〜ジャズ・ピアニスト〜  

   
 
日本人は、ピアノ・トリオを好むそうです。
確かに、私も嫌いではありません。
しかし、確かなテクニック、美しいメロディ、しっとりとした雰囲気だけでは、
どうしても退屈します。
スィング感、チョッとファンキーな雰囲気が、欲しいところです。
ホレス・シルバーが、最初に好きになったピアニストですから、仕方ありません。

 初期のジャズを除いて、沢山のピアノ演奏を聴いてきましたが、結果的には、
ブルース・フィーリングが根底にある、黒人のアーティストに、好みが限られてしまうようです。
 超人的なテクニックをもった、オスカー・ピーターソンが苦手ということから判断しても、
私の好みは、偏ったものかもしれません。理屈ではないので、これは、どうしようもありません。

 このページでは、ナット・キング・コール、バド・パウエルセロニアス・モンクウイントン・ケリー
ソニー・クラークレッド・ガーランドボビー・ティモンズ他を、とりあげてみました。


 ナット・キング・コール (歌もピアノも、超一流のアーティスト)
  

■ 「Nat King Cole」


 
ナット・キング・コールは、50年代ソロ・シンガーとして活躍し、
子供の頃は、その想い出しかないのですが、
成人して、ピアニストとしての、彼の魅力に接し、
もっと、トリオで活躍していてもらいたかったものだと、
残念な気がします。



 ▽ 「In The Beginning」 
 1940/1941年・Nat King Cole(p,vo) oscar Moor(g,vo) Wesley Prince(b,vo)

「Honeysuckle Rose」
 ナット・キング・コールは、ピアノ・トリオを結成した、最初のアーティストとか言われていますが、
ここでは、ベース・ソロも織り込んで、ジャズ・フィーリングたっぷりの演奏です。
 当時としては、画期的な演奏だったのではないでしょうか。

「Sweet Lorraine」
 56年のアルバムにこの曲の、ベストがありますが、ここでは、ねちっこい歌い方ですが、
ムードたっぷりの弾き語りを楽しめます。

「That Ain't Right」
 スロー・ブルースの魅力ある曲です。まだ若いコールの歌声ですが、情感がこもっていいて、
好感が持てます。レイ・チャールズなどとは違って、ちょっと上品に仕上がっています。

「This Side Up」
 オスカー・ムーアのギター・ソロが際立っている曲で、
チャーリー・クリスチャンとは、また違った音色が魅力です。スィンギーで、ジャズを感じます。 

「This Will Make You Laugh」
 後によく聴かれるようになる、スローなラブ・バラッドです。
50年代より、洗練されていない歌ですが、ピアノ弾き語りでの、ラブ・ソングは、ムード一杯です。

「Early Morning Blues」
 チョッと、ホレス・シルバーを感じさせる、フレージングで始まる、スィンギーなブルースです。
キング・コールは、特徴のあるリフを多用しています。

「Hit The Ramp」
 ギターとピアノのミックスした音色が、特徴のトリオですが、オスカー・ムーアのピアノは、
当時、モダンなフレージングと音色で、相当人気があったのではないかと思わせます。
 このアルバムでは、数少ない歌無しですが、やはり、このほうが落ち着きます。

「I Like To Riff」 「Call The Police」 「Gone With The Draft」 「Babs」 「Are You Fer It ?」
 「Scotchn' With The Soda」 「Stop, The Red Light's On」

3人が歌っています。最初は、この程度のヴォーカルだったものが、そのうちに、
キング・コールの歌が良かった為、ついには、ソロ・シンガーとして独立していったのでしょう。
 特別、3人のヴォーカルが好きなわけではないので、これらのナンバーを特に好きではありません。
「Hit That Jive Jack」
 この曲は、ダイアナ・クロールのアルバムのほうが、洗練されていて、出来が良いとおもいます。

 
トリオというものの、3人のヴォーカルが多く、特別気に入ったアルバムというわけにはいきません。
ナット・キング・コールのヴォーカルも、後年のような豊かな声量ではなく、
ギスギスした感じで、完成されていません。ただ、40年にこれらの曲を聴いた人たちにとっては、
かなり斬新で、魅力的に聴こえたのだろうと想像します。

  

■ 「Canada 1」


  「Lester Young Trio -
with Nat King Cole and Buddy Rich」 
1946年

 レスター・ヤングとの共演で、二人の豊かな音楽センスによる、
くつろぎに満ちた、名演奏が楽しめるアルバムです。
大のお気に入りアルバムとして手放せません。

「Back to the Land」 「I Cover the Waterfront」 「The Man I Love」 「Pego' My Heart」 
「Mean to Me」
 など、スローな曲は、レスター・ヤングの見事なフレージングによる、
素晴らしさだけではなく、キング・コールの美しい音色も、大好きな理由です。 

「I've Found a New Baby」 「I Want to Be Happy」
 アップ・テンポの曲では、バディ・リッチのドラムは、生き生きとしていて、
曲全体に躍動感を与えています。

「Somebody Loves Me」
 ミドル・テンポでのレスター・ヤングとキング・コールの息もぴったりです。
ピアノの斬新な解釈が、トリオであることを感じさせない厚みのある、魅力を作り出しています。

 
どの曲も、魅力がありますが、テディ・ウィルソンより、モダンで、力強く、躍動感があり、
カウント・ベーシーより、積極的で、スィンギーなフレージングが、キング・コールの持ち味なんでしょう。
 このアルバムでは、やや控えめながら、彼の、モダンなピアノが、レスターを触発していて、
この時期にしては珍しく、レスター・ヤングの好プレイが聴けます。
バディ・リッチのドラムも、トリオに躍動感をもたらす要因になっています。


 ▽ 「The Instrumental Classics」 
 1943/1947年・Nat King cole(p) Oscar Moor(g) Johnny Miller(b) 
 親しみやすい曲目が多いことと、3人のアーティストのベスト・プレイが聴けることから、
一番のお気に入りアルバムです。
 但し、このアルバムには、49年の3作品もありますが、雰囲気が違っていて、私好みではありません。

「Jumpin' At Capitol」
 特徴のあるメロディのアップ・テンポの曲です。オスカー・ムーアのギターが、冴えていますし、
ピアノ、ベースとのハーモニーも、申し分ありません。

 「The Man I Love」 「Body And Soul」
 おなじみのスタンダードを、キング・コールのピアノは、モダンで魅力一杯ですが、
オスカー・ムーアのギターが、ムードたっぷりで、フレージングも見事な、名演奏を聴かせてくれています。
トリオのセンスの良さと、退屈させない力強さも感じます。

 「What Is This Thing Called Love」
 このアルバムで、1〜2を争う名演奏です。
コールの、弾けるような、スィンギーなピアノ、オスカー・ムーアのギターとの絶妙のバランス、
文句なしにウキウキさせてくれるナンバーです。

 「Easy Listening Blues」
 一転してのスロー・ブルース。ファンキーな中に、上品さが同居する、コールのピアノ・ソロは、
やはり黒人特有のブルース・フィーリングが感じられて、好感が持てます。
ムーアのギター・ソロも表情豊かで、リラックスさせてくれます。

「Sweet Georgia Brown」
 アップ・テンポで、スリリングな演奏です。コール、ムーア、ミラーの乱れの無い見事なプレイです。
オスカー・ムーアのギターは、テクニックもさることながら、モダンな感覚が、なんともいえない魅力です。

「This Way Out」
 コールの作品ですが、単純なメロディと、繰り返されるリフが、モダンな感じのブルースを表現しています。

「Somke Gets In Your Eyes」
 イージー・リスニング調の構成ですが、こんなところが、ナット・キング・コールが、
大衆受けする原因だったのだろうと思わせるプレイぶりです。チョッと物足りない感じはしますが…。

「Honeysukle Rose」
 アップ・テンポでの、乱れの無いプレイが魅力です。
おなじみの曲を、これほど、モダンなものに変えてしまうところが、キング・コールのセンスなのでしょう。

「Rhumba Azul」
 ジョニー・ミラーの規則正しい、ベースの上を自由に泳ぐ、コールのピアノが、
エキゾチックな雰囲気を表現しています。コールが、一流であることを証明する熱演です。

「Moonlight In Vermont」
 原曲に素直に、そしてしっとりとした味わいの、ピアノが堪能できます。
スロー・バラッドでの、説得力のあるモダンな演奏は、一段と魅力があります。

「How High The Moon」
 短い演奏時間の中でも、ジャズ・ピアノのシャレた感じがよく出ていてくつろぎに満ちています。

「I'll Never Be The Same」
 ビリー・ホリディで大好きなこの曲が、キング・コールのピアノにかかると、
こんなにも感じが違うんだと、驚かされます。静かに訴えかけるようなプレイは、似ているのですが、
こちらは、ゆったりとした気分で、安心して聴いていられます。

「These Foolish Things」
 レスター・ヤングとの共演でも馴染みのある曲ですが、ピアノ・トリオは、やはり、静かな雰囲気です。
ミラーのベースが、心地よいリズムを刻んでいて、くつろいだ気分にしてくれます。

 ▽ 「Nat King Cole and the King Cole Trio / Golden Years 1943-1946」
上記のものと同じ頃録音したアルバムです。 ライナーには、そこら辺のいきさつが詳しく書かれていますが、
要はレコード会社が違うだけで、このアルバムでも、若き日のキング・コール・トリオの演奏や、
コールの溌剌としたヴォーカルが楽しめることに変わりはありませんが、
 
「In The Beginning」 に比べてコールの弾き語りは、随分雰囲気のあるものになっているようです。

  

■ 「Canada 2」


 ▽ 「After Midnight」 1956年 

 ソロ・シンガーになってから、珍しい、
ジャズ・フィーリングたっぷりの、弾き語りのアルバムです。

ピアノもヴォーカルも、一段と洗練されていて、
くつろいだ雰囲気に満ちています。

「You Can Depend On Me」
 ハリー・スィーツ・エディソンのミュートと、キング・コールの歌が、
ゆったりしたテンポで、くつろぎを与えてくれます。

「Candy」
 リー・モーガンで有名な曲ですが、ここでも、レイジーな雰囲気が十分伝わってきます。
キング・コールのシャレたピアノ・ソロ、効果的なエディソンのトランペットのレスポンス、
ジョン・コリンズのギターも心地よく、当然、コールのヴォーカルも良く、
このアルバムでも上位のナンバーです。

