを想い出します。
ベニー・グッドマン、グレン・ミラー、トミー・ドーシー、デューク・エリントンなどに比べて、
スタン・ケントンは、時代も新しく、モダンで当然と、今なら理解できますが…。
そして、私にとっては、相変わらずスタン・ケントンは、想い入れも無く、
気に入ったナンバーも無い、単に、ケントン・ガールズの名前の由来ぐらいの意味しかありません。

  

■ 「Louvre 3」


▽ 1955年: 「This Is Chris / Chris Connor」 
「Blame It On My Youth」 「It's All Right With Me」  
「Trouble Is A Man」  「All Dressed Up With A Broken Heart」
 クリス・コナーのモダンで、叙情的な表現は見事です。

「It's All Right With Me」 は特に好きな曲ですが、彼女のスィング感が素晴らしく、気に入っています。
こういうアップ・テンポの時は、嫌味の無い、ジャズ・フィーリングが感じられて、申し分ありません。 

「Someone To Watch Over Me」 「I Concentrate On You」  「Ridin' High」
 折角しっとりした歌なのに、J.J ジョンソンと、カイ・ウインディングのトロンボーンが、邪魔です。
彼女の上品な、繊細さを壊していて、残念です。


▽ 1955年: 「Chris / Connor Chris」 
「All About Ronnie」
 この曲に、私が、気に入らない、彼女の典型的歌い方の例を、聴き取る事が出来ます。
口をだらしなく開けているような、しまりのない感じです。
 クリスの、クールなフィーリングたっぷりの語り口が、見事だと、説明書にありますが、
私にはそんな風には聴こえません。

「Everything I Love」
 オーケストラをバックに、ゆったりスィングしているクリスの、魅力溢れるナンバーです。

「I Hear Music」
 ピアノに合わせて、スィングするクリスの語尾をゆする、得意なフレージングもシャレていて、
聴かせてくれます。

「Don't Wait Up For Me」
 聴きなれない曲ですが、彼女の、スロー・バラッドでの、情感の盛り込み方は見事なものです。

「From This Moment On」 「In Other Words」 「Fly Me To The Moon」
 ここでも、トロンボーンが、邪魔です。もともと、J & Kの、寝ぼけたようなトロンボーンは嫌いでしたが、
他の人にはどうでも、私の感性では許せません。せめて、ハービー・マンのフルートだけに
しておいて欲しかったものです。
 このアルバムは、一番地味と言えますが、彼女の最も素晴らしい時期の一枚に、変わりはありません。


▽ 1956年: 「A Jazz Date With Chris Connor」 
「Moon Ray」 「Just Squeeze Me」 「It's A Most Unusual Day」 「All I Need Is You」
 「It Only Happens When I Dance With You」 「Everything I've Got」 「I'm Shooting High」 
「My Shining Hour」
 
 12曲の中でも、スィング・フィーリングの感じられるナンバーです。
モダン・ジャズ感覚の軽快なものが多いのですが、あまり馴染みのない曲なので、愛着が湧く
というわけにはいきません。全体として、やや地味なアルバムです。


▽ 1958年: 「Chris Craft」 
「Moonlight In Vermont」 「Here Lies Love」 「Good For Nothin'」  「The Night We Called It A Day」 
「Lover Man」 

 このアルバムは、ほぼ1曲ごとの、アップ・テンポのものに、聴くべきものがありません。
せいぜい 
「Chinatown My Chinatown」 がよい位で、後は、極端に駄作です。

 スロー・バラッドのこれらの曲は、しっとりとした、素晴らしい味わいのものばかりです。
モダンなフレージングも粋ですが、珍しく、切ないまでの情感が、素直に伝わってきます。
バックのギター、フルートも曲のイメージを高めています。 

 
「Here Lies Love」 などは、およそ、私が抱いていた、クリス・コナーのイメージとは違って、
女心の切なさを、しみじみ歌いあげていて、ダイレクトに、つらさが伝わってきます。

 アルバム編集に問題があり、心に残る、優れた曲があるのに、
全体としては、イマイチという事になってしまいます。

 
この3人の、私にとっての魅力は、アニタ・オディの卓越した、スィング感覚。
ジューン・クリスティの魅力に溢れた、ハスキーな歌声。クリス・コナーの抜群の、
ジャズ・センスということになります。
そして、清涼感と上品さから、ジューン・クリスティが、一番のお気に入りというところです。

    

 ダイアナ・クラール (異例ですが、現代のアーティストです。)
  

■ 「Diana Krall」

 美形。白人では珍しい、ドスの効いた豊な声量。
素直なジャズ・フィーリング。力強く、スィンギーなピアノ・テクニック…。
様々な可能性を秘めている女性です。
 私が、彼女を知ることになったのは、CDショップの陳列棚です。
ジャケット美人が目にとまったというわけです。

それでも、最初に買ったのは、黒ベースに、ロゴだけという地味なデザインの
 
「All For You (A Dedication to the Nat King Cole Trio) Diana Krall」 でした。 
ナット・キング・コール・トリオへ捧げる、というタイトルに惹かれて、買う気になったのです。


 
「All For You」 を聴いてみて、カーメン・マクレイと、声の質、歌唱法が良く似ているというのが、
素直な感想でした。
あれだけの声で、ピアノも弾ける美人アーティストというのは、大変な魅力です。
最近のジャズには、興味もありませんでしたから、この発見は喜びでした。このアルバムが気に入って、
次々聴くことになりました。 〜期待が大きすぎたかなと、今では思っています。                                                              

△1995年: 「Only Trust Your Heart」

「Is You or Is You Ain't My Baby」 「I Love Being Here With You」 「CRS Craft」 
 堂々とした歌いっぷり、ピアノはあくまでも力強く、男性を思わせる迫力です。
ピアノの弾き語りで、これだけのプレイ内容は、相当の実力を感じます。
タレンタインのテナー・サックスの、相変わらずの音色、フレージングに懐かしさを感じます。

 今は、かなりの年令だと思いますが、60年頃と変わらないプレイに驚かされます。
ふと、彼女が、ハード・バップ時代のプレイヤーだったら、どんなポジションで、誰と共演していただろうかと
考えてしまうほど、エキサイティングな好プレイを聴かせてくれます。
この3曲は、いずれもスィンギーで心地よいナンバーです。

「Only Trust Your Heart」
 ラテン調のリズムをバックに、スロー・バラッドを聴かせます。素直な表現に、嫌味がありません。
ピアノを弾きながらの歌だけに、伸びのある声は、高音部でのほうが、より自然で迫力があります。

「Broadway」
 スィング感が魅力のこの曲ですが、ここでは、ややスローな中にも、リズムが心地よく、
レイ・ブラウンの元気なソロも楽しめます。ハリのある、クロールの声、パワーに満ちた、ピアノ・タッチも見事です。
ジャズの大切な魅力である、“粋な感じ”が味わえるナンバーです。

「Folks Who Live On The Hill」 「Squeeze Me」
 
この2曲は、ジョー・スタッフォードで気に入っていますから、どうしても比較してしまうのですが、
ここでは、パワフルな中にも、誠実さが感じられ好感が持てます。優しさ、甘さを彼女に期待しません。
ジョー・スタッフォードの魅力が、しっとりとした味なら、彼女は、バラッドを、おおらかに歌うところに魅力がありそうです。


「I've Got the World on a String」
 カーメン・マクレイを彷彿とさせる、バイタリティのある歌声。スィンギーで、確かなテクニックを感じるピアノ。
レイ・ブラウンの歌心溢れるベース・ソロ。ドラムの心地よいリズムに支えられて、彼女の得意なナンバーである事を
うかがわせる熱演ぶりです。そして、こんな感じが、彼女の最高の持ち味なんだろうなあ、と思います。

「All Night Long」
 スロー・バラッドを、豊な声量を生かし、情感たっぷりに歌っています。弾き語りのくつろいだ雰囲気が伝わってきて、
彼女のジャズ・センスが実感できるナンバーと言えます。ピアノも力強い中にも、豊な表現力を感じます。

