〜 ハード・バップのリーダー達 〜 

  

 

 モダン・ジャズは、スモール・コンボによるプレイが特徴的で、
優れたリーダーによる、有名なアルバムは沢山あります。
でも、私の好みはかなり限定されています。
 既に触れた、キャノンボール・アダレイを除くと、マイルス・デイヴィス、ブラウン&ローチ、アート・ブレイキー、
そして一番のお気に入り、ホレス・シルバーぐらいが、ハード・バップを代表するコンボのリーダーとして、
認められるぐらいです。
演奏スタイル、参加メンバーの好みについても、こだわりがありますから、好きなアルバムも、
実際には、かなり少なくなってしまいます。



 マイルス・デイヴィス (ジャズの帝王と言われて)
 

■ 「Miles Davis」

 私の好きなジャズは、コード進行に基づいて、
きちっとしたリズムをバックに、曲の魅力を増幅するような、
歌心溢れたアドリブ・プレイです。

ブルース・フィーリングのあるものは好きですし、
スタンダード・ナンバーも、安心して聴けます。それに、スィング感の無いものは苦手です。
 モードとか、フリーなど、メリハリの無いものは全く嫌いですから、私の聴けるマイルス・デイヴィスは、
オリジナル・クインテット時代までのものになってしまいます。 

 聴く側にとっては、クリエイティビティは関係なく、単純に心地よさ、くつろぎ感があれば十分です。

▽ 「Volume One Miles Davis」 1952/1954
「Yesterdays」 「How Deep Is The Ocean」 
伸びやかな音色と、クールなリリシズムが感じられます。
でも、それだけです。

「Well You Need't」 
モンクの曲をホレス・シルバーが、彼らしいスタイルで弾いているところに興味があります。
パーシー・ヒースのベース、アート・ブレーキーのドラムと、メンバーは申し分ないところですが、
今ひとつ盛り上がりに欠けます。
  
52年の録音のものは、魅力ありません。
後半の6曲に、ファンキーなホレス・シルバーのピアノが印象的というだけで、
マイルス・デイヴィスのトランペットは、間延びした感じで、ピンときません。


▽ 「Walkin'」 1954
 「Walkin'」 
ブルージーな感じが素晴らしく、気に入っているナンバーです。
メンバー全員納得できるソロを聴かせていますが、特に、ラッキー・トンプソンのサックスは独特の、
優しく暖かい音色で最高です。マイルスのリフの感じ、ホレス・シルバーのファンキーなピアノなど、
私好みで申し分ない出来栄えです。

「Blue'n Boogie」 
スピード感に溢れた名演奏です。マイルスのトランペットも歯切れがよく、
ラッキー・トンプソンのテナー・サックスも抜群です。
続く、ホレス・シルバーの長いソロが、ファンキー・ムード一杯で、彼が、このアルバムの、
中心的役割を果たしていた事が想像されます。ハード・バップの典型といった感じで気に入っています。

「Solar」 
マイルスの曲ですが、あまり魅力を感じません。
どうしても、ミュートでの抑圧された音色が重くて、好きになれません。

「You Don't Know What Love Is」 こんなラブ・バラッドでも、マイルスのトランペットの印象が、
昔の 「死刑台のエレベーター」 を連想させてしまいます。チョッと憂鬱な感じが、かったるいところです。

「Love Me Or Leave Me」 
同じスタンダードでも、この方がスィングします。
ただ、ミュートが良いのか疑問です。ハッピーなシルバーのピアノに救われている感じです。

 
このアルバムは、「Walkin'」  「Blue'n Boogie」 で十分です。
ホレス・シルバーのファンキーさが、曲に彩りを与えているからこそ、素晴らしいのですが、
ラッキー・トンプソンのテナー・サックスも、豊な表現で厚みを増しています。
J・J・ジョンソンも、レイジーな感じが良く出ています。
マイルスは、オープンで典型的なハード・バップを熱演していて、大変気に入っています。
パーシー・ヒースのベース、ケニー・クラークのドラムと、かなり贅沢なメンツを集めた録音です。

 ラッキー・トンプソンは、コールマン・ホーキンスより、ずっとスムーズで、暖かい音色ですし、
レスター・ヤングの、ふわふわっとした感じでもない、独特の魅力です。
彼の、リーダー・アルバムで、あまり良いCDを持っていないのが残念ですが、
彼の音色には、相当魅力があります。