「Sweet Rorraine」
 得意な曲を情感たっぷりに歌うコールの、これはベストです。
ミュート・トランペットも、粋で、この歌の雰囲気を一層効果的に表現しています。
最も気に入ったナンバーです。

「It's Only A Paper Moon」
 軽快なリズムに乗って、コールの歌も弾んでいます。
トランペット、ギター、ピアノのソロも気持ちよくスィングし、
軽やかな気分にさせてくれる素晴らしい演奏です。

「Route 66!」
 これも、前曲同様、スィング感がたまらない、お気に入りのナンバーです。
コールのピアノは、モダンなフレージングで、歌だけではない魅力です。
ここでのエディソンのトランペットも、実に効果的です。

「Don't Let It Go To Your Head」
 3大アルト・サックス奏者の1人、ウイリー・スミスが参加しています。
軽快な歌と、サックスによるスィンギーな演奏で、ゴキゲンといったところです。

「You're Lookin'n At Me」
 落ち着いたリズムに乗って、コールの歌が優しさに溢れています。
アルト・サックスが、ここでは、ソフトで暖かい音色に終始していて、意外です。

「Just You, Just Me」
 ややアップ・テンポで、ピアノ、サックスが、スィングしています。
ここでは、やや力強いサックスですが、それでも曲のイメージを壊すほどではありません。

「I Was A Little Too Lonely And You Were A Little Too late」
 コールの弾き語りの見事さがここでも楽しめます。さらっとした歌い方と、ピアノ・タッチがオシャレです。

「Caravan」
 デューク・エリントン・ナンバーで、ファン・ティゾールが、ヴァルブ・トロンボーンで、参加しています。
アップ・テンポを、ドラマティックに歌いあげている、といった感じです。
ピアノ・ソロでのコールも、かなりの熱演で、コンボながらスリリングでエキサイティングです。

「Lonely One」 「Blame It On My Youth」 「What Is There To Say」
 ヴァルブ・トロンボーンの、憂いを込めた音色が、コールの情感表現とマッチしていて、
侘しげなムードが増幅されます。
 
「Sometimes I'm Hppy」 「I Know That You Know」 「When I Grow Too old To Dream」 
「Two Loves Have I」

 折角馴染みの深い曲を、ナット・コールが熱演しているのですが、
スタッフ・スミスのヴァイオリンが入っている為、ジャズの香りが無く、好きになれません。

 
共演者が4人変わって、雰囲気も違うのですが、アルバムを通して、ナット・キング・コールの、
アーティストとしての素晴らしさを、実感します。
 私の好みでは、ハリー・スィーツ・エディソンとの共演の作品が一番好きです。
カウント・ベーシー楽団では、バック・クレイトンのほうが、より好みなのですが、
スモール・コンボでの、ミュート・トランペットでは、名のとおり、スィートな味が良く出ていて素晴らしく、
キング・コールの歌、ピアノにも、文句無しにフィットしています。
 夜のひととき、安らぎを与えてくれる貴重なアルバムです。

 ▽ 「Love Is The Thing」 
 彼が、歌手に専念してからの、ヒット・アルバムです。
弾き語りとは違って、厚みのある、豊かな声量を生かして、情感たっぷりに歌っています。

「When I Fall In Love」
 ゴードン・ジェンキンスの荘厳なオーケストラを従えて、気持ちよく歌っています。
これだけのスロー・バラッドを、十分な声量で、ゆったり歌えるのですから、
歌手としても、一流である事が証明されます。

「Star Dust」
 おなじみのスタンダード・ナンバーですが、キング・コール独特の、暖かく、
優しい語り口で聴かせてくれます。

「Stay As Sweet As You Are」
 ゆったりと、包み込むような豊かな声は、オーケストラと一体になり、
厚みのある音楽を生み出していて、気に入っています。

「Love Letters」
 彼の歌が、白人に人気が高かった事が十分理解できる、素晴らしい歌声です。
ストレートに、優しく語り掛ける彼の歌は、人種を超えて魅力があります。

「Ain't Misbehavin'」
 この曲を、これほどスローに歌いこなす歌手も、少ないでしょう。
暖かく、情感一杯の彼の歌は、心が癒されます。

「I Thought About Marie」
 これも、好きなナンバーです。
しっとりと、低音での力強さ、高音部での柔らかく、安心して聴いていられます。

「Love Is The Thing」
 アルバムのタイトル曲です。
どの曲を聴いても、ナット・キング・コールらしさが、表現されています。
優しさ、暖かさが彼の特徴です。


 
フランク・シナトラは、私の最もお気に入りの歌手ですが、
ナット・キング・コールも、子供の頃から、親しんでいた歌手です。
あの頃の彼には、中南米音楽にも沢山のヒット曲がありましたが、
あらためてスタンダード・ナンバーを聴いてみると、
いわゆるスィング・ビッグ・バンド出身の歌手とは違った解釈で、
独自の魅力を創り出している事が、良くわかります。

 彼の、キャリアを追って、一通り聴いてみると、やはり、
ピアニストとしての彼に、一段の魅力を感じます。
40年代、あくまでトリオにこだわって、モダンな音楽を志向していたころの彼を
知ってしまった今だから言える事ですが…。
但し、J.A.T.Pでの彼のプレイをあまり聴く事はありません。
 レスター・ヤングもそうですが、あれは、ビッグ・スターの顔見せ興行であり、
じっくり聴く音楽ではないと思っています。
 


 バド・パウエル (気品のある音色が魅力的)
 

■ 「Bud Powell」 

 ピアニストとして、ビ・バップを完成させた、
最初のアーティストだそうです。
若い頃聴いた
「Cleopatra' Dream」 では、美しいメロディの
印象しか残っていませんでしたから、その後、彼の作品を聴くうちに、
違う顔があることを知ることになりました。


 ▽ 1947年: 「The Bud Powell Trio Plays」
 スタンダードナンバーを好演。聴きやすいアルバムです。

「Indiana」
 アップテンポの中にも、メロディがきれいです。

「Some Body Love Me」
 リラックスした心地よいプレイで、音楽性も豊かなナンバーです。

「I Should Care」
 ムード一杯のスロー・バラッド。きらびやかな音色が魅力で、
彼が単なるバッパーではない、優れたアーティストであることを証明しています。

「Off Minor」
 セロニアス・モンクの曲ですが、私のお気に入りの曲でもあります。
ここでは、多彩なテクニックを披露しています。

「Everything Happens To Me」
 やはり、スローな曲に魅力を感じます。
ピアノ・タッチに気高さが表れていて、心和みます。

「Embraceable You」 「You'd Be So Nice To Come Home To」
 クラシック音楽を想いおこさせる、説得力あるプレイに、
彼のアーティストとしての実力を感じます。

「Stella By Starlight」
 美しいメロディの曲を、華麗に、情感一杯に表現しています。
バッパーである前に、優れたアーティストである事がわかります。

 ▽ 1949年: 「Sonny Stitt /Bud Powell /J.J.Johonson」
 ビ・バップの枠を超えて、豊かな歌心を満喫できる、大好きなアルバムです。
サイドメンとは思えない熱演で、しかも、二人のプレイはスムーズで、くつろげます。
アップ・テンポでのビ・バップ・プレイは、ほとんど好きではないのですが、
このアルバムは、例外です。

「All God's Chillun Got Rhythm」 「Fine And Dandy」 「I Want To Be Happy」
 「Taking A Chance On Love」 「Bud's Blues」

 スティットのところで取り上げましたが、私の好きな、バド・パウエルのプレイが、
このアルバムには盛りだくさんです。


▽ 1950年: 「Bud Powell Jazz Giant」
 バップ・ナンバーよりは、やはり、スタンダードなものに魅力を感じます。

「I'll Keep Loving You」
 豊かな感性が感じられる、情感たっぷりのプレイぶりに惹かれます。

「Get Happy」 「Sweet Georgia Brown」
 高速プレイの中にも、彼らしいフレージングが光っています。
当時は、このような表現は、革新的だったのだろうと創造します。

「Yester Days」 「April In Paris」
 美しく、気高い音色。時代を超えて、心に響くというのは、技術だけではない、
高い音楽性が求められますが、ここには、それがあります。
このアルバムでのお気に入りナンバーです。

「Body And Soul」
 華麗な音色、スムーズなフレージングと、魅力に溢れていて、特に、気に入っています。
エンディングがチョッと、トリッキーですが、それも、彼一流の解釈なのでしょう。

 ▽ 1951年: 「The Amazing Bud Powell 2」
 スタンダード・ナンバーは、今でも、素直に聴けますが、それ以外は、
安らぎという点でチョッときついものがあります。

「A Night In Tunisia」
 ガレスピーの、有名な曲ですが、ピアノ・トリオだけに、パウエルの独壇場といった感じです。
フレージングも美しく、マックス・ローチの効果的なドラムも、雰囲気を盛り上げています。
この曲は、「Our Man In Paris Dexter Gordon」で、サイドメンとしての演奏も、魅力に溢れています。

「Autumn In New York」
 メロディの美しさで、大好きな曲です。落ち着いた中にも、豊かな叙情表現が見事です。

「Polka Dots And Moonbeams」
 これもおなじみの、スタンダード・ナンバーです。スロー・バラッドを、心を込めて歌いあげています。
豊かな感受性にめぐまれていたアーティストであることが、素直に伝わってきます。

「I Want To Be Happy」 やや早いテンポですが、きちっとした、リズム陣に支えられて、
気持ちよくスィングしています。

  

■ 「Canada 3」


▽ 1958年:「The Scene Changes」

一番売れたアルバムだそうです。
確かに、全て彼の作曲で、親しみやすいメロディの曲が多く、
甘さを抑えた優しさとも言うべき、彼の本当の姿を見る思いです。

 「Cleopatra' Dream」
 このアルバムで、唯一気に入っていて、しかも、彼を最も有名にした曲です。
“エリーゼの為にをひっくり返した曲だ” と、本屋で立ち読みした折、そんな事が書いてありました。
それはとも角、メロディが美しく、彼の美意識が曲全体に感じられて、未だに、飽きる事がありません。

「Borderick」
 変わった演奏です。
単純で、憶えやすいメロディを、様々なプレイ・スタイルで、芸の細かいところを披露しています。
特に好きではないのですが、興味深いナンバーです。