 レイ・ブラウン、スタンリー・タレンタインが参加しているため、ハード・バップ時代にタイム・スリップした感じで、
不思議な気がします。彼らはずっと活躍していたのでしょうが、私は時代を追って、
彼らのプレイを聴いていたわけではないので、懐かしいというより、不思議な気がします。

 どうしても、50年代までのジャズと比較して聴いてしまうのですが、
このアルバムは、時代の空白を感じさせず、素直に楽しめます。楽しみなアーティストが出現した、という感じです。
スィング感に溢れ、彼女の声の質、ダイナミックさを生かした、おおらかで、素直なプレイに好感がもてます。

  
■ 「Louvre 4」

△1996年: 「All For You」 

「I'm an Errand Girl For Rhythm」 
ナット・キング・コールを思わせる、モダンなピアノ・プレイ。
アップ・テンポを一気に歌いきる彼女の力量は、見事です。

「Gee Baby, Ain't I Good to You」
 ジミー・ラッシングが、ベストのスロー・ブルースを、クラールは、ジャズ・フィーリング一杯に、
自分のものとして歌っています。このアルバムでも出色です。

「You Call It Madness」
 キング・コールの愛唱したスロー・バラッドです。ギター・ソロは、オスカー・ムーアを想いおこさせる、心地よさですし、
彼女の弾き語りも、キング・コールを想いおこさせます。

「Frim Fram Sauce」
 これも、キング・コールが歌っていますが、スィンギーな歌を、スキャットも交えながらゴキゲンに歌っています。
ピアノ・タッチも、どことなく、キング・コールや、オスカー・ピーターソンをしのばせる見事なものです。
ギターのコード・プレイが雰囲気をもりあげて、気に入ったナンバーです。

「Boulevard of Broken Dreams」
 ラテン・リズムで、しっとり歌うクロールですが、どちらかというと、私は、このてのスロー・バラッドでの彼女には
あまり魅力を感じません。でも、後に聴くラブ・バラッドでの、鼻につく猫なで声みたいな感じはありません。

「Baby Baby All the Time」
 単純なリフ・ナンバーのブルースですが、クラールのピアノは、強いだけではなく、間を生かした味のある表現です。
弾き語りの魅力を感じます。

「Hit That Jive Jack」
 これも、キング・コール・トリオで有名ですが、私は、こちらの出来の方がよほど優れているように思います。
3人での歌も見事ですが、ピアノ、ギターのソロもスィング感と、テクニックが優れていて、申し分ありません。
ジャズの楽しさを教えてくれて、このアルバムのベストかもしれません。

「You're Looking at Me」
 この曲は、キング・コールで歌っているものも、あまり好きではないのです。
どちらかというと、メリハリのない曲自体がダメなのです。
ラッセル・マローンのギターがバーニー・ケッセルを思わせる雰囲気で、こちらの出来の方が良いかもしれませんが…。

「I'm Thru with Love」 「A Blossom Fell」
 彼女は、このてのスロー・バラッドを好みなのかもしれませんが、私にとっては、魅力を感じません。
ライブでの弾き語りを見ているなら別でしょうが。上手く歌っているという程度で、心に響くほどのものがありません。

「Deed I Do」
 彼女のピアノは、キング・コールと、カナダ出身の先輩ピアニスト、オスカー・ピーターソンを思わせるプレイ・スタイルが
時々聴き取れます。むしろ、もっとバーティカルな感じですが、ピアニストとしての魅力は、相当あります。

「If I Had You」
 ピアノをベニー・グリーンに譲って、ヴォーカルだけですが、さすがに、のびのび歌っています。
しかし、女性のバラッドは、沢山良いものを聴いてきた私にとって、特別素晴らしいと思う出来ではありません。

 
 数少ない彼女のアルバムの中で、「Only Trust Your Heart」 以上に気に入っています。
ナット・キング・コールのピアノ・トリオと同じ編成で、弾き語りの魅力を十分堪能できます。
彼女は、彼を尊敬しているそうです。私も、そこが気に入ってCDを購入したのです。
 このアルバムは、ピアニストであることにこだわった、素晴らしいアルバムだと思います。
歴代のピアノ・トリオの作品と比べても、遜色ない、ジャジーな魅力に溢れています。



△1997年: 「Love Scenes」 

・「All or Nothing at All」 「Peel Me a Grape」
 ジャズの香りがする、レイジーな、心地よいナンバー。ピアノは、ピーターソンを思わせスムーズです。
弾き語りの楽しさが味わえます。ふてぶてしい感じで、崩したフレージングのほうが、彼女の声にはあっていて、
フィーリングもグッドです。


「I Don't Know Enough about You」
 やや、スィンギーで、ギター・ソロ、ベース・ソロも良く、弾き語りのリラックス感も素直に伝わってきて、
心地よいナンバーです。

「I Miss You So」 「Gentle Rain」  「How Deep is the Ocean」 「Garden in the Rain」
 このての、スロー・ラブ・バラッドは、あまり気にいりません。口先だけの情感といった感じです。
ピアニストとしては、十分魅力を感じます。

「They Can't Take That Away from Me」
 囁くように、情感たっぷりの歌い方は、かないません。ピアノは、ピーターソンを彷彿とさせます。
ラッセル・マローンのギターは心地よいのに…。

「Lost Mind」
 ロック調の演奏スタイルが面白く、彼女も癖のある歌い方がなかなかシャレています。ちょっと、
ベタッとしたところが気になります。もっと、ぶっきらぼうに、突き放したような歌い方を望むところですが、残念です。

「I Don't Stand a Ghost of a Chance with You」
 レスター・ヤングでおなじみの曲です。彼のプレイと同じく、超スロー・テンポを、情感たっぷりに歌っています。
気持ちよく歌っているのでしょうが、心地よさが、こちらには伝わってきません。

「You're Getting to be a Habit with Me」
 歯切れの良い演奏で、センスのよさを感じます。このように、テンポの良いほうが、弾き語りの味がでて、私は好きです。

「My Love Is」
 ベースだけをバックに歌うクロールですが、このようなスタイルを聴くと、ペギー・リーのほうが、
よほどシャレていたななどと、すぐ比較してしまいます。ダイアナ・クラールの声に、セクシーさは感じません。

「That Old Feeling」 「Another Spring」
 バーニー・ケッセルばりのギターをバックに、おなじみの曲を、素直に歌っています。ピアノはありませんから、
まさに、ジュリー・ロンドンばりですが、しっとり感が違います。

 このアルバムあたりから、私の期待しているものと、ズレが出始めます。人気のラブ・バラッド特集ですが、
彼女の雰囲気から、スロー・バラッドでも、もっと、自分の声の質を生かした歌い方がありそうな気がします。

  

■ 「Orsay 1」

△1999年: 「When I Look In Your Eyes」 

「Let's Face the Music and Dance」
 すっかりイージー・リスニング調です。
オーケストラをバックに、囁くように歌っています。

「Devil may Care」 「Popsicle Toes」
 ピアノ・トリオでのナンバーです。
スィンギーですが、弾き語りのせいかもしれませんが、押さえ気味の歌唱法が、気になります。

「Let's Fall in Love」
 ヴァースでトリオが静かに始まり、控えめなオーケストラのサポートが聴かれます。
おなじみの曲を、ミドル・テンポでスウィンギーに演奏していて、シャレた・ナンバーです。

「When I Look in Your Eyes」 「I'll String Along with You」 「Do It again」 「Why should I care」
 スローなラブ・バラッドを心を込めて歌っているという感じです。
恐らくこのような曲に代表される、ダイアナ・クラールの歌い方が、ヒットの原因なのでしょうが、
私にとっては、全く逆で、これが、彼女のベストならば、ゴメンナサイという感じです。

「I've got You under My Skin」 「Pick Yourself Up」
 テンポも良く、シャレているのですが、オーケストラでの、トーンを落とした歌い方、
甘さの表現は気に入りません。

「I can't give You Anything but Love」 「East of the Sun」  「The Best thing for You」
 弾き語りでスィンギーに歌っています。やはり、ピアノ・トリオは、ジャズを感じさせて良いのですが、
ときどき聴かれる、囁くような歌い方は、やはり気持ちよく聴けません。