 
■ 「New York1」


▽ 「Baggs Groove」 1954 

 「Bags' Groove」 マイルス・デイヴィスと
セロニアス・モンクの確執による、
緊迫感の中での名演奏として
名高いナンバーです。
それはそれでジャズの楽しみ方としては面白いところです。
 マイルスの歌心は、豊で見事ですし、続くミルト・ジャクソンのヴァイブも、スィング感のある心地よさです。
彼のブルース・フィーリングに満ちたテクニックは完成されています。
モンクのピアノは、別に、マイルスが嫌うには当たらない、美しい旋律です。
パーシー・ヒースのベース、ケニー・クラークのドラムが、最高のリズムを刻んでいます。
 曲としてのまとまり、ソロイストの技術の高さ、申し分ない演奏です。

「Air Gin」 ここからが、昔聴いた憶えのある曲です。
ソニー・ロリンズの曲で、マイルスもスィンギーに高らかに吹きまくっていますし、
ロリンズの自由奔放なアドリブは、野太いサックスの音色とともに、堂々として心地よい響きです。
メリハリの利いたリズム陣のプレイによって、まとまりのあるナンバーとなっています。

「Oleo」 ミュートで聴かせていますが、やや窮屈な感じがします。
ロリンズのサックス、ホレス・シルバーの明るいピアノが、曲に変化を与えて軽快なものにしています。
ベースのパーシー・ヒース、ドラムのケニー・クラークが、実に心地良い限りです。

「But Not For Me」 これも、ミディアム・テンポでスィング感はあります。
トランペットより、サックスのソロのほうが、ずっとスムーズで、陽気な明るさに満ちています。
当然シルバーのピアノは、ファンキーでゴキゲンです。

♪♪ 「Doxy」 
私が気に入った最初のモダン・ジャズの曲です。
このCDを買って、再びめぐり合えた時は、感激ものでした。
マイルスには関係なく、親しみやすいメロディと、ホレス・シルバーの、ファンキーなピアノだけが、
当時気に入っていたのです。
 今聴くと、意外と短い曲で、ピアノ・ソロもそれほど長くないことに、驚かされます。
ソニー・ロリンズの豊な才能と、自由なアドリブの見事さ、シルバーのいつ聴いても心地よい
ファンキー・ムードに酔わされます。
何ともいえない絶妙なテンポも、最高にくつろぎを感じます。

■ 「New York 2」

▽ 「Miles Davis And The Modern Jazz Giants」
1954 Miles Davis(tp) MiltJacson(vib)
Thelonious Monk(p) Percy Heath(b) Kenny Clarke(ds)

 このアルバムは、「Bags' Groove」 と同じメンバーです。
ライナー・ノートが、演奏を聴く上で、非常に役立っている好例です。
録音時の状況が目に浮かび、興味がそそられます。
このアルバムは、二人に焦点が当たっていますが、
私は、マイルスやモンクより、ミルト・ジャクソンの、ヴァイブのプレイの素晴らしさのほうが印象に残ります。


「The Man I Love」 これを聴くと、ジャズが、メンバーのアドリブで成り立っているという事が納得できます。
最後にミュートに変えるシーンも、生々しいのですが、この曲が素晴らしいのは、
オープンでのトランペット演奏のおかげだと思います。ミルト・ジャクソンのヴァイブと良くハモっていますし、
ともすれば、けだるくなりがちなマイルスのプレイを救っています。2テイクありますが、どちらも同じレベルでしょう。

「Swing Spring」 曲に馴染みがないものの、ミルト・ジャクソンのヴァイブのスィンギーなところ、要所を決める、
モンクのピアノも効果的です。
 ただ、トランペット・ソロの時にモンクがプレイしないのは、ここでも特徴ですが、マイルスのあとのモンクのソロは、
彼の特徴を良くあらわしています。長い演奏ですが、曲に魅力を与えているのは、私にとってはヴァイブの音色です。
 
「Bemsha Swing」 おなじみのモンクの曲ですが、もともとあまり好きなメロディではありません。
ゆったりしたテンポのトランペットに、ここではピアノがバックをつとめています。
流れるようなマイルスのトランペット、ヴァイブの心地よい響きに乗って、
モンクも、彼独特のスィング感覚でつないでいます。