「The Scene Changes」
 
アップ・テンポの曲を、ポール・チェンバースのベース、アート・テーラーのドラムが、
心地よくリズムを刻んでいます。
メロディは、あまり親しみの湧かないものですが、モダン・ジャズを感じさせる心地よいナンバーです。

▽ 1961年: 「A Portrait Of Thelonious /Bud Powell」
 彼の、兄貴分だった、セロニアス・モンクの曲を、取り上げています。
オーソドックスに、心を込めて演奏している姿が想像されて、お気に入りのアルバムです。

 「Off Minor」
 ここでの録音は、1947年の演奏より素晴らしく、私のバド・パウエル・ベストワンかもしれません。
技術を超えた、高い音楽性を、こちらの方に強く感じます。

「There Will Never Be Another You」
 モンクの作品ではありませんが、ここでも、厚みのある、華麗なピアノが楽しめます。

「Ruby, My Dear」
 恐らくセロニアス・モンクも、このように演奏して欲しかっただろうと思わせる、
ゆったりした中に、優しさがにじみ出るような素晴らしい演奏です。

「Monk's Mood」
 独創的で、魅力のあるメロディの曲です。
荘厳で、気高い、彼のピアノを味わう事が出来ます。


♪  1963年: 「Our Man In Paris」 
 デクスター・ゴードンのアルバムですが、バド・パウエルの美意識が堪能でき、
また、ドラムのケニー・クラークも好きな事から、大好きなアルバムです。

・「Scrapple From The Apple」 「Broadway」 「A Night In Tunisia」  
ア ップ・テンポでの、短いソロの中にも感じ取れる、華麗な音色が最高です。
♪ 
「Willow Weep For Me」 「Stairway To The Stars」
 
 スロー・バラッドでの、美しいピアノ・ソロは、若い頃には聴かれなかった、
豊かな情感が込められていて、心を打ちます。


 ▽ 「Bud In Paris」
 バド・パウエルが、フランス滞在中の様々なセッションを、集めたCDです。

「Idaho」 「Pardido」
 ジョニー・グリフィンの、縦横無尽のバップ・フレーズが聴けます。
バド・パウエルも負けじと、激しいうなり声を発しながら、熱くプレイしています。
流れるような美しいメロディというわけにいかず、異国の地での、
珍しいライブ・ナンバーといった感じです。

「Autumn In New York」 
 きらびやかなピアノソロを痛々しいほどの、うなり声の中で聴かせる晩年のプレイに、
心打たれます。
「The Amazing Bud Powell 2」 でのものより、スタンダード・ナンバーの気軽な心地よさがあります。
テナー・サックスは、バルネ・ウィランというフランス人ですが、
なかなかの歌心で、気に入ったナンバーです。


「Revverse The Charges」 「The Man I Love」 「September In The Rain」 
 1945年に吹き込まれたという、珍しい録音です。
フランキー・ソコロウのテナーが、コールマン・ホーキンスに良く似ていて、
古めかしいのに、バド・パウエルのピアノ、フレディ・ウェブスターのトランペットが、
妙にモダンだったりして、変化する時代を垣間見るような演奏です。
音楽史的には、貴重な演奏なのでしょうが、研究家でもないので、
変な感じ!、という印象しかありません。


 
バップ・ピアニストとしての、超人的プレイが評価されていますが、
若い頃から、晩年までのプレイを一通り聴くと、むしろ、彼の意思に反して指の動きが怪しくなり、
でも、一生懸命、想いを鍵盤に込めてプレイする、晩年の病の中でのプレイの方が、
親しみ、敬愛の気持ちが湧いて、ずっと好きです。

 彼に限らず、心和む曲は、モンクの作品を含めて、ほとんどがスタンダード・ナンバーです。
時代を超えて親しまれた曲を、スタンダード・ナンバーというのですから、当然ですが…。



 セロニアス・モンク(名曲の数々と独自の世界が魅力)
  

■ 「Thelonious Monk」


 
独特の旋律、不協和音、彼のスタイルは、変わっています。
でも、絞り込んだ音の使い方は、カウント・ベーシーに似ていて、
タイプは違いますが、意外と気に入っているのです。

モンクに影響を与えたアーティストは、デューク・エリントンだそうです。
 黒人のジャズのあるべき姿を追及しただの、普遍的音楽性があるだの、
研究家は彼をいろいろ分析しています。私は、ミントンズ・プレイ・ハウスでのプレイを聴いて、
彼を、スィング・ジャズの延長でしか理解していません。

 どちらかというと、バーティカルなスタイルが好みで、あまり流麗なピアノは、
退屈する事が多いだけに、彼の奏法は、あまり気になりません。
でも、彼が作曲した名曲の数々は、プレイ以上に素晴らしいと思っています。


 「Thelonious Monk Trio」 1952/1954年

 「Blue Monk」 
モンクのプレイは、鍵盤の上を、一音一音確かめながら、弾く感じが特徴ですが、
ここでは、スムーズです。
彼の代表的な、ブルース・ナンバーで、パーシー・ヒースのベース、
ブレイキーのドラムに支えられて、スィング感があり、このアルバムで、一番気に入っています。

「Bemsha Swing」
 トリオで聴くと、この曲も随分感じが違います。私は、モンクに対しては、
スィング・ピアニストの印象をもっていますから、音は、変ですが、この曲での、
モンクのスィング感は、悪くありません。

「Reflections」
 親しみのあるメロディです。
ピアノは、的確で、マックス・ローチのリズムもスムーズで、心地よいナンバーです。

 「Sweet And Lovely」 
 スタンダード・ナンバーを、独特のハーモニーでプレイしていますが、華麗で、
確かなテクニックを感じさせ、気に入っています。曲の美しさも十分表現されています。

「Bye-Ya」
 ブレーキーのラテン・リズムに乗って、モンクのピアノは、踊るように軽快です。
単純な構成の曲だけに、スィング感は十分です。

「Monk's Dream」
 不協和音の中に、スィングする心地よさがある、不思議な演奏です。
モンクの特徴的なスタイルが、聴かれます。

「These Foolish Things」
 
こういう曲を選ぶところに、彼の歌心を感じます。独特な表現で、
ユーモアは感じても、ドライではありません。

 このアルバムは、モンクの、ピアノを楽しめるものとして、気に入っています。
特徴的な彼の奏法は、あまり大勢の場合、違和感を感じることがあり、
ソロや、トリオでのプレイのほうが、素直に、彼の良さが発揮されるような気がします。


▽ 「Brilliant Corners」 1956年:
 Thelonious Monk(p),Ernie Henry(arto sax),Sonny Rollins(tennor sax),
Oscar Pettiford(b).Max Roach(d)
 最初に購入した彼のCDで、有名なアルバムです。
変則的な音楽に、当惑したものです。
飽きのこない事は間違いありませんが、これが一番とは思えません。


「Brilliant Corners」
 なんだこれは!、と最初に感じた曲です。思い描いていたジャズとは随分違い、
がっかりした想いがあります。
緩急を織り交ぜた構成も、特異な感じで、メンバーが、無理なくプレイしているのが不思議なくらいでした。
今聴いて、当初の違和感はありませんが、曲として、あまり好きではない事に変わりはありません。

「Ba_Lue Molivar Ba_Lues_Are」
 最初から、抵抗が無かったのは、この曲でした。スロー・ブルースが、聴きやすかったからでしょう。
ロリンズのソロも気持ちよく、長い演奏時間ということもあって、くつろぎの感じられるナンバーです。

「I Surrender, Dear」
 やはり、こういう曲は、安心して聴いていられます。モンクが、独自の解釈で、叙情表現をしていますが、
曲の美しさを損なうことはありません。
歌心が、素直に伝わってきて、気に入った演奏です。彼の本当の姿は、ここら辺にあるはずです。

「Bemsha Swing」
 この曲だけが、クラーク・テリーのトランペット、ポール・チェンバースのベースです。
何度も取り上げる曲ですが、テーマの素直な表現では、トリオでのほうが、より優れていると思います。

 
ライナー・ノーツには、天才的だとか、最高傑作だとか、さまざまな賛辞が書かれていますが、
私にとっては、書かれているほど、感慨も無く、特別好きなアルバムではありません。
56年発表された時は、確かに衝撃的なものだったでしょうが…。

  

■ 「Canada 4」


▽ 「Monk's Music」 1957年

 こちらの方が、オーソドックスにスィングする、
ジャズの香りがして、気に入っています。

コールマン・ホーキンスのところで触れましたが、
ジャズの楽しさと、オーケストラのような、
厚みのあるサウンドが、魅力のアルバムです。

「Abide With Me」
 賛美歌のようですが、モンクの世界の始まりといった趣があり、短いけれど、美しい曲です。

「Well,You Needn't」
 この曲は、彼の作品中、1〜2番目に好きな曲です。モンクのシングル・トーンは、美しく、
また、スィングするオーケストラのようなサウンドが、魅力です。
コルトレーンが、未熟なのが引っかかります。

「Ruby, My Dear」
 ホーキンスのサックスは、魅力的で、モンクの世界を、十分表現しています。
モンクのピアノも、美しい旋律を奏でていて、彼が、決して、変なピアニストではない事を証明しています。
コールマン・ホーキンスの演奏で、恐らく一番気に入ったものかもしれません。

「Off Minor」
 3本のサックスで、厚みのあるハーモニーが聴かれます。
レイ・コープランドのトランペットも良く、モンクのブロック・コードも変則的ではありません。
相変わらずブレーキーのドラムは、熱く、プレイヤーの熱演を、触発しています。

「Epistophy」
 コルトレーン、コープランド、グレース、ウエアー、ブレイキー、ホーキンス、モンクと、
それぞれのソロが聴かれます。
コルトレーンは、モンクから、かなり学んだようですが、ここでの彼のサックスは、スムーズです。
オーケストラのような、重厚なテーマが魅力です。

「Crepuscule With Nllie」
 モンクのピアノは、物憂げで、説得力があります。プレイにも、破綻がありません。
彼の、独特の情感表現を感じます。

 
このアルバムは、ホーキンス、ブレイキーと、達者なアーティストとの共演で、
モンクの曲を、より魅力的なものにし、こなれたジャズの楽しさが味わえます。


▽ 「This Is Jazz 5 Thelonious Monk」 
 60年代の、彼の曲をまとめたCDです。初期の頃に比べて、鋭さも消えて聴きやすく、
肩のこらないアルバムとして、気に入っています。