「P.S. I love You」
 ギター伴奏でのバラッドは、どうしても、ジュリー・ロンドンと、バーニー・ケッセルを想いおこさせます。
ここでの彼女は、あまりべたついた感じはありませんが、女性らしい、しなやかさ、はかなさ、
といった雰囲気は、あまり彼女に似合わないのではないかと、ここでも感じます。

 このアルバムは、「The Look Of Love」 ほどではないにせよ、路線が変わってきている事が良くわかります。
オーケストラをバックにしたバラッドは、ジャズ・ピアニストという、ジャンルから遠のいてきています。
尊敬する、ナット・キング・コールの後を追っているのかもしれませんが、ピアニストとして、相当魅力があるだけに、
トリオ、カルテットなどで、スィングするピアノ・プレイを、もっと聴かせて欲しいものです。


△2001年: 「The Look Of Love」 

 おなじみの、スタンダード・ナンバーばかりだったので、期待して購入したアルバムです。
CDのケースを開けてみると、彼女の写真ばかりの小冊子がはさまれていて、
純粋なジャズ・アーティスト扱いではなく、チョッと引いてしまいました。
私が、最近のミュージシャンを知らないせいもあるのかもしれませんが、商業主義の露骨さに、
ちょっとがっかりします。
 心配していたように、内容は、甘く、囁くような、彼女の歌ばかりが続き、がっかりしてしまいました。

「S'Wonderful」
 1曲目から、妙に、囁くような歌い方が気になって、前途不安といった感じです。

「Love Letters」
 ナット・キング・コールぐらい、もっと豊な声量で、普通に歌ってもらいたいものです。

「Cry Me a River」
 所詮、ジュリー・ロンドンみたいな色気を求めても無理だと思います。彼女の声は、もっと野太いはずです。
本来の良さを殺して、作った声で、囁くような歌い方は、鼻につきます。

「Besame Mucho」 「The Night We Called it a Day」 「The Look of Love」
 
などは、女性と解っていても、チョッと気持ちが悪いほどのベタツキようです。

 「彼女の歌声は、ハスキーな中にも、滑らかさと、暖かさが同居する“シルクの声”」 と一般的には、
絶賛されているそうです。それに、これらのアルバムも、いろいろな賞を獲得しているらしいのです。
それはそれで結構な事だと思います。

 最近では、ノラ・ジョーンズが、アメリカで音楽賞を総ナメにしたとか…。
シンセサイザーの頭の痛くなるような曲や、ラップなどは、全くダメな私ですが、
彼女達が現代アメリカ音楽界の頂点にいるというのも、チョッと淋しい感じがします。


 デビューの頃の、力強い歌声や、スィング感に溢れたピアノ・プレイに、魅力を感じていただけに、とても残念です。
よって、このアルバムの、ほとんどが気に入らないという事になります。
 いずれにせよ、ジャズ・アーティストから遠ざかっていく限り、私にとっては、興味の対象外になります。
この程度のヴォーカルを聴くなら、40〜50年代のヴォーカリストの、数段魅力的なアルバムを聴いていたいものです。
 今のところ、彼女への関心は、「Only Trust Your Heart」  「All For You」 の2枚のアルバムだけということになります。


 
女優でいったら、ローレン・バコールや、ソフィア・ローレンを連想させる、どちらかといったら、大柄な印象の女性です。
(性格は、素直で、センチな女性かもしれませんが。) ちょっとタイプではないのです。
不純な動機ながら、もし、彼女が、好みのタイプだったら、あの猫なで声での、ラブ・バラッド等は、逆に、最高に
セクシーで、気に入っていたのかもしれません。が、何度聴いても、私にとっては、心に響く優しさとは、縁遠い感じです。

  

■ 「Orsay 2」


 チョッと話がそれますが、ライナー・ノートは、
アーティストの背景を知ることで、音楽の楽しみが広がり、
沢山のアルバムを聴くきっかけを作ってくれますが、
プレイ内容については読み流します。
良いか悪いかは、自分で判断したいものです。

 私の音楽体験から、一般的に、モダン・ジャズの批評には、押し付けがましいものが多いようです。
“聴き手を選ぶ音楽である。” とか、“この良さがわからないの?” 
みたいな発言は、妙なエリート意識を感じて、かないません。
 それと、カントリー・ミュージックなどを馬鹿にする輩もいるのです。淋しい心の持ち主と言わざるを得ません。

 私は、少なくともモダン・ジャズは、最も、直感的で、感覚的な音楽だと思って聴いていますし、
そもそも音楽の根っ子など、皆同じなのです。

 良いリズム・良いメロディ・良いハーモニーであれば、私にとっては十分ですし、
ジャズが面白くなくなってしまったのは、そこら辺に、欠陥があるからだと思っています。
 ミュージシャンにとっては、常に新しい音楽を追求することは、必要なのでしょうが、リスナーにとっては、
古い、新しいなどは、全く関係のない話で、良い音楽は、いつまでも人の心を打つ魅力を持っているものです。
…その時の気分によって、いろいろな音楽を楽しんいますが、モダン・ジャズも、そのうちの一つにすぎません。
 
 最近、関西の女性アーティストによる、ジャズやブルース風の演奏が人気になっているようです。
黒人のフィーリングをもった人なのかもしれませんし、気取らない姿勢が好まれているのかもしれません。
〜私はチョッと苦手です。
 私の好き嫌いに関係なく、熱中できる音楽があることは、心に安らぎや潤いをもたらす、
とても幸せなことだと常々感じていますから、温かく見守る度量だけは、持ち合わせているつもりです。



 エラ・フィッツジェラルド (NO.1・ジャズ・ヴォーカリスト)
  

■ 「Ella Fitzgerald」


若い頃から、女性では、最も沢山の曲を聴いてきた歌手が、
エラ・フィッツジェラルドだと思います。
ビッグ・バンドでの、エネルギッシュなものが多かったように思いますが、
シナトラと同じぐらい沢山、ラジオからも録音したものです。
彼女は、かなり息の長い活躍をしましたが、常に、ジャズの素晴らしさを表現し続け、
女性では、文句無く、実力ナンバー・ワンだと思います。
 但し、私の基準は、歌唱力だけではありませんから、最高のお気に入りというわけにはいきません。
基本的に、あまり“濃い”感じの歌手が、苦手ですから。たまにジャズの雰囲気に浸るには、良いのですが、
度重なると、チョッとしんどいのです。
 今では、50年代以降の円熟した歌より、若い頃の歌声のほうが、瑞々しく、素直で気に入っています。

△ 1956年: 「Sings The Cole Porter Song Book」 Vol.1&2 
 コール・ポーターの作品は、彼女の歌心と実力が十分発揮され、相性もぴったりという感じがします。

 「Night And Day」 「It's All Right With Me」 「Too Darn Hot」 「I Got A Kick Out Of You」 「Love For Sale」
 「I've Got You Under My Skin」 「Easy To Love」 「You Do Something To Me」 「So In Love」 「I Love Paris」
 「What Is This Thing Called Love」 「Just One Of Those Things」

 今では、すっかりスタンダード・ナンバーとしておなじみのこれらの曲を、スィンギーに、
また、しっとりと歌う彼女に欠点らしいものは見つかりません。
 曲としての素晴らしさに加えて、エラの歌には、しっかりした歌唱力に支えられたくつろぎ感があり、
大好きなシナトラのスィング感とは違った魅力がこのアルバムにはあります。

 Vol.1とVol.2合わせて32曲のほとんどが聴きなじみのあることからも、
いかにコール・ポーターが広く皆に愛されているか、想像がつくというものです。

 テレビのコマーシャルで、スポーツ・メーカーが 「Too Darn Hot」 をコマーシャル・ソングに使っています。
つまらないものが多い中で、なかなかシャレた選曲だな、と感心したのですが、
あまりにも中途半端で終わってしまうのが気に入らず、仕方なく、エラのCDを取り出して聴いてみました。
 しばらくぶりに聴く彼女の歌は、妙に新鮮で、本格的なジャズ・ヴォーカルを堪能した思いがしました。
コール・ポーターを聴いたので、今度はサラ・ヴォーンで、ガーシュインでも、と欲が出て、
結局2時間ほどじっくり聴く事になりました。
 頻繁では、しんどいけれど、たまに聴く彼女達の歌は、さすがに上手いものだ、と感動したものでした。
2人を比較すると、ストレートな表現、躍動感のあるエラの歌の方が好きです。