「'Round About Midnight」 1956 これだけが、オリジナル・クインテットの演奏です。
これは、55年の録音のほうが、コルトレーン、マイルスともに優れたプレイです。
というより、あのアドリブで聴きなれているので、ここで違うものを聴いても、
違和感を憶えてしまうというのが正直なところです。
 「The Man I Love」 が素晴らしいといったところで、
他は、ミルト・ジャクソンのヴァイブに聴くべきものが多いといった感じです。
「Bags' Groove」 のほうが想い入れもあって気に入っています。
 ミルト・ジャクソンは、MJQのレコードを、昔聴きましたが、清涼感と上品な感じが、
とてもジャズという感覚はありませんでしたし、今聴いても、少しも心打つものがありません。
でも、MJQを離れると、楽器の淡白さを超えて、ブルース・フィーリング溢れるプレイを展開していて
興味深いものがあります。

 
■ 「New York 3」

▽ 「'Round About Midnight」 1955
 「'Round About Midnight」 
マイルス・デイヴィス・クインテットの中では、
かなり気に入ったナンバーです。
トランペットという楽器の魅力を感じる、数少ない作品ともいえます。
マイルス・デイヴィスだけでなく、コルトレーンのテナーも、
この曲ではどこにも破綻がなく、スムーズです。
セロニアス・モンクの曲ですが、ここでのプレイがベストだと思います。
トランペットの、切ないばかりの音色は、
しみじみとした情感が伝わってきて、見事です。続くコルトレーンのサックスは、
対照的に男らしく、この曲に適度な変化を与えてくれます。全体の構成も素晴らしく、
魅力に溢れた名演奏です。

「All Of You」 おなじみの曲を、軽快にミュートで聴かせます。
コルトレーンもスムーズですが、チェンバースのベースの規則正しいリズムが、心地よい響きです。
ガーランドの玉を転がすような、シングルトーンは、安心して聞いていられ、
全体としてよくまとまった演奏です。

「Bye Bye Blackbird」 
これもおなじみの曲です。マイルスも長いソロを気持ちよく歌っています。
ところが、コルトレーンがいけません。曲の解釈以前に、未熟な技量が気になってどうしようもありません。
ガーランドのブロック・コードのきらびやかさを聴くにつけ、残念なメンバー構成です。

「Tadd's Delight」 
ややアップ・テンポのリズムに、オープンでのマイルスのトランペット、コルトレーンと続きます。
どう聴いても、サックスだけがハモりません。ロリンズあたりだったら随分違った印象だろうに〜と思います。

「Dear Old Stockholm」 
この曲は、マイルスがよく演奏しますが、あまり好きではありません。
ジャズの香りがあまりしないからですが、チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズ、
ガーランドのプレイは、若いけれど、完成されています。
コルトレーンの一生懸命な事は理解できます。

 
私にとっての、マイルス・デイヴィスのベスト・アルバムは、
「Somethin' Else」 「'Round About Midnight」 です。
彼のリリシズムが、優れた曲、優れたプレイによって、最高に表現されたものだと思っています。

▽ 「Cookin'」 1956
♪ 「My Funny Valentine」 
このアルバム1番の、そして、マイルス・デイヴィスの作品でもトップ・クラスのナンバーです。
コルトレーンがいないので、優しく、上品な出来栄えです。

「Blues By Five」 
ブルースの香りのする曲ですが、マイルスの出来は良くありません。
相変わらずのコルトレーンのサックスに続く、ガーランドのピアノでほっとする感じです。
ベースもドラムも、見事で、リズム陣だけが素晴らしい出来栄えのナンバーです。

「Airegin」 
アップ・テンポをオープンで、ブリリアントにマイルスがソロをとります。
コルトレーンも負けじと、吹きまくりますが、ここでの彼は、見事なアドリブを聴かせます。
彼のスムーズなテナー・サックスは、数えるほどしかありませんが、これが、その数少ないプレイです。