 「Round Midnight」
 68年: しっとりとした感じの、ピアノ・ソロです。
これのベストは、マイルス・クインテットにありますが、バド・パウエルの兄貴分として、
きらびやかで、情感溢れるプレイは、美しいメロディと相まって、素晴らしく、
モンクのアーティストとしての才能を、この一曲で知ることが出来ます。

 「Well You Needn't」
 64年: チャーリー・ラウズとのコンビで、先鋭度が無くなったとか言われていますが、
私にとって、この演奏は、モンク最高のお気に入りナンバーです。
 曲の良さ、スィング感、ラウズのテナー・サックス、モンクのピアノ・タッチ…、
カルテットとしてのまとまり…、申し分ありません。

「Bemsha Swing」
 63年: ラウズのテナーのテーマに、1拍遅れてピアノが、同じテーマを繰り返します。
ブッチ・ウォーレンのベースも良く、フランスでのライブでしょうが、まとまりの良いナンバーです。

「Ruby, My Dear」
 66年: 彼のソロは、コンボでの演奏とは違って、美しい旋律で、時に力強く、
時に優しい、見事なものです。
ピアノ・ソロで、これほどドラマティックなアーティストを、他に知りません。

「Straight, No Chaser」
 68年: フル・バンドで迫力ある演奏です。モンクのピアノが、力強いタッチで驚かされます。
この曲は、ミルト・ジャクソンの演奏で、気に入ったのですが、このようなスタイルでも、
曲の魅力、モンクのピアノの独創性は、損なわれません。

「Blue Monk」
 68年: 同じメンバーでの、厚みのあるサウンドが楽しめます。
モンクは、沢山の魅力ある曲を書いたものだと、つくづく感心させられますが、
これもその中の名曲の1つです。
特徴あるソロも、全く違和感なく、彼の技術の基にある、音楽センスに満足します。

「Rhythm-A-Ning」
 62年: ミドル・テンポのスィング・ナンバーです。
ラウズのテナー、モンクのピアノと、ピタッとはまった、単純なメロディでのスィング感。
文句ありません。

「Monk's Dream」
 62年: ラウズが、妙にモンクのスタイルに合わせているようで、ちょっといただけません。
彼は、もっと自由に自分のスタイルでやったほうが、モンクとの対比で、面白いのです。

「Misterioso」
 63年: フランスでのライブ。これは、さすがにブルー・ノートでの、
ソニー・ロリンズのアルバムにはかないません。
ロリンズにくらべて、ラウズのテナー・サックスが平凡で、曲全体を支配していた、
あのミステリアスで、スリリングな感じがありません。
 ソニー・ロリンズが、いかに優れた、アーティストだったか、
ラウズのプレイで、再認識させられます。

「Epistrophy」
 63年: この曲も、フル・バンドで、一段と効果的です。非常に短いのですが、
ハーモニーの美しさが、十分感じ取れます。


 「Bags Groove Miles Davis」 1954年:
 このCDを購入して、昔家にあったレコードで、お気に入りの曲:
「Doxy」 に出会いました。
マイルス・デイヴィスとセロニアス・モンクの確執で有名な、タイトル曲も含めて、
このアルバムについては、他のページで、取り上げたいと思います。

 セロニアス・モンクの魅力は、一般的にいわれているような、
特異なピアノ演奏での、創造性に対してではなく、素晴らしい作品に感じます。
でも、ソロで聴く、彼のピアノには、他のアーティストには無い、独特の美意識が感じられ、
また落ち着いた雰囲気も気に入っています。

 
バド・パウエルとセロニアス・モンクは、私のアーティストの好みで言えば、
チョッと異質かもしれません。
楽器の特徴である、自己完結性が、個性豊かなアーティストである2人を、
抵抗無く、好きになれた理由かもしれません。


  ウイントン・ケリー(お気に入りのピアニスト)
  

■ 「Wynton Kelly」
 

 ウイントン・ケリーの、ガラス玉が、コロコロ転がるような、
小気味良いフレージングとスィング感は、
ジャズが、チョッと洒落た音楽である事と、ピアノが、
素敵な楽器である事を教えてくれます。

彼は、テナー・サックスのハンク・モブリーや、
ギターのウエス・モンゴメリーのように、
複雑で、繊細なフレージングを、軽快なタッチで、さらっと表現します。

 ホレス・シルバーより、アーシーではありませんが、明快さという点では似ていて、
2人は、お気に入りです。
 モダン・ジャズ全盛期を担った、これらのアーティストのおかげで、モダン・ジャズが私にとっても、
より魅力的な音楽になったのだ思っています。
 

 ▽ 「Piano Wynton Kelly」 1958年: Wynton Kelly(p) Kenny Burrell(g)
Paul Chambers(b) Philly Joe Jones(ds) 

 ウイントン・ケリーの、ベスト・アルバムです。
私にとって、最も好きなピアニストである根拠が、このアルバムにあります。

 「Whisper Not」
 ベニー・ゴルソンの、哀愁に満ちた、素晴らしい作品で、大好きな曲です。
ケリーのピアノは、美しい音色と、シャレたフレージングで、くつろぎを与えてくれます。
ケニー・バレルのギター・ソロも気に入っています。このアルバム、1番のお気に入りです。

「Action」
 題名どおり、アップ・テンポな曲です。
規則正しいリズムの上を、スムーズなピアノ、ギターが踊っているようです。
ケリーのオリジナルですが、単純なテーマだけに、スィンギーで、親しみやすいナンバーです。

 「Dark Eyes」
 私にとっては、懐かしさがこみ上げて、チョッとセンチになってしまう、ロシア民謡です。
小さい頃、日本の映画で、この曲が使われて、淋しい感想を持っていることや、
サッチモの歌が、妙に心に残っているのです。
ケリーのピアノ、ケニー・バレルのギターも良く、曲としてのまとまりも、文句無く素晴らしい、
お気に入りのジャズ・ナンバーに仕上がっています。

「Strong Man」
 曲の良さももちろんですが、ケリーのピアノに、メリハリのある歌心が感じられて、心地よい演奏です。
それにしても、ケリーのシングル・トーンの美しさは、心洗われる気がします。

「Ill Wind」
 ケリーのスムーズなスィング感の中に、強弱のあるプレイは、小気味良いものがあります。
トリオのまとまりが、よく出ている作品です。

「Don't Explain」
 一転して、情感に溢れた、しっとりしたプレイです。
ノー天気な、スィング・ピアニストではない、作曲者のビリー・ホリディの気持ちを汲み取ったかのような、
見事なリリシズムです。
ケニー・バレルのギター、チェンバースのベースも、落ち着いた雰囲気を作り出しています。

♪ 「You Can't Get Away」
 このアルバムで、1番ゴキゲンな曲です。
ケリーの作曲ですが、多彩なテクニック、スィング感、ケニー・バレルとのコール&レスポンス…、
痛快な演奏に、心がウキウキします。
ウイントン・ケリーは、かなり複雑で、高度なテクニックをもっているプレイヤーですが、
さらっと表現してしまうところが、何とも小粋な感じで、たまりません。 

 
このアルバムは、全部の曲が気に入っている点で、「Smokin' At The Half Note」 以上です。
2枚とも、私の、常備CDで、ケリーを聴きたいときは、すぐ聴けるようにしています。
 何年聴いていても、決して飽きないアルバムなんて、そう沢山は無いはずです。
このアルバムは、派手な印象がないこともあって、飽きることがありません。


▽ 「Peckin' Time : Hank Mobley」 1958年:
 Lee Morgan(tp) Hank Mobley(ts) Wynton Kelly(p) Paul Chambers(b) Charlie Persip(ds)

「High And Flighty」 「Speak Low」 「Peckin' Time」 「Stretchin' Out」 「Git_Go Blues」
 ハンク・モブリーで、最もハード・バップを感じるアルバムですが、
リー・モーガンのブリリアントなトランペット、優しい響きのモブリー、スィンギーなウイントン・ケリー
という組み合わせで、上品で、エキサイティングなジャズを楽しめます。
私は、トランペッターでは、リー・モーガンの音色が1番好きで、私が、“ハード・バップ命” 
というほどのめり込んでいたら、かなり上位にランクされる、上質なアルバムだと思います。

 

■ 「Canada 5」  


▽ 「Kelly Blue」 1959年: 

 Wynton Kelly(p) Nat Adderlley(cor) Benny Golson(ts)
Bobby Jaspar(fl) Paul Chambers(b) Jimmy Cobb(d)

「Kelly Blue」 「Keep It Moving」 
ファンキーを代表する、有名なアルバムです。
馴染みやすい、テーマのあと、それぞれが、ソロをとっていますが、
ナット・アダレイ、ベニー・ゴルソンが、持ち前の黒さ、を十分発揮して、
小気味よいナンバーです。
 ジャスパーのフルートも、素晴らしいプレイなのですが、楽器のもつ、清涼感が、
熱さに水を差すような印象で、私には、チョッとひっかかります。
これらの曲は、親しみやすく、ジャズの楽しさを教えてくれた大ヒット・ナンバーですが、
反面、何度も聴いているうちに、食傷気味になったかな、という感じです。

「Softly, As In A Morning Sunrise」 「On Green Dolphin Street」 「Willow Weep For Me」 「Old Clothes」
 マイルス・デイヴィスのリズム・セクションによる、これらのナンバーは、見事です。
ケリーのあか抜けたピアノが、十分楽しめます。例のシャレた、右手の節回し、シングル・トーンの美しさ。
ポール・チェンバースの落ち着いた、ベース。ジミー・コブの、控えめで、効果的なドラム。
 飽きのこないトリオの名演として、気に入っています。

「Softly, As In A Morning Sunrise」
 
ジューン・クリスティのヴォーカルで、大好きな曲です。
曲の美しさを損なわない、ケリーのタッチも素晴らしく、
ピアノ・トリオでは、このプレイが一番だと思います。


「Willow Weep For Me」
 は、特に好きな曲ということで、つい、他のプレイヤーと比べてしまうのですが、
特徴のある、チェンバースのリズムにのって、ケリーのピアノは、ゆったりと、
上品にメロディを奏でていて、納得できる出来栄えです。