 
■ 「Ella Fitzgerald」

△ 1956年: 「Ella And Louis」
 
 「Isn't This A Lovely Day」 「Moonlight In Vermont」 
「They Can't Take That Away From Me」 「Tenderly」
 「A Foggy Day」 「Stars Fell On Alabama」 「Cheek To Cheek」 
「The Nearness Of You」 「April In Paris」
 オスカー・ピーターソン・トリオ+バディ・リッチを従えて、
大物歌手2人の共演です。
 おなじみの曲を、じっくり歌いあげている、といったアルバムです。
でも、私の好みから、スタンダード・ナンバーは、さらっと、上品に歌ったもののほうが好きです。
ルイ・アームストロングは、ヴォーカルでも最高、という評価が定着しています。私にとっては、独特のだみ声は、正直
聴き飽きたといったところで、むしろエラのヴォーカルが良いだけに、ルイにはトランペットに専念していて欲しい感じです。



△ 1957年: 「Ella Fitzgerald At The Opera House」

 
「It's All Right With Me」 「Bewitched」 「These Foolish Things」 「Ill Wind」 「Goody Goody」 「Them There Eyes」 
 オスカー・ピーターソン・トリオ+ジョー・ジョーンズで、バラッドを、しっとりと歌う彼女を、聴くことが出来ます。
オスカー・ピーターソンとエラは、ノーマン・グランツのお気に入りで、仕方が無いのですが、
ピーターソンがあまり好みではない私としては、イマイチです。
 ロスでのライブのほうは、例の、オール・スター・スタイルが、嫌いですから、あまり気に入ってはいません。

 J.A.T.Pの花形歌手として、日本でも広く知られています。エネルギッシュなライブでこそ、彼女の真価が発揮される、
というのが一般的な評価ですが、私は、あまり好きではありません。「ソング・ブック」 のほうに、彼女の魅力を感じます。


△ 1960年: 「Ella in Berlin」

その、J.A.T.P.ライブでは、最も評価の高いアルバムです。リアル・タイムで聴いた彼女は丁度この頃で、
この中の曲にはほとんど馴染みがあります。
「Gone With The Wind」 「Misty」 「The Lady Is A Tramp」 「The Man I Love」 「Summer Time」 「Too Darn Hot」
 「Mack The Knife」 「How High The Moon」
 

 何と言っても、このアルバムでは、「Mack The Knife」 「How High The Moon」 が抜きん出ていて、
私のエラのイメージと言ったら、いまだにこの2曲という有様です。
ルイ・アームストロングの物まね、もう1曲は、目まぐるしいほどスピード感のあるバップ・スキャットと、
色んな曲がアドリブで織り込まれていて、ライブならではの明るく楽しいナンバーです。…チョッと食傷気味ですが。

△ 「Ella Fitzgerald / The Best Of The Song Book : The Ballads」

 
「Oh, Lady Be Good!」 「I'm Old Fashoned」 「Laura」 「Day-Dream」 「Easy To Love」
 「It Was Written In The Stars」 「How Long Has This Been Going On?」 「Let's Begin」 「Now It Can Be Told 」
 「There's A Small Hotel」 「Do Nothing Till You Hear From Me」 「Ill Wind」 「You're Laughing At Me」
 「A Ship Without A Sail」 「Trav'lin' Light」 「This Time The Dream's On Me」 

 全曲、スロー・バラッドのコンピレーション・アルバムで、馴染みの無い曲などもあって興味深いところです。
アップ・テンポとスキャットを聞きなれた耳にはとても新鮮です。

 こんなしっとりとしたアルバムなら、夜のひとときを静かに楽しめます。
スローでもアップでも変わらない、彼女の歌唱力の高さには驚かされます。
  
■ 「Orsay 3」


 最近、彼女のベスト盤を、2枚購入しました。
バリエーションが楽しめて、聴きやすいアルバムです。

 「Ken Burns Jazz: The Definitive Ella Fitzgerald」


・ 
「A-Tisket,A-Tasket」
 1938年、チック・ウエッブ楽団時代の最初の大ヒット曲。
曲自体に、あまり魅力も無く、今聴いて、心に響くものはありません。

・ 
「Flying Home」
 このスキャットの原型は、嫌いなイリノイ・ジャケイの、ライオネル・ハンプトン時代の
アドリブにあるそうで、それだけで気に入りません。

・ 
「Nice Work If You Can Get It」
 エリス・ラーキンのピアノでのエラは、しっとりとした味で、好感が持てます。

・ 
「Smooth Sailing」
 エラのスキャット、オルガン、コーラスと変わった編成ですが、スィング感は十分です。

・ 
「Lullaby Of Birdland」
 サイ・オリバー楽団での録音ですが、ここで、チョッと顔を出す、テナー・サックス・プレイヤーが、
あのサム・テイラーです。彼が、ムード・テナーで、日本で大ブームを起こす前は、こんなところで活躍していたのです。

・ 
「Night And Day」
 1956年のコール・ポーター・ソング・ブックのものですが、やはり、私にとって、
彼女の最高のヴォーカルは、ここら辺にあります。

・ 
「Let's Call The Whole Thing Off」
 エラ&ルイ・アゲインのものですが、ルイのヴォーカルにチョッと引っかかるものがあります。

・ 
「Sophisticated Lady」
 デューク・エリントン物です。エラや、バーニー・ケッセルが、ムードたっぷりに聴かせてくれていて、
最高なのですが、ベン・ウエブスターが、擦り寄ってくるような、気味の悪いテナーで、台無しにしてくれます。

・ 
「Oh, Lady, Be Good」
 レスター・ヤングもいる、例のオペラ・ハウスのオール・スター・ライブで、嫌いです。

・ 
「Blue Skies」
 アービング・バーリン・ソング・ブックのものです。ポール・ウエストン楽団の品の良いバックで、
のびのびとスキャットを楽しんでいる感じで、素晴らしい出来栄えだと思います。

・ 
「Mack The Knife」 「How High The Moon」
 この2曲は、エラ・イン・ベルリンでのものです。ポール・スミス・カルテットですから、
彼女の歌唱力が、十分堪能できます。

・ 
「Blues In The Night」
 ハロルド・アーレン・ソング・ブックからの1曲です。ビリー・メイ楽団のダイナミックな編曲で、
のびのび歌うエラは、好調ですが、低音部では、ちょっと辛いかなと思わせます。
なお、ここでは、ベニー・カーターのアルト・サックスが聴けて、思わぬ喜びです。7分に及ぶ熱唱です。

・ 
「A Night In Tunisia」
 ディジー・ガレスピーとのツアー経験から、お手のものといった、バップ・ナンバーですが、
ルー・レヴィーのピアノを中心のカルテットで、メロディアスに歌っています。

・ 
「Shiny Stockings」
 1963年の、エラ&ベーシーでの曲です。
この頃のベーシー楽団には、ベーシーと、フレディ・グリーンぐらいしか馴染みのメンバーがいなくて、
淋しい限りです。
エラは、カルテットでも、オーケストラでも、十分な歌唱力で対応でき、やはり、超一流といわざるをえません。
 

■ 「Ray Brown」


 △ 「Ella Fitzgerald The Very Bset Of」 

・ 
「We Can't Go On This Way」
 1938年録音 あまり馴染みのない、ポップ曲ですが、
エラの歌は、スィンギーで、優しく、説得力があります。
10代とは思えない歌唱力に驚かされます。

・ 
「Stairway To The Stars」
 1939年録音 チック・ウエッブが亡くなって、2週間後の録音だそうですが、素直な中にも、
十分な情感が伝わってきて、バラッドでの彼女の表現力は、完璧です。
黒人独特のアクの強さも感じられない、素晴らしいナンバーです。

・ 
「Chwing Gum」 「Is There Somebody Else」 「It's A Blue World」 「Sing Song Swing」 「Starlit Hour」 「Sugar Blues」
 1940年録音 21才でチック・ウエッブ楽団のリーダーになりたての頃で、可愛らしい声のエラが、
一生懸命歌っていて好感が持てます。
 この若さで、歌唱力も完成されています。むしろ後年の彼女より、素直なフレージングで、聴きやすいといえます。