「Tune Up/When Light Are Low」 
マイルスのオリジナルだけあって、彼のトランペットは、スィンギーで、
驚異的なテクニックを披露しています。ここでのサックスも上等といえます。
コルトレーンは、本当は上手かったのかもしれないと、疑うようなスムーズさです。
 このアルバムでの 「Airegin」 「Tune Up」 は、コルトレーンを安心して聴いていられます。
「My Funny Valentine」 のマイルスが良いところから、
このアルバムが、まあ気に入っているといえます。

 
■ 「New York 4」

▽ 「Relaxin'」 1956
「If I Were A Bell」 マイルス・デイヴィスの
ミュート・トランペット、ガーランド、チェンバース、
フィーリー・ジョーの小気味よいリズムと、
チョッと上品な雰囲気を、
コルトレーンのたどたどしいサックスが壊してくれます。
レッド・ガーランドのピアノは、
相変わらず素晴らくスィンギーなだけに残念です。

「You're My Everything」 こういったスロー・バラッドでは、コルトレーンも大した破綻も無く、
曲全体の雰囲気に溶け込んでいる感じです。

「I Could Write A Book」 おなじみのナンバーを聴くのは安心です。サックスが邪魔です。
曲の雰囲気より、アドリブに一生懸命という姿勢が、聴き手を疲れさせます。
シャレたスィング感覚が他のプレイヤーには溢れています。

「Oleo」 アップ・テンポが心地よいナンバーです。
全体の構成も面白く、サックスが違和感を感じる事がありません。
サックスから、ガーランドの低音でのピアノ・ソロ、ベースの小気味よいリズムそして、
マイルスのトランペットとこのアルバムでは、一番の出来だと思います。

「It Could Happen To You」 
ジューン・クリスティのヴォーカルで、大好きなナンバーですが、
コルトレーンのテナー・サックスで、台無しにしてくれました。
マイルス、ガーランドの歌心は十分伝わってきます。

「Woody'n You」 
ガレスピーの作品ですが、こういった曲をあまり好まない私にとっては、ライナーに、
コルトレーンのサックスが良かったなどと書いてあっても、ピンときませんし、
大して上手いとも感じません。
 
私が、トランペットより、テナー・サックスが好きだといっても、限度があります。
スムーズな流れが、いつ滞るか気になって、心が癒されるどころではありません。

 
▽ 「Something Else / Julian Cannonball Adderley」 1958
♪♪ 「Autumn Leaves」 
ここでのマイルス・デイヴィスは、ミュート・トランペットが、最も効果的だと思わせる名演奏です。
 文句なしにこの曲のベストでしょう。もっとも、私が、この曲をベストだと決定付けている理由は、
マイルスの“静”に対する、キャノンボールの“動”というコントラストが見事だからです。
マイルス・デイヴィスは、恐らく、我が、レスター・ヤングの影響を、かなり強く受けていると思いますが、
ミュートでのトランペットは、暖かさ、柔らかさが無いだけに、侘しい響きがあります。
サックスがないと私には、物足りません。

▽ 「Kind Of Blue」 1959
「So What」 
これが、素晴らしいといわれているので、私のマイルス・デイヴィスのアルバムもここまでです。
何が良いのかチッとも解りません。だらだら歯切れの悪い、メリハリのないメロディの連続。
 もっとも、 「Milestones」 を聴いた時、折角キャノン・ボールもいるのに、つまらない演奏で、
もはやここまでと思ったのですが、ここでは、ウィントン・ケリーまで、とられてしまいました。
 
 
スタン・ゲッツもマイルス・デイヴィスも、レスター・ヤングの音楽を研究して、
クール・ジャズとやらを始めたのかもしれませんが、
私には、これらはチッとも心に響いてきません。
したがって、マイルスのクール・ジャズも、全く興味が有りませんし、
モード以降も興味がないということで、一般的に、モダン・ジャズの帝王といわれる彼も、
私にとっては、ほんのチョッとの期間しか、聴けるアルバムがありません。
まあ、私のモダン・ジャズ・エイジは、ほんの数年間しかありませんから、
マイルスに限った事ではありませんが…。
 

■ 「Lee Morgan」


 マイルス・デイヴィスのトランペットは、
中音域で、抑制されたリリシズムが魅力なのでしょうが、
子供の頃感じた、彼の暗いイメージが、意外と、
今でも生きていて、基本的にあまり好きではありません。
 ファッツ・ナバロ、ディジー・ガレスピー、
ケニー・ドーハム、アート・ファーマー、ドナルド・バード、リー・モーガン、
フレディ・ハバートなどトランペッターのアルバムを、とりあえず色々聴いてみました。
この中では、リー・モーガンの、ブリリアントな感じが一番好感がもてるといったところです。
 