 
セクステットの、タイトル曲が有名ですが、
私は、トリオでの作品のほうが、ケリーのピアノの楽しさ、音色の美しさが感じ取れて、
より気に入っています。

 

▽ 「Kelly Great」 1959年:
 Wynton Kelly(p) Philly Joe Jones(ds) Lee Morgan(tp) Wayne Shorter(ts) Paul Chambers(b)
「Wrinkles」 「Mama ”G"」 「June Night」 「What Know」 「Sydney」 
 このアルバムは、ウエイン・ショーターが参加している事で、唯一、嫌いなアルバムです。残念です。

▽ 「Kelly At Midnight」 1960年: Wynton Kelly(p) Paul Chambers(b)  Philly Joe Jones(ds)
「Temperance」 「On Stage」 「Skatin'」 「Pot Luck」 
 ウイントン・ケリーのベスト・アルバムだとの声がありますが、私には、そうは思えません。
確かに、ケリーのピアノは、スィングしてフレージングも見事で、ケリー節も健在ですが、聴いていていて、
あまり心安らぐ感じがしないのです。曲になじみが無い事。フィーリー・ジョーの、ドラムがうるさい事。
せわしない感じがする事等が原因です。あまり心に響いてこない、というのが正直なところです。

「Weird Lullaby」 
は、スローで、ドラムがうるさい事は無いのですが、ケリーのスィンギーな面がでないことで不満です。

 録音技術の問題かもしれませんが、タイトル名に反して、ドラムの音だけが耳につくアルバムです。
ウイントン・ケリーは、品のあるスィング感、美しい音色、シャレたフレージングなど、
ジャズの心地よいフィーリングを、与えてくれるアーティストですが、このアルバムでは、
妙にメンバーそれぞれが、頑張りすぎて、ウイントン・ケリーのくつろぎ感が、伝わってきません。



■ 「Los Angeles 1」


 「Wynton Kelly !」 1961年: 

Wynton Kelly(p) Paul Chambers(b)
Sam Jones(b) Jimmy Cobb(ds)


 このアルバムは、気に入っています。スタンダード・ナンバーが多い事も原因ですが、
ケリーの良さが出ていると思います。
一般的には、ピアノ・トリオものに、やや物足りなさを感じる私ですが、ウイントン・ケリーの、スィングする、
メリハリのあるプレイは、退屈させません。

 「Come Rain Or Come Shine」
 ジャズ・メンの好むナンバーです。
ここでは、ミディアム・テンポで、ケリーの落ち着いた、スィングを楽しめます。

「Make The Man Love Me」 「Love I've Found You」
 
スロー・バラッドをしみじみと、情感たっぷりに演奏しています。
変な暗さが無いところが、彼の持ち味です。
決してファンキーで、ノリノリだけのピアニストではない事が理解できます。

 「Autumn Leaves」
 マイルス・デイヴィスのものとは違い、ミディアム・テンポで、
彼独特の解釈がみられますが、原曲の良さは、十分残しています。
このアルバムが、一般的に 「枯葉」 と呼ばれている事でも解るように、納得のいく演奏です。

「Surrey With The Fringe On Top」 「Gone With The Wind」
 この2曲は、ポピュラーなのですが、なぜかあまり好きではありません。
彼の演奏ではなく、曲自体に、魅力を感じないのです。

「Joe's Avenue」 「Sassy」
 ケリーのオリジナル・ブルースです。
単純ですが、スィンギーで、小気味よいケリーのピアノ・ソロを満喫できます。

「Sassy」
 のほうが、よりブルース・フィーリングがあり、気に入っています。

▽ 「It's All Right !」 1964年:  
 彼が、ジャマイカの血をひいている、ということで、ラテンを取り上げた、アルバムです。
キャンディドのコンガが、雰囲気を作っています。

「South Seas」
 ラテン特有の、リズミカルな曲に魅力があります。
ケリーのシングル・トーンもムードたっぷりのアドリブ・ソロを聴かせます。

「Kelly Roll」
 ギターのケニー・バレルの作曲で、ファンキーで、軽快なタッチのブルースです。
ケリーのピアノ、バレルのギターも、コンガのリズムにのって、スィンギーです。

「Moving Up」
 ケリーのオリジナル曲。アップ・テンポを、ケリー節を織り交ぜてスィングします。
バレルのギターも、スピードにのって、一気に弾きまくっています。

「On The Trail」
 日本でも馴染みの曲で、ジャズ・ナンバーではないのですが、ケリー、バレルと、
見事なアドリブで、ジャズに仕上げているといった感じです。でも、こんな曲を…とも思います。

「Escapade」
 このアルバムで、一番ノリノリの曲です。
スィンギーで、ホレス・シルバーを思わせるユーモラスな曲と、ケリーのピアノ・タッチです。
ケリーは、実際、ホレス・シルバーを真似ているかもしれません。

「Portrait Of Jennie」
 驚いた事に、この曲は、私のアイドル、ジェニファー・ジョーンズの、
同名の映画の影響で、1948年作られ、ナット・キング・コールの歌でヒットしたらしいのです。
ライナー・ノーツを読むまで、あの映画が、ジェニファーのものだったか、
自信が無かっただけに、新しい発見をした思いです。
曲自体は、しっとりとしたバラッドで、美しいのですが、
アルバムにそぐわない選曲のようで、ピンときません。

 
正直なところ、ポピュラー・ミュージックの要素が強く、アルバム編集にも問題があって、
大好きというわけにはいきません。
確かに、ケリーは、何でもこなす力はありますが、もっと、ジャズを感じるものの方が、好きです。


 ▽ 「Smokin' At The Half Note」 1965年: 
「No Blues」 「If You Could See Me Now」 「Unit 7」 「Four On Six」 「What's New」 
 このアルバムは、ハーフ・ノートでのライブ  「No Blues」 1曲だけで、十分満足していますし、
実際、今でも、他の曲を聴く事はほとんどありません。
 ウエス・モンゴメリーのベスト・ナンバーでもあるこの曲は、魅力が一杯です。
ウエス・モンゴメリーの、オクターブ奏法から、熱が入るにしたがって、
コード奏法へ移っていくダイナミックなプレイ。ウイントン・ケリーの、美しいシングル・トーン、
粋なアドリブ・ソロ。スィンギーで、ジャズの楽しさ、スリリングさを満喫させてくれます。

 
ウイントン・ケリーとウエス・モンゴメリーの、アーティストとしての類似性が、
見事に合致したような感じがして、この演奏は、文句無く、私にとって、2人のベスト・プレイです。
 この曲の圧倒的な魅力のため、他の曲が、かすんでしまうのです。

 
■ 「Los Angeles 2」


▽ 「Blues On Purpose」 1965年: 

「Blues On Purpose」 「If You Could See Me Now」 
「Somebody' s Blues」 「Another Blues」 
「Old Folks」 「Milestones」
 
 これも、ハーフ・ノートでの、ライブ録音ですが、
どちらかといえば、マニアのコレクターズ・アイテムといったところで、
あまり感動はありません。「No Blues」 が素晴しく、ウエス・モンゴメリーとの共演が
良かったのですから、比べると、当然見劣りします。それに、録音状態も気になります。

 
ウイントン・ケリーは、 「 Decisions / Sonny Rollins Vol. 1」 
♪ 
「Remember / Hank Mobley : Soul Station」
 という、
私の最も好きな曲に、参加していることで、愛着もひとしおです。
モダン・ジャズを身近に、魅力ある音楽にしてくれたアーティストとして、
ホレス・シルバーと同じぐらい、ウイントン・ケリーは、私にとって、貴重なアーティストです。


 ソニー・クラーク(独自な美意識とブルース・フィーリング)
  

■ 「Sonny Clark」

 
日本のジャズ喫茶で有名になったけれど、
アメリカでは、あまり人気の無いピアニストだと、
ライナー・ノーツには書いてあります。
彼のアルバムを聴く限り、人気はともあれ、
最高の、ブルース・フィーリングと、豊かな歌心をもった、
一流のプレイヤーであることは間違いありません。
同時に、愛着の湧くアーティストでもあります。


▽ 「Sonny Clark Trio」 1957年: Sonny Clark(p) Paul Chambers(b) Philly Joe Jones(ds)

・「Two Bass Hit」 「Be-Bop」 「Tadd's Delight」
 バド・パウエルを思わせる、バップ・ナンバーでの、クラークのピアノです。
これらは、彼のテクニックの上手さを感じるものの、
曲自体の魅力に欠けていて、あまり好みではありません。

「I Didn't Know What Time It Was」 「Softly As In A Morning Sunrise」 「I'll Remember April」
 スタンダード・ナンバーは、やはり聴いていて安心です。
そして中でも、
 「Softly As In A Morning Sunrise」 は、ソニー・クラークが、
単なる、ブルージーなピアニストではない、素晴らしいアーティストである事を証明しています。
落ち着いたリズムの中、シングル・トーンの美しさが発揮されて、
ピアノ・トリオとしては、ウイントン・ケリーのものと同じぐらい、素晴らしい出来栄えだと思います。


▽ 「Hank Mobley Quintet Featuring Sonny Clark」 1957年:
 Kenny Dorham(tp) Hank Mobley(ts) Sonny Clark(p) Jimmy Rowser (b) Art Taylor(ds)

「Don't Get Too Hip」
 ブルージーなクラークのシングル・トーンが印象的な曲です。続く、ドーハム、モブリーのソロの間にも、
ホレス・シルバーばりの、バッキングが、実に効果的で、曲のまとまりも申し分ありません。

 「Deep In A Dream」
 優しく、官能的なムードが、たまらなく魅力的な曲です。モブリーの表現力の豊かさ、
クラークの、落ち着いた雰囲気の中での、洗練された音色と、このアルバム1番のお気に入りナンバーです。

「The Mobe」
 クラークのソロは、少ないけれど、特徴あるフレージングが、見事です。
やや、アップ・テンポでの、クラークは、スィンギーで、ややラテンの香りのする曲を、
モダンに感じさせる好演です。

「My Reverie」
 ケニー・ドーハムが主体の曲です。
彼は、バップをいち早く体得した若者と、アート・ブレイキーに紹介された、
ジャズ・メッセンジャーズの重要なメンバーでしたが、落ち着いた音色に、好感が持てるプレイヤーです。
クラークのソロも、良くまとまっていると思います。