 「Starlit Hour」
 が、この中では、曲の良さと、優しい語り口が、魅力的で気に入っています。

・ 
「How High The Moon」
 1947年録音 その後結婚するレイ・ブラウンが、ベースを担当しています。
ビ・バップの香りのする、スキャットも好調です。エラというと、この歌が思い浮ぶほど、
独自でダイナミックな歌唱法が印象的ですが、ここでは初々しく、落ち着いた雰囲気の中、彼女の優れた歌唱力が、
よく伝わってきて、ライブでの彼女より、好感が持てます。
 
・ 
「Basin Street Blues」
 1949年録音 歌の後半で、サッチモのまねをしていますが、彼の持ち歌を、妙に似た声・フレージングで、
見事にこなしていて、単なるお遊びを超えた、彼女の才能に驚かされます。

・ 
「There's A Small Hotel」
 1949年録音 旦那の、レイ・ブラウン・トリオをバックに、しっとり歌っています。
超スロー・バラッドですが、豊な声量、たっぷりの情感、申し分の無い出来栄えだと思います。
このレイ・ブラウンが、ダイアナ・クラークと、共演するのですから、驚異的なロング・プレイヤーといえます。

・ 
「Lover Come Back To Me」 「That Old Black Magic」
 1955年録音 ベニー・カーター楽団での彼女は、堂々として、スィンギーなノリの良さを発揮しています。
バラッドでの説得力といい、女性ヴォーカリストとして、ワン・アンド・オンリーの存在である事を証明しています。
  
 
50年代以降の彼女の歌に慣れていましたから、初期の頃のエラの声は、新鮮で、とても魅力的です。
初々しいけれど、歌唱力・声量も十分で、若くして、ジャズの世界で名を成したことが、理解できます。
 ルックスで、評価する傾向のある私ですが、上手いものは上手い、と正当な評価はしています。

 ビリー・ホリディのような、特別な想い入れが無いので、お気に入りの歌手、というわけではありません。
〜 ビリーとレスターには、私の青春が重なっているのです 〜。


 リー・ワイリー (郷愁を感じるジャズ・シンガー)
  
■ 「Lee Wiley」

 
私の好みからすると、チョッと変わったタイプの女性歌手です。
スィング感が素晴らしいわけではなく、清潔感を感じるわけではなく、
むしろその逆で、しっとりとした語り口に潜む独特なバイブレーションが、
円熟した女性の魅力を感じさせる、不思議な歌手です。

 エディ・コンドンが好きで、ボビー・ハケットが良くて、
彼女を気に入ったのですが、シカゴ・スタイルからスィング・ジャズまで
表現するメンバーの中で、“大人の女性の魅力” に触れることが出来ます。

▽ 「Lee Wiley Songbook & Quiet Sensuality 1933-1951」
 随分長い間現役で歌っていたんだなあ、とライナーを読んで感じました。
歌っている姿に接したこともありませんしラジオで聴いた憶えもありませんが、彼女は1908年に生まれて、
1972年まで活躍したようです。

 ここには、31年の最初のレコーディング曲:
「Time On My Hands」 はありませんが、
アルバムの主な共演者だけを見ても、若いころから既に彼女の独特の雰囲気のある歌唱力が、
一流ミュージシャンにも高く評価されていたことを窺い知ることができます。

「You've Got Me Crying Again」:33 /tp:Bunny Berigan tb:Tommy Dorsey cl:Jimmy Dorsey 他。
「I've Got You Under My Skin」:37 /Victor Young Orch.
「My One And Only」:39/ tp:Max Kaminsky ts:Bud Freeman p:Joe Bushkin 他。
「Someone To Watch Over Me」:39 /pipeorgan:Fats Waller
「How Long Has This Been Goin On」:39 /tp:Max Kaminsky ts:Bud Freeman cl:Pee Wee Russell p:Fats Waller
 g:Eddie Condon b:Artie Shapiro dms:George Wettling
「I've Get Five Dollers」 「You Took Advantage Of Me」 「Glad To Be Unhappy」:40/
  tp:Max Kaminsky ts:Bud Freeman p:Joe Bushukin 他。
「Let's Do It」:40 /tp:Bunny Berrigan b:Sid Weiss dms:George Wettling
「Easy To Love」:40/ cl:Johnny Mince alt:Hymie Schertzer,Fred Stulce ts:Paul Mason他。
「Sugar」:40 /cor:Muggsy Spanier p:Jess Stacy
「Down With Love」:43 /tp:Billy Butterfield p:Dave Bowman g:Eddie Condon b:Bob Haggart dms:George Wettling
「Let's Fall In Love」:43/ cor:Bobby Hackett tb:Lou Mcgarity bs:Ernie Caceres p:Dave Bowman g:Eddie Condon
「Woman Alone With Blues」:47/ p:Jess Stacy and his orch.
 他に7曲ありますが、他のアルバムとダブっているので省略します。
彼女は、エセル・ウォーターの影響を受けたようですが、このアルバムを聴いて、30年代初めには既に彼女の歌唱法も
完成されていて、後年のものと少しも変わらないしっとりした歌声が聴けることに驚かされます。
 
■ 「Lee Wiley with Paul Whiteman : 1934」


▽ 「Lee Wiley sings with Eddie Condon All-Stars 1944 & 45」 
 エディ・コンドンがタウン・ホール・コンサートで行ったライブでの、
リー・ワイリーの歌をフィーチャーした、コンピレーション・アルバムです。
 私が彼女の存在を知ったのは、エディ・コンドンとの関連で、学生時代のことです。
でも、このアルバムを聴いて、当時の彼のバンドの性格や、
彼女の存在が、ようやく理解できた気がしています。
郷愁を誘う歌い方は、ディキシーというトラディショナルなジャンルにフィットし、恐らく彼女は、
ステージの華として重要な存在だったのでしょう。

「You're Lucky To Me」
 司会者が、「ドクター、エディ・コンドン!」 と呼びかけ、彼の曲紹介から、リー・ワイリーが歌い始めます。
バンドも歌もスィンギーで心地よいのですが、ピー・ウィー・ラッセルのクラリネットが妙に力んで、
うるさい感じなのが残念です。

「Someone To Watch Over Me」
 一転してガーシュインのラブ・バラッドです。
曲も大好きですし、彼女のしっとりとした歌い方も魅力一杯です。

「On The Sunny Side Of The Street」
 声の質がチョッと違って聴こえますが、録音状態の違いなのでしょうか。
ピー・ウィー・ラッセルのクラリネットは、こちらの方がハスキーな音色で魅力があります。
シナトラや、エラと比べて同じ歌だとは思えない落ち着きようです。

「Old Folks」
 囁くようなハスキー・ヴォイスに、旦那のジェス・ステイシーが、シングル・トーンで優しく応えています。
ノスタルジックな曲、歌い方、これが彼女の持ち味なのでしょう。
ハスキーですが、嫌味の無い清々しさを感じます。

「Sugar」
 彼女の生の声の後、心地よいリズムに乗って、明るく軽快な歌が聴けます。
スィンギーで魅力的なナンバーです。

「Wherever There's Love」
 ゆったりしたテンポと、一言一言確かめるような歌いぶりに、
ジャック・ティ・ガーデンのトロンボーンがよく似合っています。

「Down With Love」
 コンドンのメンバー紹介の後、ビリー・バター・フィールドのミュート・トランペットとリー・ワイリーの
軽快な掛け合いが聴けます。彼女の明るい一面がのぞけて一段と魅力的です。

「How Long Has This Been Going On」
 囁くようなゆったりした彼女の特徴が良くでています。
スローな中にもやや明るい雰囲気が感じられて好感が持てます。
エディ・コンドンのシャレた司会ぶりに、コンドン一家のくつろぎが感じられます。グッドマン楽団で、
ペギー・リーも歌っていましたが、無理して情感を込めている感じで、とてもリー・ワイリーにはかないません。

「A Ghost Of A Chance」
 出だしでチョッと声がかすれてしまうのですが、ライブの良いところでもあります。
レスター・ヤングのプレイと比べてはいけませんが、この曲はやはり、彼のものでしょう。