「Whisper Not」 「I Remember Clifford」 のようにしっとりとした曲の他にも、
「Candy」 「The Sidewinder」 「Cornbread」
 等、彼の豊な才能を感じさせる、好きな曲は沢山あります。 

 ファンキーなところでは、ドナルド・バードも嫌いではありませんが、
「Fuego」 などでの、
上品なスィング・センスを感じない、ファンキーさ、というのは苦手です。
 
■ 「New York 5」


 不思議と、トランペットというと、
モダン・ジャズより、ハリー・ジェイムス等の
ビッグ・バンド・アルバムを取り出す事が多いのは、
くつろぎを求める時に、
トランペットという楽器が適していないのです。

 ボビー・ハケットや、バック・クレイトンは例外的に気に入っていますが、ニューオリンズ・ジャズなどでも、
サッチモより、シドニー・ベシェのソプラノ・サックスのほうを、今ではすっかり気に入っています。
このジャンルは、ページを改めて書きたいと思っています。
 もちろん、マイルス・デイヴィス、クリフォード・ブラウンの曲を聴く事はありますが、そもそも、
テナー・サックスや、ピアノほど、楽器としての魅力を感じていないところから、控えめになってしまいます。


 ホレス・シルバー (ジャズの楽しさ一杯)
 

■ 「Horace Silver」


 
昔、我が家にあった、マイルス・デイヴィスのアルバム、
その中の1曲、
「Doxy」 ブルース・フィーリングたっぷりの
ピアノだけがすごく気に入っていました。
 ピアニストの名前、曲名すらその頃は知りませんでしたから、
レコードも無くし、想い出は途切れていましたが、
後年、CD 
「Bags Groove」 の中で再会した時は、
懐かしさで感動したものです。

 その頃 
「Doodlin'」 も確か、ランバート・ヘンドリックス&ロスのバップ・スキャットの
レコードがあって、聴いた覚えがあるのですが、その後、確認はしていません。
ただ、それらのレコードは、私が買ったものでない事だけは確かです。

 私は、昔から、ブルース・ナンバーが好きだったらしく、
よく親に、“お前は、しつこい音楽が好きだね!”、と嫌がられていた事を思い出します。
 スィング・ジャズや、M.J.Qなど比較的、上品なものは、家族も楽しんでいたのに、
リフがくどい曲や、ディキシーとか、ブルース、ロックなどは、私だけが好きで、
家庭では不評だったようです。

 モダン・ジャズなど、全く興味の無かった時代の事ですが、
ホレス・シルバーだけは、その頃から気に入っていたという事になります。

 
▽ 「Horace Silver Trio」:  1952/1953
 バド・パウエルのコピーかと思わせるスタイルで、魅力の無いアルバムといえます。
チラッと見せるシルバー特有のタッチはありますが、中途半端な印象がぬぐえません。
「Opus De Funk」 唯一、ホレス・シルバーらしいプレイが聴ける、オリジナル・ナンバーです。
題名どおりファンキーなメロディが魅力です。

 
スタン・ゲッツの 「The Complete Roost Session Vol.2」 で感じたように、
この頃は、まだ完全にオリジナルなスタイルが確立されていなかったのか、
シルバーらしいバイタルな感じはしても、親しみやすさ、ユーモア感、
独特のファンキーさという点で、物足らなさがあります。
 
■ 「Art Blakey」


▽ 「A Night At Birdland With
The Art Blakey Quintet /Volume 1 / 2」
: 1954
 
ハード・バップを高らかに宣言したという、
記念すべきアルバムとしてあまりにも有名です。
アート・ブレイキーのアルバムとして扱うべきかもしれませんが、
彼のジャズ・メッセンジャーズとしての魅力は、他には、
「Mornin'」 しかありませんから、
ジャズ・メッセンジャーズの、発起人の一人でもあることから、
バードランドとカフェ・ボヘミアのライブについては、ここでとりあげる事にしました。