「On The Bright Side」
 アップ・テンポでの、クラークのピアノ・ソロは、歯切れの良い、ベース、ドラムに支えられて、
ノリの良いところを聴かせます。ハード・バップの典型といったナンバーです。

 
ハンク・モブリーが大好きで、その中でも、お気に入りのアルバムです。
ケニー・ドーハムは、ベストと思える名演ですし、ソニー・クラークが、
決して泥臭いピアニストではない、サイドメンとして見事なピアノを披露しています。
ソニー・クラークとハンク・モブリーは、アップ・テンポで、ややもたつくようなところがありますが、
それが、また、素朴な味として、魅力を増幅しているのです。

         
▽ 「Poppin' Hank Mobley」 1957年:
 Hank Mobley(ts) Art Farmer(tp) Pepper Adams(bs) Sonny Clark(p)
Paul Chambers(b) Phhly Joe Jones(ds)
 ハンク・モブリーとのセッションが、同じ年に2枚録音されていますが、
こちらは、バリトン・サックスが参加している事で、チョッと変わったアルバムです。

「Darn That Dream」
 デクスター・ゴードンで気に入っている、この曲ですが、モブリーもクラークも、
しっとりとしたバラッド・プレイで、優しく、豊かな歌心を発揮しています。

「Gettin' Into Something」
 ソニー・クラークは、見事なソロをとり、ハード・バップの典型的な好演を楽しめます。

「Tune Up」
 アート・ファーマーのフレージングは、見事です。クラークは、
スィンギーなバッキング、味のあるソロと、スピード感のある展開に、緊張感を与えています。

 
バリトン・サックスが参加し、3管編成で厚みのあるものの、心地よい音色とは言えず、
あまり好きではありません。
ただ、この頃の、ソニー・クラークが、ブルー・ノートで、重要なピアニストであった事が理解できる、
まとまりの良いアルバムになっています。



■ 「Los Angeles 3」


▽ 「Cool Struttin'」 1958年:

 Art Farmer(tp) Jakie Mclean(as) Sonny Clark(p)
Paul Chambers(b) Philly Joe Jones(ds)

「Cool Struttin'」
 超有名ナンバーです。ぼくとつとした、
ブルージーさ、独特なフレージングが見事な、ソニー・クラークのピアノ。
ファーマーとマクリーンの、ややくぐもった音色も効果的で、曲自体の魅力が増幅されて、
人気があるのも理解できます。

 「Blue Minor」
 私は、この曲の方が好きです。さっそうとしたテーマは、モダンジャズの典型を表現しています。
ジャッキー・マクリーンの、アルトの音色は、あまり好きではないのですが、アート・ファーマーのソロは、
シャレたセンスに満ちています。
クラークのピアノが、ややもつれる感じも、たまらないところで、彼の孤独で、
ブルージーな人生を垣間見るような、不思議な魅力を感じる曲です。

「Deep Night」
 
落ち着いたムードの曲です。クラークのピアノ、ファーマーのトランペットも申し分ないのですが、
マクリーンのアルトは、時々聴こえる金属音が気になります。彼は、相当人気があるらしいのですが、
どうしても好きになれません。まあ、アルト・サックス自体を好きではないので、仕方ありません。

「Royal Flush」
 これも、ソニー・クラークの作品ですが、テーマが、イマイチあか抜けない感じで、気に入っていません。
アート・ファーマーも、特に気に入った奏者ではないのですが、このアルバムでの彼は、
どれをとっても素晴らしい出来栄えで、好感が持てます。

 哀愁に満ちた旋律に、独特なピアノ・スタイルが好まれて、彼の作品の中でも、
最も親しまれているアルバムです。ジャズ喫茶の想い出の無い私にとっては、懐かしくてたまらない、
ということはありませんが、流行った理由は、理解できます。

         
▽ 「Bennie Green」 1960年:
 Bennie Green(tb) Sonny Clark(p) Jimmy Forrest(ts) George Tucker(b) Alfred Dreares(ds)
  トロンボーン奏者のベニー・グリーンのアルバムです。

「Sometimes I'm Happy」
 トロンボーンと、テナー・サックスのハーモニーでは、カーティス・フラーと、
ベニー・ゴルソンが最高ですが、ここでも相性の良さを発揮しています。
 ミディアム・テンポのリズムが心地よく、スィング感があって心地よいナンバーです。
ソニー・クラークのピアノも、きらびやかなソロを展開しています。
チョッとユーモラスなリフが気になりまが、上品に仕上がっていると思います。

「Cool Struttin'」
 おなじみクラークのオリジナル・ナンバーです。
トランペットとアルト・サックスのものとは違って、グリーンのトロンボーンは、
ずいぶんのんびりした感じがしますが、ジミー・フォレストのサックスはなかなかメロディアスです。
クラークのピアノは、当然ファンキーで、ブルージーでが、ここでは、ややスィンギーに感じます。
ゆったりとしていて、くつろげるナンバーです。

「Solitude」
 ゴルソン・ハーモニーを想わせるユニゾンが魅力です。
グリーンのトロンボーンは、楽器の本来の音色を表現しているようで、好感が持てます。

「Sonny's Crip」
 しつこく繰り返されるテーマは、ブルース・フィーリングたっぷりです。
ジミー・フォレストは、ブローするタイプだと思いますが、スィンギーで嫌味のないプレイぶりです。
このアルバム全体を通して、ピアノの音が小さいのが難点ですが、クラークのシングル・トーンは、
スィンギーで、ブルージーです。グリーンのそれ以上に泥臭いトロンボーンが、印象的です。

「Blue Miner」
 私の好きな、クラークのオリジナル曲です。
トロンボーンの音色が、よく言えばファンキー、悪く言えば寝ぼけている感じです。
ジミー・フォレストのサックスのほうが、スィンギーで心地よいフレージングを聴かせます。
クラークのピアノも、軽快です。
全体としてよくまとまっている感じですが、58年のものより、心に響くことはありません。

「And That I Am So In Love」
 やや、スピード感のある展開で、躍動感があります。
クラークもメロディアスで、ウイントン・ケリーばりのスィングするピアノを聴かせてくれます。
 
■ 「Los Angeles 4」


 トロンボーンというと、
ニュー・オールリーンズ&ディキシーでは、キッド・オリーと、
ジャック・ティ・ガーデンが、またスィング・ジャズでは、
トミー・ドーシーと、グレン・ミラーが、すぐ想いおこされます。

 子供の頃、グレン・ミラーのトロンボーン姿がカッコよく
(実際は、グレン・ミラー役のジェームス・スチュアートでしたが)、
楽器がほしかった事を思い出します。

 カウント・ベーシー楽団で、レスター・ヤング、バック・クレイトン等と
活躍した、ディッキー・ウェルズの好プレイも忘れられません。
 元来トロンボーンは、私の好きな “くつろぎ” が、一番表現されやすい楽器で、
男らしく、野太く、ゆったりした音色は、魅力一杯です。

 モダン・ジャズでは、J.J.ジョンソンの超人的なプレイが有名ですが、
トロンボーンの特徴を生かしているとは思えず、あまり好きではありません。
チョッとファンキーなカーティス・フラーのほうが、親しみやすいものがあります。
でも、ベニー・グリーンを聴くと、ファンキーさも、ブルース・フィーリングも徹底していて、
真っ黒と言った感じですが、レイジーな味がよく出ているようです。


 モダン・ジャズでのトロンボーンは、他の楽器に比べて魅力が薄く、
このアルバムも、特に好み、というわけではありませんが、
ソニー・クラークの、意外とスィンギーな魅力を味わえます。

      
▽ 「Sonny Clark Trio」 1960年: Sonny Clark(p) Max Roach(ds) George Duvivier(b)

「Minor Meeting」 「Nica」 「Snnny's Crip」 「Blues Mambo」 
「Blues Blue」 「Junka」 「My Conception」 「Sonia」
 彼のベストと言われているアルバムです。
ソニー・クラークのピアノ、マックス・ローチのドラムと、甘さの無い鋭さが、全曲に感じられます。
恐らく、彼にとってもベスト・プレイなのでしょう。曲だけでなく、フレージングまでが、
バド・パウエルに良く似ていて、驚かされます。

 「My Conception」
 など、スロー・バラッドでの華麗なタッチは、彼の美意識を大いに感じるものがありますが、
パウエルの高貴な音色とまではいきません。

 
私にとっては、あまり好きなアルバムではありません。彼は、バド・パウエルとも共演した、
人気・実力とも一流の、マックス・ローチを迎えてのセッションで、かなり気合がはいったと思います。
でも、リスナーの私としては、なじみの無い、オリジナル曲ばかりというのも、
愛着の湧かない原因となっています。

 
■ 「Los Angeles 5」


▽ 「A Swingin' Affair」 1962年: 
Dexter Gordon(ts) Sonny Clark(p) Butch Warren(b)
Billy Higins(ds)

 デクスター・ゴードンの小手先ではない、
メロディックなテナー・サックスを支える、
ソニー・クラークのピアノは見事で、
控えめながら、随所に彼の美意識が感じ取れる、素晴らしい作品です。

「Soy Califa」
 エキゾチックな曲で、元気なゴードンの、リズミカルで、明るいプレイが展開されますが、
クラークのスィンギーで、美しいピアノ・ソロが、とても魅力的です。

♪ Don't Explain」
 すべてのジャンル、曲の中でも、トップ・クラスにランクされる、私にとっては、大好きな演奏です。
優しさ、暖かさに溢れた、デクスター・ゴードンのテナー・サックス、それを支える、ソニー・クラークの、
心に響くフレージングと音色。切ないほどの感動を呼び起こしてくれる名演奏です。

「You Stepped Out Of A Dream」
 ラテンのリズムに乗って、ゴードンに続く、クラークのピアノ・ソロもスィンギーで、
美しいシングル・トーンを披露します。彼の多才さを感じる好演です。

「Until The Real Thing Comes Along」
 スローなスタンダード・ナンバーだけに、安心して、くつろいだ雰囲気に浸れます。
ここでのデクスターの、優しく語りかけるようなテナーも見事です。
クラークの、美しい旋律が、この曲をさらに甘く、優雅にしてくれます。
サイドにまわった時の、ソニー・クラークの味は、ひときわ魅力的です。