「Any Old Time」
 トミー・ドーシーの紹介があり、リー・ワイリーがややけだるげに歌います。
続いてトロンボーンの甘いソロが曲の雰囲気を盛り上げます。トミー・ドーシーの生の声が聴ける嬉しいナンバーです。

「The Man I Love」
 私の好きな曲で、ここではチョッとスィンギーに歌っていますが、、ヘレン・フォレストとはしっとり感が違います。

「Why Shouldn't I ?」
 コール・ポーターの曲で、クリス・コナーなどと比べると、大人の女性を感じる見事な歌唱力なのですが、
レコード針の音がチリチリと聴こえて、ジョー・ブシュキンとのデュオもかすれがちです。
 録音されて60年近く経っている事や、太平洋戦争の終りの頃、アメリカではこんな事をやっていたのだと、
雑音のおかげで考えさせらるナンバーです。

 ※このアルバムではないのですが…。
「The Man I Love」 「Someone To Watch Over Me」
 この2曲は、1944年12月:エディ・コンドンのデッカ・セッションに素晴らしいプレイがあります。
どちらもボビー・ハケットの繊細で柔らかなトランペットのアドリブが、リー・ワイリーをサポートし、
くつろぎに満ちた最高の演奏を聴かせてくれます。
 また「Wherever There's Love」 では、
ジャック・ティーガーデンのトロンボーンのサポートで、最高のヴォーカルを聴かせてくれます。
 
■ 「My Banjo

 ※大学4年の時、来日したエディ・コンドン・オールスターズの
ライブを日比谷公会堂で観ました。
エディ・コンドンのテナー・バンジョー姿を見たかったのですが、
弾いていたのがギターだったことに落胆した憶えがあります。高校時代、我が家にあったレコードでは、
確かバンジョーだったはずで、それに憧れて、田舎の楽器店に一台だけあった
4弦バンジョーを買った私でしたから、相当ガッカリしたものでした。

 最近、ようやくコンドンのバンジョー演奏が聴けるCDを入手しました。
そして、彼が30年代後半には、既にギターに変えてしまっていたことを知りました。

 
 
▽ 「Lee Wiley Night In Manhattan」 : 1950/1951

「Manhattan」
 この曲が最高で、リー・ワイリーといえばこの曲、という事になっています。
私は、ジョージ・オールドのアルバムでこの曲を聴いてそれ以降、イメージが定着していましたから、
歌詞を見て、こんな軽快な歌だったのかと驚きました。昔聴いた時は、女性コーラスのヴァースに続いて、
ジョージ・オールドのテナーが、ゆったりとしたテンポでメロディを吹いていて、もっと幻想的で、
ロマンチックな香りがしたのですが…。

 レコーディングは、こちらの方が早かったのでしょうが、同じ曲でも解釈が違うと、こんなにも雰囲気が変わるのか、
とビックリします。彼女の歌と、ボビー・ハケットのトランペットが、ピッタリで、こちらもなかなかの出来栄えだと思います。
が、私のベストは、ジョージ・オールドのものです。なんと言ってもあちらは、私の想い出付きですから、仕方ありません。

「I've Got A Crush On You」
 この曲のベスト・ヴォーカルで、私にとっては、このアルバムのベスト・ナンバーです。
スロー・バラッドをセンチメンタルに、ノスタルジックに歌っていて、恐らく、彼女の最も魅力的なところが出ている
ナンバーだと思います。ヴァースからテーマに移るところなど、リー・ワイリーの歌に絡むように、
トランペットが粋な感じで始まり、上質なジャズを予感させます。

 この曲でのボビー・ハケットのトランペットは、私が聴いた全てのトランペッターの中で最高の音色です。
優しく、甘く、郷愁を誘う…、何ともやるせない感じが、リー・ワイリーの円熟した語り口とからみあって、
素晴らしい出来栄えとしか言いようがありません。シナトラも歌っていますが、
やはり、このしっとり感にはかないません。

「A Ghost Of A Chance」
 これも悪くありません。ここでもスローに、夢見ごこちに歌うリー・ワイリーにトランペットが、
情感をこめてサポートしています。トランペットはオープンで吹いているのですが、冷たい感じはせず、
ビリーとレスターのような絶妙なコンビネーションです。

「Oh Look At Me Now」
 ヘレン・フォレストがベニー・グッドマン楽団をバックに歌ったものと、同じ歌とは思えない、大人の歌が楽しめます。
(もっとも歌詞も随分違いますが)。
ヘレン・フォレストは、若さと可愛らしさに溢れていて、弾むような歌い方でしたが、
ここは、ゆったりしたテンポで、まるで、恋人と、ダンスをしているような心地よさがあります。
ここでも、ミュート・トランペットがノスタルジックな響きで、絶妙な味を出しています。

「How Deep Is The Ocean」 「Time On My Hands」 「More Than You Know」
 「Soft Light And Sweet And Sweet Music」
 こういった仰々しい歌い方は本来好きではないのですが、押し付けがましいところが無く、
一言一言確かめながら歌っている感じは嫌味がありません。
 格調高いピアノ演奏、目一杯情感を込めた歌い方は、軽快さに欠けるのですが、当時彼女の、
こうした歌い方が人気を集めたのでしょう。私もこんなバラッドが楽しめる年令になったことを実感させられるナンバーです。
この4曲は、ジョー・ブシュキンではなく、スタン・フリーマンとサイ・ウォルターのピアノがバックをつとめている、
ボーナス・トラックです。

「Street Of Dreams」 「A Woman's Intuition」 「Sugar」
 最初の4曲とは調子が違いますが、オーケストラと、何よりミュート・トランペットが、
粋な甘さをかもし出していて、しっとりした大人の世界を表現しています。

「Any Time Any Day,Anywhere」
 心地よいスウィング・ナンバーです。ボビー・ハケットが、スィングでもラブ・バラッドでも、
そしてディキシーでもこなす一流のアーティトである事を、ここでも証明しています。
 この曲は、あのヴィクター・ヤングとリー・ワイリーとの共作ということで、
当時の彼女の人気と影響力が垣間見えます。
当然リー・ワイリーも気持ちよくスィングしています。


 このCDアルバムは気に入っていて、夜のひととき欠かせないものとなっています。
レコードでの8曲以外に、他のアルバムのものも混じっています。
 女性ヴォーカリストの情感たっぷりの歌い方は、本来嫌いな私ですが、素直に歌っている
リー・ワイリーに好感が持てます。しっとりとしたハスキー・ヴォイスも大きな魅力になっています。
でも、何と言っても、ボビー・ハケットとのコラボレーションが、このアルバムの最大の魅力です。

 サッチモとベッシー・スミス、クリフォード・ブラウンとヘレン・メリル以上のナイスな組み合わせで、
むしろ、レスターとビリーに近い感覚です。トランペットが、優しく、甘く、暖かく感じた貴重なアルバムです。
 
■ 「Lee Wiley」


 
▽ 「Lee Wiley / Collector's Choice Music」 

 このアルバムは、「Night In Manhattan」 
「Sings Vincent Youmans」 「Sings Irving Berlin」
 という51年・52年発売のコロンビア・レコード3枚をまとめた、お徳用CDです。
 当然この中では、「Night In Manhattan」 が出色で、わざわざダブって買う必要性もなかったのですが、
24曲通しで彼女の歌を聴ける魅力は捨てがたいものがあります。

「Tea For Two」
この曲のヴァースを初めて聴きました。
彼女らしい落ち着いた語り口は、ドリス・デイなどの歌で軽快な印象を抱いていた、
この曲のイメージとは随分違った解釈で、チョッととまどいます。

「Sometimes I'm Happy」
 
これもお馴染みのスタンダード・ナンバーです。やや力強い歌声で、スィンギーに歌っていますが、
やや重めの印象が残ります。

「Time On My Hands」 「More Than You Know」
 
のようなしっとりした曲の方が、ピアノとの相性もよく、安心して聴いていられます
 

「Some Sunny Day」
「Heat Wave」 「Soft Lights And Sweet Music」 「How Many Times」
 
ピアノも弾んで、スィンギーな曲を独特のハスキー・ヴォイスで軽快に歌っていますが、
アービング・バーリンの曲といえば私にとっては、ビング・クロスビーの 「White Christmas」 
ハンク・モブリーの
 「Remember」 が印象的なくらいで、
他にはあまり好きな曲が見当たらないのが残念なところです。