「Split Kick」 
クリフォード・ブラウンの、はちきれそうなトランペットが見事です。
シルバーの踊るようなファンキーさが、アップ・テンポの曲を陽気にしています。
アート・ブレイキーも、この時とばかり、張り切っていて、
熱気溢れるオープニング・ナンバーとなっています。

「Once in A While」 
ブラウンの豊な歌心が、味わえるスロー・バラッドです。
彼が、その後、マックス・ローチとクインテットを組んで活躍するのですが、
私の好きなブラウンは、むしろ、このメンバーでの、ファンキーな味わいにあります。
彼の音色は、上品で、バックがこの位でないと、面白くないところがあるのです。

「Quick Silver」 さすがに、52年のものより、ずっとファンキーで上等です。
シルバーと、ブレイキーにせきたてられるように、ドナルドソンが続きます。
ルー・ドナルドソンのアルトがあまり好きではないのですが、ここでは、
スピード曲に馴染んだプレイを聴かせています。
でも、その後に続く、ブラウンのブリリアントで、クリエイティブなトランペットを聴いてしまうと、
影が薄いという感じです。

「Wee-Dot」 
ハード・バップの典型といった曲です。ブラウンのソロは、超人的なプレイで圧倒されます。
2回録音されていますが、ドナルドソンが、キャノンボール・アダレイだったら、
ものすごいアルバムになっただろうなあ〜。
などと考えてしまうほど、他のメンバーは素晴らしい出来栄えです。

♪♪ 「Blues」 
実は、私が、このアルバムを大のお気に入りにしている理由が、この曲にあります。
ドナルドソンの音色は気に入りませんが、
彼もブルース・フィーリング一杯のプレイヤーであることで、許しています。
ブラウンのトランペットが、珍しくファンキーで好感が持てます。
が、何と言っても、ホレス・シルバーのピアノが魅力なのです。
黒人の身体に染み付いている、ブルース・フィーリングを見事に、表現しています。
決してブルーではない、バイタリティに溢れていて、正に、
このプレイをファンキーと表現するのだと、納得させてくれます。

「A Night In Tunisia」 
その後、ブレイキーの18番になる、ガレスピーのナンバーです。
頼りない、ドナルドソンのアルトに比べて、ブラウンのトランペットは、
申し分ないスリリングなプレイで、どのような状態でも、溢れ出るアイディアを抑えきれない
といった才能を感じます。
 ブレイキーのドラムも、水を得た魚といった感じで、特徴的なドラム・ロールだけでなく、
優れた音楽センスを感じます。
この曲を聴く限り、ジャズ・メッセンジャーズ最初のトランペッターにして、最高のプレイヤーが、
クリフォード・ブラウンであることは、疑いもありません。
個人的には、リー・モーガンの方に、より愛着をかんじますが〜。

「Mayreh」 
これもホレス・シルバーの曲ですが、何と言っても、ブラウンのソロは説得力があります。
ここでの、ドナルドソンは、なかなかの音色です。
 彼のアルトは、チャーリー・パーカーで感じる、音をはずしたような音色が気に入らないのです。

「If I Had You」 
まるで、パーカーの再来といった、ドナルドソンのアルト・サックスをフィーチャーしたナンバーです。
昔家の前を通った、豆腐屋のラッパみたいな音をだすことがあって、あまり好きではありません。
アルト・サックスの本来の音かもしれないのですが。

「The Way You Look Tonight」 
こういったおとなしいスタンダードが、似合わないアルバムですが、
ここでもブラウンのトランペットは冴え渡っています。
ブラウンのメロディアスなフレージングは、天性のものでしょうが、
曲のイメージを損なわない美しいアドリブには驚かされます。
スピーディなリズムにのって、ドナルドソンも好演しています。

「Now's The Time」 「Confirmation」 
チャーリー・パーカーのナンバーが続きますが、ルー・ドナルドソンを考えての選曲でしょう。
彼も得意な曲らしく、確かに熱演していますが、それより、ブラウンのスムーズで豊な歌心に驚かされます。

 
ビ・バップ時代には無かった、全体としての統一感、メロディアスな聴きやすさ、
各プレイヤーのアドリブの競演、熱気あふれるプレイ・スタイル、など等、
ジャズの魅力に満ちたアルバムです。
個人的には、アルト・サックスが気に入りませんが、このアルバム全体を通して、
若きクリエーターが、新しい音楽を旗揚げした心意気が、十分伝わってくる熱演だと思います。