「Mcsplivens」
 陽気なメロディの曲です。
クラークもリズミカルに、曲の雰囲気を楽しんでいます。ブルージーで、
ファンキーだけが、彼の特徴だと思っていると、大間違いということを知らされます。

 興味あるアルバムですが、
ビリー・ホリディの曲 「Don't Explain」 この1曲だけで、
このアルバムには、十分すぎるほどの価値があります

▽ 「Go!」 1962年: Dexter Gordon(ts) Sonny Clark(p) Butch Warren(b) Billy Higins(ds)
 「A Swingin' Affair」 の2日前に録音されたものです。
同じメンバーで、堂々とした、デクスター・ゴードンのプレイや、
ソニー・クラークの、歌心豊かな脇役ぶりが堪能できます。

「I Guess I'll Hang My Tears Out To Dry」 「Where Are You」 など、バラッドでのクラークの、
美しい音色は、短い中にも、豊かな情感が感じられます。


 
ソニー・クラークは、「Cool Struttin'」 での、アーシーで、ブルージーなだけの、印象が強いのですが、
私の評価は、バド・パウエルゆずりの、バップを超えたテクニックをもち、独自の美意識が備わった
、一流のアーティストだというものです。
スタイルは違うものの、チョッと、セロニアス・モンクに似た印象をもっています。



 レッド・ガーランド(リラックス感がたまらないピアニスト)
  

■ 「Red Garland」


マイルス・デイヴィスのオリジナル・クインテットより、
トリオでのプレイに、より愛着があります。
ピアノ・トリオだからこそ味わえる、くつろぎ、心地よさが、
レッド・ガーランドのピアノにはあります。
 

 ▽ 「At The Prelude Red Garland」 1959 :
Red Garland(p) Jimmy Rowser(b) Charles "Specx" Wright(ds)

 「Satin Doll」 「Perdido」 「There Will Never Be Another You」 「Bye Bye Blackbird」 
「Let Me See」 「Prelude Blues」 「Just Squeeze Me」 「One O'clock Jump」 「Marie」 
「Bohemian Blues」 「A Foggy Day」 「Mr. Wonderful」
 
 私の大のお気に入りのライブ・アルバムです。
 シングル・トーンの、玉が転がるような美しい音色、ブロック・コードのダイナミックさ、
安心して聴いていられる心地よさがあります。
クラブで実際に聴いているような、大人のムード、リラックス感が伝わってきます。
ピアノという楽器が、一番シャレているな、と思わせる典型的なアルバムです。

 ワン・パターンのような彼の奏法は、逆に、やすらぎを与えてくれますし、ピアノ・トリオでありながら、
決して退屈しないメリハリが魅力です。なじみの曲ばかりで、ほとんど、すべての曲が気に入っています。
 
■ 「Los Angeles 6」


▽ 「Groovy」 1957 :
Red Garland(p) Paul Chambers(b) Arthur Taylor(ds)

 「C Jam Blues」
 彼の代表曲といわれています。
確かに、ピアノ・トリオの作品の中では、
最も、グルービーで、ブルージーといえる最高の曲、
最高のプレイです。ベースのチェンバースも、実に効果的で、モダン・ジャズに浸るには
最適なナンバーといえます。

「Gone Again」
 スロー・テンポの美しい音色が見事です。
ブロック・コードによる、カクテル・サウンドが楽しめます。

「Will You Still Be Mine?」
 アップ・テンポで、はずむようなピアノが素晴らしいナンバーです。
チェンバースのアルコ・ソロにはチョッとまいりますが…。 

「Willow Weep For Me」
 大好きな曲ですが、ガーランドは、力強くプレイしています。
この迫力が、トリオでも十分楽しめる要因です。
シングル・トーンとブロック・コードの使い分けが、曲に変化と彩りを与えています。 

「What Can I Say」
 こういう軽い調子のテンポは、彼の独壇場といえます。
ベース、ドラムも心地よいリズムを刻み、ピアノ・トリオの素晴らしさを味わえます。
チェンバースは、よほど弓で弾きたいんだろうな、思わせる熱演です。
 あまりすきではないのですが。

「Hey Now」
 これも、玉を転がすようなガーランドのピアノを楽しめます。
ベースが、気持ちよくミディアム・テンポを刻み、
シングル・トーンから、徐々に、ブロック・コードへ移る定石は、ここでも健在です。
 
 この2枚のアルバムは、時代を超えて、ジャズの魅力を伝えてくれます。
どれほど、クリエイティブな演奏をしても、優れたテクニックを持っていても、
聴くものに感動を与えるかどうかは、別問題です。
 レッド・ガーランドのピアノは、定石だからこその、安心感、くつろぎ感に満ちていて、大好きです。

 マイルス・コンボに所属した、
ピアノのガーランド、ウイントン・ケリー、テナー・サックスのソニー・スティット、ハンク・モブリー、
アルト・サックスのキャノンボール…と、私の好きなプレイヤー達は、
自己革新を目指すマイルス・デイヴィスとは基本スタンスが違います。
私は、ハード・バップ時代の、マイルス・デイヴィスしか好きではありませんし、
レッド・ガーランド他のアーティストは、自分のスタイルを通した故に、気に入っているのです。



 
ボビー・ティモンズ(ブレイキーと、キャノンボールに、成功をもたらしたピアニスト)
 
 
■ 「Bobby Timmons」


 好きなピアニストは、何人もいますし、
好きになった原因もさまざまです。
 ボビー・ティモンズについては、
当然、アート・ブレイキーや、キャノンボール・アダレイの
グループでの活躍で知りました。
彼が果たした、音楽的役割を実感したのは、
随分後になってからのことですが…。

 ハード・バップのなかでも、よりファンキーで、ソウルフルな、これらのグループの音楽に接して、
私のモダン・ジャズ好きが始まったといっても過言ではありません。
 正確には、ホレス・シルバーのプレイの方が先ですが、モダン・ジャズの魅力=黒人のファンキーで、
スィンギーで、カッコイイ音楽。というイメージが出来上がったのは、これらのアーティストのおかげです。

 ホレス・シルバーと、ボビー・ティモンズは、マイルス・デイヴィス以上に、
私には重要なアーティストということになります。

▽ 「Moanin' : Art Blakey and The Jazz Messengers」 1958年: 
 ベニー・ゴルソンのところで触れましたが、このアルバムには、ゴルソン、ティモンズという、
ジャズ・メッセンジャーにとっては、かけがえのない二人が、スコアを提供し、且つ名演奏を聴かせています。

 「Moanin'」
 ジャズ・メッセンジャーズを、有名にした決定的ナンバーです。
作曲者のボビー・ティモンズが、アート・ブレイキーほど有名にならなかったのは、今思うと不思議です。
当時、誰もが口ずさむほど、日本で流行った曲なのに…。
 モダン・ジャズが、これほどポピュラーだったことは、それ以前にも、以降にも無い事です。


▽ 
「At The Five Spot Cafe : Kenny Burrell」 1959年: 
「Birk's Works」 ・「Lady Be Good」 ・「Lover Man」 ・「Swingin'」
 私の好きな、ケニー・バレルのアルバムも、ティモンズの、ファンキーなピアノがあってのことです。

▽ 「The Cannonball Adderley Quintet In San Francisco」 1959年:
 julian Cannonball Adderley(as) Nat Adderley(cor) Bobby Timmons(p) Sam Jones(b) Louis Hayes(ds)
 ジャズ・メッセンジャーズでのティモンズ、ホレス・シルバー・クインテットのメンバーのルイ・ヘイズと、
ハード・バップを代表するメンツが勢ぞろいのアルバムです。

♪ 
「This Here」
 ボビー・ティモンズによる、ゴスペル調の曲です。
 キャノンボール・アダレイ、ナット・アダレイのファンキーなフレージングが、見事ですし、
その後にくるボビー・ティモンズのシングルから、ブロック・コードに移るダイナミックなピアノ・ソロ、
バックの効果的なリフもあって、いやがうえにも、ライブの熱い雰囲気を盛り上げます。
 曲の良さ、演奏の良さと、文句無く、大のお気に入りナンバーです。

「Straight, No Chaser」
 セロニアス・モンクの名曲です。
キャノンボールのアルト・サックスは、メロディアスで、スィンギーなプレイを聴かせ、
一流なアーティストである事を証明しています。
 ティモンズは、この曲にゴスペル・テイストを吹き込んで、斬新な解釈をしています。
ダイナミックで、華麗なブロック・コードでのピアノは、ワン&オンリーの世界です。

 キャノンボール・アダレイ・クインテットの、成功アルバムであると同時に、私の、好きなアルバムです。
ボビー・ティモンズが、この成功に、決定的な影響を与えた事は確かです。
 
■ 「Florida 1」

▽ 「Them Dirty Blues」 1960年:

Julian Cannonball Adderley(as)
Nat Adderley(cor) Bobby Timmons(p)
Sam Jones(b) Louis Hayes(ds)

 このアルバムは、ナット・アダレイ 作曲:
「Work Song」 で有名になりました。

「Dat Dere」
 ボビー・ティモンズの曲で、実際は、「Work Song」 より優れた曲だと思います。
ティモンズのスリリングな曲作りに、アダレイ兄弟の、歯切れの良い2管が、応えているといった感じで、
ソウルフルで、リズミカルな魅力一杯です。

▽ 「This Here」 1960年: Bobby Timmons(p) Sam Jones(b) Jimmy Cobb(ds)
 ボビー・ティモンズのトリオ・アルバムです。

「This Here」
 ファンキーな魅力に溢れた名曲ですが、ピアノ・トリオでも、退屈させない、十分な迫力が伝わってきます。

「Moanin'」
 
さすがに、トリオでは、ジャズ・メッセンジャーズでのものより、おとなしい感じです。
でも、ブロック・コードによる、ゴスペル調の華麗なピアノは、ワン&オンリーの世界です。

「Lush Life」
 
クラシックを想わせる荘厳なプレイです。上質な感性をもったピアニストである事を覗わせます。

「The Party's Over」
 チョッと、ウイントン・ケリーを想わせる、軽快なタッチのティモンズが味わえます。
ポピュラーな曲でのスィングする彼のプレイも、なかなかのものです。