 正直、ピアノだけの曲は私にとっては退屈です。
でも夜のひととき、何かをしながら流しておくにはピッタリのアルバムといえます。

 彼女の歌は、アメリカの、特に白人男性が求めるジャズに最も近いのかもしれません。
〜グラス越しにステージを見上げると、美人の歌手が優しい眼差しで語りかけてくれる〜。
郷愁と安らぎを感じさせる、彼女の独特な叙情的な歌心と雰囲気は、テクニックを超えて、
聴く人の心をつかんだのだろうと想像できます。

 

※ 様々な、ジャンルの音楽を楽しんできた私ですが、女性ヴォーカルの分野には、まだまだ聴きたいものがあります。
ドリス・デイ、ダイナ・ショア、それに、
「Side By Side」 等で知った、チョッと癖のある声のケイ・スター、…。
白人スィング・バンドで活躍した女性歌手は、小さい頃聴いたまま、今でも私の心の奥に生きています。
 ジョー・スタッフォードを筆頭に、この頃の歌手の歌う、ジャジーな雰囲気をもつ、小洒落たスタンダード・ナンバーは、
時代を超えて、心和ましてくれるのです。
 
■ 「Julie London」

・ジュリー・ロンドンについては、「Julie Is Her Name 1.2」
というお徳用CDだけで十分満足しています。
囁くような彼女の歌とギターのデュオは、大人の夜のムードに満ちていて、
静かな真夜中に流れてくる音楽としては最高です。
25曲全てが、聴きなれたスタンダード・ナンバーで申し分ありません。
 
中でも 「Cry Me A River」 だけは、特別な歌だけに、必ずくり返して聴く事にしています。
  
パティ・ペイジは、「テネシー・ワルツ」 「涙のワルツ」 「モッキンバード・ヒル」 「レット・ミー・ゴー・ラヴァー」
 
等のヒット・ナンバーで子供時代からなじみが深いのですが、これらはその後、
私のカントリー・ソングの持ち歌になったものです。

 「ワン・ワン・ワルツ」 「チェンジング・パートナーズ」
 等も大ヒットして、ワルツの女王として記憶に定着しているので、
スタンダード・ナンバーを今更という気持ちもありますが、ドリス・ディも含めて、そのうちにCDを買う事になりそうです。


 黒人ヴォーカリストについては、エラ、サラ・ヴォーン、ダイナ・ワシントン、カーメン・マクレイ、ナンシー・ウイルソン、
等など沢山の歌を聴いてきましたが、どうしても構えてしまうところがあって、
気軽に聴くにはチョッと脂っこいといったところです。
 現在は、何枚かの、女性シンガーを特集したオムニバスCDの中で、彼女達の歌を聴く程度です。

※ フランク・シナトラ以外、男性ヴォーカリストで是非聴きたい、というアーティストがいないのが、不思議です。
他では、せいぜいナット・キング・コールとトニー・ベネットぐらいかもしれません。
もっとも、プラターズ、ジョニー・マティス、プレスリー、パット・ブーンなどのポップ・ナンバーは、
無性に聴きたいときがあって、その都度楽しんでいます。  


 
女性ヴォーカリスト・ベスト5

 5人に限定すること自体に無理はありますが、現在思いつくヴォーカリストと、
お気に入りの曲を列挙すると次のようになります。
 なおドリス・デイについては、勝手に肉親のような感覚を抱いているので、リストからは除外しています。

  
■ 「My Favorite Female Singers」

Lee Wiley :    「I've Got A Crush On You」 「The Man I Love」 「Someone To Watch Over Me」 
 ボビー・ハケットとのデュオは、音楽に不可欠な、最高の“くつろぎ”と“安らぎ”を与えてくれます。


Jo Stafford :   「I'll Will Be Seeing You」 「Autumn In New York」 「Love For Sale」 「I Should Care」 
 あらゆるジャンルの歌をこなしてしまう器用さと、オーソドックスな歌唱力を併せ持ち、
子供の頃からの一番のお気に入りです。

Helen Horrest : 「The Man I Love」 「Perfidia」 「Oh Look At Me Now」
 ベニー・グッドマン・オーケストラをバックに歌う、若々しいヘレンの声は、“可愛い”としか言いようがありません。

June Crristy :  「Softly As In A Morning Sunrise」 「June's Blues」 「Midnight Sun」 
 優しくハスキーな彼女の歌声に、心洗われるような清々しさを感じます。

Billie Holiday :
  「I'll Never Be The Same」 「Foolin' Myself」 「The Man I Love」 
 レスター・ヤングとの共演は、優れた音楽性だけでなく、個人的な想い出がオーバー・ラップして、
特別な存在になっています。


・曲目は別にして、私の過去の想い出に繋がっている歌手ばかりですから、恐らく、
今後ともこの5人に関しては、変わらないお気に入りだと思います。それ以外にも

Julie London :  「Cry Me A River」
Anita O'day :   「I'll See You In My Dreams」
Chris Connor :  「Lullaby Of Birdland」
Peggy Lee :    「Black Coffee」

 まだまだ、沢山の想い出のヴォーカリストや、曲名が浮かんできますが、最近はジャズやポップスに限らず、
カントリー・ソングなどでも、女性ヴォーカルを好んで聴くようになっているのは、なぜだろうなどと自問しています。
今後CDが増えそうなジャンルですが、現在活躍しているヴォーカリストは、予定に入っていません。
 
■ 「Orsay 4」

※ コンドン一家とリー・ワイリーとの共演で楽しめる、
ガーシュインの 「The Man I Love」 は、
ヘレン・フォレストとベニー・グッドマン楽団、ベニー・グッドマン・カルテット、
レスター・ヤングとビリー・ホリディ、レスター・ヤングとナット・キング・コール、
ワーデル・グレイのソロ、等の他にも沢山の素晴らしい演奏があり、
いつか、好みの曲特集という、オリジナルな編集をしようか考えています。

 他にも 
「Autmn In New York」 「Star Dust」 「Darn That Dream」 「Willow Weep For Me」 「Don't Explain」
 「Stella By Starlight」 「How High The Moon」 「Softly As In A Morning Sunrise」 「Smoke Get In Your Eyes」
 「Night And Day」 「Come Rain Or Come Shine」 「Love Me Or Leave Me」 「I Can't Get Started」
 「I Got Rhythm」 「I Should Care」 「All Of Me」 「All The Things You Are」 「Misty」

好きなスタンダード・ナンバーを歌い、演奏する、好きなアーティストが沢山いて、
まとめるのも容易ではありませんが、楽しみでもあります。
 

 …続き…
 
☆ 懐かしい歌手、気になっていた歌手のCDも、最近では随分揃ってきました。
そして、この分野のものはまだまだ増えそうな予感があります。
 
■ 「Doris Day 」


ドリス・デイは、50年代の映画のせいで、
なぜか姉とか母親というイメージがあって素直に楽しめなかったのですが、
このところ手に入れたCDを繰り返して聴いているうちに、
ようやくまともな感覚で聴けるようになってきたようです。
特にライナーを読んで、彼女が何度も離婚している事を知って、
抱いていた神聖なイメージが崩れたことで、かえって身近で魅力的な女性に思えるようになったのが大きな収穫です。

 ▽「Sentimental Journey」 ▽「Que Sera Sera」 ▽「Somebody Loves Me」 ▽「Star Box」
 ▽「Duet/Doris Day & Andre Previn」
と思いつくまま買ったCDがありますが、
プレヴィンのピアノ・トリオで歌う彼女のスロー・バラードなど、当時聴いた事がありませんでしたが、
とても愛らしい魅力に溢れています。
 また ▽「Golden Girl」 という2枚組みのアルバムは、懐かしい映画主題歌が満載の申し分ない編集です。
私の知らない映画主題歌も沢山あって、彼女が全盛期のアメリカ・ミュージカル映画を代表する、
歌手兼女優だったことがよく解ります。
 リアル・タイム以前の映画では、必ずしも可愛らしい役柄や良妻賢母役を演じていなかった事も解り、
それも彼女へのイメージが変わった大きな理由かもしれません。