「Prelude To A Kiss」
 
ラブ・バラッドを、格調高いピアノで聴かせます。彼独特の、リリシズムが伝わる好演です。

「Dat Dere」
 
キャノンボール・アダレイ・クインテットでの人気ナンバーです。
アーシーで、チョッと濁った感覚が、何とも言えない魅力です。
ブロック・コードでの華麗なテクニックは、ここでも健在で、曲の良さとともに、ティモンズの代表的な名演です。

♪ 
「My Funny Valentine」
 アルバムの中で、最も、気に入っている曲です。彼の美意識が、十分伝わってくる、素晴らしいプレイです。
曲の良さを少しも損なうことなく、彼独特の世界を作り出しています。

「Come Rain Or Come Shine」
 ティモンズのの力強く、特徴的なスタイルは、このようなスタンダード・ナンバーでも、十分発揮されており、
曲の魅力を損なう事はありません。

「Joy Ride」
 ややスピード感のある、オリジナルの、バップ・ナンバーですが、メリハリのあるシングル・トーンと、
ドラムのスリリングなやりとりが聴けます。
  
■ 「Florida 2」
▽ 「Soul Time」 1960年: 

Bobby Timmons(p) Blue Mitchell(tp)
Sam Jones(b) Art Blakey(ds)

 ジャズ・メッセンジャーズ、
キャノンボール・アダレイ・クインテット、
ホレス・シルバー・クインテットのメンバーが揃いました。
ティモンズのオリジナル曲を集めたアルバムです。
 他のグループでのプレイと違って、ティモンズもやや押さえ気味で、
全体としては、軽快な仕上がりといったところです。

「Soul Time」
 軽快なテンポにのって、ミッチェルのトランペット、ティモンズのピアノも、スィング・フィーリング一杯です。
軽く流れてしまいがちなこのような曲に、アート・ブレイキーのドラムが、アクセントをつけています。
さすがの存在感といった感じです。

「So Tired」
 アーシーで、魅力的な曲です。
ミッチェルのトランペットに、このリズム陣だと、ホレス・シルバーなら、もっとエキサイトするのでしょうが、
ティモンズは、ファンキーの中にも、美しい音色をちりばめて、ハード・バップに、落ち着きと、品位を与えています。

「The Touch Of Your Lips
 マイルス・デイヴィスを想わせる、トランペットをフィーチャーした、美しいバラッドです。
このような曲での、ティモンズのピアノは、上品なシングル・トーンで、抑えたリリシズムを表現しています。

「S'posin'」
 スィンギーなティモンズのピアノ、ミッチェルのトランペットを支える、ブレイキーのドラム、
サム・ジョーンズのベースが見事です。気心の知れた、グループの一体感が魅力的なナンバーです。

「Stella B.」
 
ブルー・ミッチェルは、ドナルド・バードや、アート・ファーマーの後を継いだ、ホレス・シルバークインテットの
重要なメンバーだけに、優れたテクニックと、フィーリングを持ち合わせたプレイヤーで、
ここでも、十分魅力を発揮しています。
ピアノからベースソロへと移り、特徴的なトランペットによる、テーマへもどるという、ファンキーな曲です。

「You Don't Know What Love Is」
 ブルージーなバラッドでの、ティモンズは、華麗で、時に荘厳な雰囲気の音色が特徴です。
クラシック・ピアニストを想わせる見事なテクニックです。

「One Mo'」
 ファンキーで、スィンギーな曲です。ブレイキーのドラムは、主張しすぎて嫌いという人もいるようですが、
単調になりがち曲に、アクセントを与えるという点で、彼のプレイには、好感をもっています。
長々とソロ・ワークをされるとチョッと困りますが…。

 
彼の魅力は、ゴスペルを感じさせる、アーシーさに、センスの良さがミックスされていて、
他に比較するアーティストがいない、独特の、個性的な才能にあります。

 
「My Funny Valentine」 などでの、独自の解釈による、原曲のイメージを超えるような見事なプレイと、
「Moanin' での、ファンキーの極めつけのようなプレイが同居する、不思議な、そして、多才なピアニストです。
 
 ■ 「Florida 3」  

 ソニー・クラークのブルージーさと違うところは、
彼が、教会音楽にかなり影響を受けているからでしょうが、
ホレス・シルバーの明るいファンキーさとも違い、
ウイントン・ケリーのように、スィンギーさが前面に出るタイプでもなく…、
やはり、ワン&オンリーのプレイヤーなのです。

 あれほどの、ヒットを飛ばし、これだけの技術をもったプレイヤーにしては、
それほど、有名にならなかったことが、理解できないところです。

   
 その他のピアニスト
 

 レイ・ブライアント

▽ 「Ray Bryant Alone At Montreux」 1972年: 
「Gotta Travel On」 「Blues #3 : Willow Weep For Me」 「Cuba No Chant」 「Rockin'Chair」 「After Hours」 
「Slow Freight」 「GreenSleeves」 「Little Susie」 「Until It's Time For You To Go」 「Blues #2」 「Liebestraum Boogie」
 
 ピアノ・ソロですが、素晴らしい迫力です。トリオでも退屈するのに、ソロで、聴くものを飽きさせない見事なアルバムです。
彼のアルバムでは、これが一番だとおもっています。

▽ 「Work Time : Sonny Rollins」 1955年ロリンズの歌心が満喫できるアルバムで、
手堅いブライアンとのピアノ、ジョージ・モローのベース、マックス・ローチのドラムが踊っています。
 
■ 「Florida 4」

▽ 「Ray Bryant Trio」 
1957年もモダンなスィング感があり、ハード・バッパーとは、
違った顔がうかがえます。
 
彼のピアノ・スタイルを嫌いではありません。
いつか、もっとしっかり聴く時があるかもしれませんが、
今のところ優先順位として、上位ではない、といったところです。


 
 ケニー・ドリュー

▽ 「The Kenny Drew Trio」 1956年: Kenny Drew(p) Paul Chambers(b) Philly Joe Jones(ds)
 バド・パウエルばりの元気の良いプレイが聴けるアルバムで、彼のトリオでの、ベスト・プレイだと思います。

▽ 「Dexter Gordon : Daddy Plays The Horn」 1955年、「Blue Train : John Coltrane」 1957年 などで、
最高のファンキー・ムード溢れる好演をしていて、気に入ったプレイヤーでした。
 ところが、とんだ思い違いのプレイヤーということを知らされました。

▽ 「By Request」 ▽ 「Dream」 期待しつつ、結果的に間違って買ってしまった80年代のアルバムです。
ロマンティックかデリケートか知りませんが、何と軟弱なこと。だから、現代のジャズに期待が出来ないのです。
 
■ 「Florida 5」

 
彼は、50年代のプレイに、相当魅力があります。
他のプレイヤーと同様、あまり時代の新しいものを
追いかけなければ良かったと、後悔しています。

  


 トミー・フラナガン

 「Moods Ville」 1960年 Tommy Potter(b) Roy Haynes
 スタンダード・ナンバーでの、このアルバムが、彼のベストでしょう。しっとりしたピアノ・トリオの魅力に溢れています。
「You Go To My Head」 「In A Sentimental Mood」 気品のある音色、歌心と欠点が見当たりません。
それが退屈するのですが…。

▽ 「Overseas」 1957年: Tommy Flanagan(p) Wilbur Little(b) Elvin Jones(ds) 
 エキゾチックな曲、スィンギーで、元気一杯のフラナガン。エルビン・ジョーンズのブラシ・ワークも、特徴的で、
フラナガンのベストといわれていますが、チョッとうるさい感じで、好きではありません。
トミー・フラナガンの、本来の姿は、「Moods Ville」 のほうにあると思います。

▽ 「Eclypso」 エルビン・ジョーンズとの再会セッションという事ですが、同様に、
ピンとこないアルバムで、2度と聴いていません。
 
■ 「Florida 6」

  
嫌いではないのですが、
彼は、サイドメンとしての実績のほうが、数段優れており、
トリオでは、あまり気に入ったものがありません。


 

 
ハンク・ジョーンズ

▽ 「Blue And Sentimental」 1977/1979年:
 Hank Jones(p) Geoge Duvivier(b) Oliver Jackson or Alan Dawson(ds)
 レイ・ブライアント、トミー・フラナガン同様、自分のスタイルを大切にするピアニストは、嫌いではありません。
その中でも、群を抜いて、自分を通しているプレイヤーが、ハンク・ジョーンズでしょう。
「Dat Dere」
 ティモンズのゴスペル・ナンバーでも、自分の曲にしてしまっています。

「A Foggy Day」
 スタンダードでの、自由自在なテクニックはスィンギーな歌心一杯です。

「Hank's Blues」 「Blues In My Heart」 「Blue And Sentimental」
 このアルバム・テーマである、ブルース・ナンバーを弾いても、決してファンキーな感じではなく、上品に仕上げています。

 「Somethin' Else」 1958年:
 Miles Davis(t) Cannonball Adderley(as) Hank Jones(p) Sam Jones b) Art Blakey(ds) という永遠の名盤があります。
彼の、スィンギーで、落ち着いたピアノ・スタイルは、ほとんど変わらない見事なものがあります。

 
彼は、何十年も、スタイルが変わらない、優れたピアニストですが、それだけに、トリオでのものは、
通して聞くにはチョッとしんどいところです。


      
 
エロール・ガーナー

▽ 「Contrasts」 1954年: Erroll Garner(p) Wyatt Ruther(b) Eugene Fats Heard(ds)
 懐かしい「Misty」 のオリジナル・プレイが聴きたいだけで、購入したアルバムです。

 トリオである事が不思議なほど、ダイナミックで、メリハリのある演奏が聴けます。
彼は、リズムに対して、右手のメロディがチョッと遅れる、いわゆるビハインド・ザ・ビートによって、
独特のスィングを生んでいる、とライナー・ノーツには書いてあります。

 「Misty」 は、ジョニー・マティスのヴォーカルが、今では最高だと思っていますが、さすがに、
本家のピアノは、きらびやかで、しっとりとした味がたまりません。この演奏を、子供の頃聴いていたんだな〜。
と懐かしさがこみ上げます。
 
他の演奏も素晴らしいのですが、1曲だけで十分満足しています。
 
■ 「Florida 7」

他にも、CDで集まったピアニストは、何人もいますが、
聴き返す事はあまりありません。
私の場合、好きな音楽分野が多岐にわたっているため、
特にお気に入りでない限り、
順番がまわってこないというのが正直なところです。



  
〜スモール・コンボへ続けていきたいと思っています〜

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