 肉親のような感覚で歌を聴いていても少しもワクワクしませんから、このイメージの変化は、とても嬉しいものがあります。
何と言っても、私にとっては1番身近でチャーミングな、歌の上手な女優さんでしたから…。
 
■ 「 Peggy Lee」


ペギー・リーは、
「ジャニー・ギター」 「オータム・イン・ローマ」 
が子供の頃のヒット曲ですが、ドリス・デイのように顔を見ていなかったので、
変な感情がわかなかったのでしょう、
懐かしいわりには個人的な思い込みが少ないようです。

 成人してから知った、ベニー・グッドマン時代の若さに似合わずふてくされて歌っている感じが大好きですが、
成熟した女性を感じるものも魅力があります。 
▽「Dream Street」 はなかなかシャレた感じのアルバムですが、▽「Sea Shells」 は情感たっぷりの
超スロー・バラードばかりで、私のイメージするペギー・リーとは違います。
 時にスィンギーに、時にさりげなく歌う独特の都会的な雰囲気が魅力ですから、あまり深刻に歌われるととまどいます。

▽「Golden Earrings」 という3枚組みのアルバムは値段の魅力で買ったのですが、
選曲がごった煮のわりには良い曲が沢山入っていて得をした気分です。でも 
「Black Coffee」 が彼女のイメージにピッタリで、洗練された大人のジャズを感じるアルバムとして、
やはり一番のお気に入りかもしれません。
 
■ 「Rosemary Clooney」


 ローズマリー・クルーニーは、子供の頃聴いた
 
「家へおいでよ」 「マンボ・イタリアーノ」
 以外にも、
ベニー・グッドマンやハリー・ジェイムスとの共演がテープには残っているのですが、
まだCDを手にしていません。今のところ ▽「Clap Hand! Here Comes Rosie!」 
▽「A Touch Of Tabasco」
 というアルバムはあるのですが。

 彼女の情感溢れる歌声は、子供の頃あまり好みではなかったものの、ペレス・プラドとマンボの共演をしている
 「A Touch Of Tabasco」 などは懐かしさと共に、ノリの良さ・歌の上手さを再認識させられるアルバムです。
特に 
「マジック・イズ・ザ・ムーンライト」 「キエンセラ」 「マック・ザ・ナイフ」 など、
何でもマンボにしてしまうプラドのアレンジも素晴らしいのですが、彼女の力強い情熱的な歌声と、
ダイナミックな演奏がマッチしていて聴き応えがあります。 
 
■ 「Patti Page」


 「Best Of Patti Page 」 
 パティ・ペイジ
のCDは、1枚だけを買いました。
「Tennessee Waltz」 「Changing Partners」 「You Belong To Me」 
「Release Me」 「Mack The Knife」 「Would I Love You」 「Autumn Leaves」 
「Route 66」 「Memories Of You」 「The Doggie In The Window」
 「It's A Sin To Tell A lie」 「Lover Come Back To me」 「I Went To Your Wedding」 「Tenderly」
 「South Of The Border」 「Mockin' Bird Hill」 「The Sound Of Misic」 「Let Me Go Lover」 「Till We Meet Again」

 オリジナルを含めて、全て聴きなじんだスタンダード・ナンバーばかり…。
彼女の優しい歌声は、いつ聴いても心が安らぎます。
 

■ 「Mildred Bailey」


 「A Portrait Of Mildred Bailey 1934-1940/ Mildred Bailey」
 ミルドレッド・ベイリーは最初の白人女性ジャズ・シンガー、
最初のバンド・シンガーとして有名であり、ビング・クロスビーを世話したこと、
またビリー・ホリディとの確執があった人気歌手ということを聞いていたので、
興味半分で買ったアルバムですが、大いに気に入っています。
 ベニー・グッドマンのところで歌ったのも、なかなかのものでした〜。

 デリケートで甘い歌声、そして独特のイントネーションには魅力がありますし、サイドメンも、
旦那だったレッド・ノーヴォ、テディ・ウイルソン、コールマン・ホーキンス、チュー・ベリー、バニー・べりガンなど
一流どころばかりですから、ゆったりしたスィング感を安心して楽しめます。
 
「Someday Sweetheart」 「Squeeze Me」 「Downhearted Blues」 「Lover Come Back To Me」
 「My Melancholy Baby」 「Lonesome Road」 「A Ghost Of A Chance」 「Fools Rush In」

 とお馴染みの曲ばかりですが、特に彼女の代名詞にもなった 
「Rockin' Chair」 、 「Thanks For The Memory」
 「I Let A Song Go Out Of My Heart」 
 などはくつろぎに満ちていて心安らぎます。

 チョッと小太りだからといって…良いものは良い、というくらいの度量は持ち合わせています…?!。
 

■ 「Lena Hone」


▽ 「Lena Horne The Young Star」
 リナ・ホーン…ラスヴェガスの女王”という形容を聞いていたので、
チョッと手が出なかったのですが、このアルバムを聴く限り派手な感じがしないどころか、
抑揚の効いたしっとりとした歌い口がとても魅力です。
 「Stormy Weather」 「What Is Thing Called Love」 「Ill Wind」 「The Man I Love」 
「Where Or When」 「I Gotta Riight To Sing The Blues」 「Mad About The Boy」 「Moanin' Low」

 
ここまでが41年の録音ですが、これが聴きなじんだあの曲か、なんて驚かされる独特の解釈もあって、
むしろ新鮮な感じがします。

 「As Long As I Live」 「I Ain't Got Nothin' But The Blues」 「I Didn't Know About You」 「One For My Baby」
 「Suddenly It's Spring」 「Do Nothin' You Hear From Me」 「I'll Be Around」 
44年の録音で、豪華なオーケストラやコーラスに合わせるように、彼女の歌い方もグッとムードを増し、
また原曲に忠実に歌っているようです。


 彼女の時代、混血ゆえの苦労もあったのでしょうが、ジャケットで見る彼女の顔は美人で、
何かと得した気分にさせてくれるアルバムです。
 
■ 「Dinah Shore」

▽ 「The Best Of Dinah Shore」
 ゴルフ経験のある者ならお馴染、“ダイナ・ショア・オープン”は
全米女子4大メジャー競技の1つですし、それも彼女が女性ゴルフ協会を
創設したのですから当然のことでしょう。
優勝者が彼女からトロフィーを受け取るシーンは
未だに憶えていますが、50年代には彼女の優しい声だけしか知らなかったものです。

「Quiereme Mucho」 「Blues In The Night」 「Skylark」 「You'd Be So Nice To Come Home To」 「I'll Walk Alone」
 「Candy」 
「It's All In The Game」 「Blue Canary」 「Eternally」 「Whatever Lola Wants」 「Love And Mrriage」
 「I Concentrate On You」 「Nice Work If You Can Get It」 「Under A Blanket Of Blue」 「What's New」
 「I Could Have Danced All Night」 「Fascination」 「Till」 

 歌の想い出となると、 「ボタンとリボン」 「青いカナリア」 くらいしかありませんが、
彼女は、自分のテレビ・ショウを長い間もっていたことでも広く知られています。

 このアルバムでは、39年ザビア・クガート楽団に在籍していた時の
「Quireme Mucho」  から58年の
 
「What's New」 まで、ヒット・ナンバーの数々が網羅されていますが、実際の彼女が優しく上品であったように
歌声にも気品が溢れていて、憂いを秘めてかすかに震える歌声も魅力的です。

 アルバムの曲に私自身はあまり記憶が無いのですが、いつかどこかで聴いたような懐かしさがあります。
この容姿ですから、ドリス・デイのようにスクリーンで活躍していたら、もっともっと身近な存在になっていたのにと思うと
チョッと残念な気がします。
 
■ 「Orsay 5」

 他にも、ジャンルを超えて、いろいろ衝動買いしたのですが、
いまだに一度も聴いていないCDもあるというていたらく…。
すっかり消費文明に慣らされてしまったようで、反省しています。
聴くことより集めることが主眼になったらお終いです。

  

  
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