 ホレス・シルバーが音楽監督として、十分な才能を示していますし、
このアルバムが、ハード・バップの実質的な幕開けであった事は、その後の、
ブレイキー、シルバー、ブラウンのそれぞれの活躍を見ると明らかです。


■ 「New York 6」


▽ 「The Jazz Messengers At
The Cafe Bohemia / Volume 1・2」
1955
 
このアルバムは、ホレス・シルバー・クインテット
といっても良いメンバーで、私にとっては、
ルー・ドナルドソンの代わりに、
ハンク・モブリーが参加している事で、バードランドのものより気に入っています。

♪ 「Soft Winds」 
ベニー・グッドマンのスィング・ナンバーです。モブリーのゆったりしたテナー・サックスが心地よく響きます。
複雑なフレージングをスムーズに、時にテンポを変えて、リラックス感が伝わってきます。
ケニー・ドーハムのトランペットも同様に、響きの良い音色です。
ホレス・シルバーの、独特の陽気さが漂うフレージングが、曲に彩りを添えていて、
アルバムで1番気に入っています。

「The Theme」 アップ・テンポなテーマを、ドーハム、モブリー、シルバー、ワトキンス、ブレイキーと、
目まぐるしくソロが展開されます。曲としての魅力はあまりありませんが、
ハード・バップの典型といった趣です。

「Minor's Holiday」 
ケニー・ドーハムのマイナー・ブルースの曲で、彼のトランペットは、ここではブリリアントで、
元気一杯といった感じで、ドラマティックなアドリブを聴かせます。
モブリーのサックスも達者に語っています。
シルバーは、このての曲はさすがにお手の物といった感じですし、ブレイキーのドラムも、
客を喜ばす術を熟知しているといった感じです。

♪ 「Alone Togeter」 
モブリーの、若々しい声での、曲紹介から始まります。
優しい音色の中で、彼の豊な歌心がのぞいて、大変気に入っています。
このように、ゆったりしたテンポでの、サックスの歌心というのが、私のジャズに求めるくつろぎなのです。

「Prince Albert」 
ケニー・ドーハムらしい、ちょっとくぐもった音色のソロが聴けます。
転調する曲をあまり好まない私としては、メロディに落ち着きがなく、あまり好きではない曲です。

「Sportin' Crowd」 アップ・テンポのモブリーの曲です。
ここで、シルバーの、お得意のバッキングが始めて聴けます。
ドーハム、モブリーのバックで、バイタリティ溢れるピアノとドラムのリズムは、この後、二人が分かれて、
それぞれハード・バップのリーダーとして活躍していく際の、典型的なスタイルが聴き取れます。

「Like Someone In Love」 
ドーハム、モブリーのソロが、しっとりとしたラブ・バラッドを歌い上げていきます。
ファンキーさを抑えて上品にプレイしていますが、チョッと退屈するところもあります。

「Yesterdays」 
ケニー・ドーハムのトランペットをフィーチャーしたスロー・ナンバーです。
彼のリリシズムが伝わってくる好演です。
マイルス・デイヴィスとも違った、しっとりとしたやさしさ、温かさを感じます。

「Avila And Tequila」 
モブリーの歌心を感じる曲ですが、ここでは、ブレイキーのドラムが、最初から賑やかです。
ブレイキーの元気の良いドラムを大好きですが、ドラムが主張しすぎるのは、
あまり感心しないという、微妙な好みもあります。

「I Waited For You」 レイジーな感じが良く出ているスロー・バラッドです。
ドーハムのトランペット、モブリーのサックスは、けだるい感じが良く、
バックのリズム陣も押さえ気味で、曲の雰囲気を盛り上げています。
アート・ブレイキーがただ、ノー天気なドラマーではないことが、こういったバラッドを聴くと良くわかります。

 
このアルバムは、「A Night At Birdland With The Art Blakey Quintet /Volume 1 / 2」 と比べると、
随分おとなしい感じがしますが、モブリーが参加している事、音楽の好みから、
こちらのアルバムの方が好きです。
ただ、ホレス・シルバーのバイタリティ溢れる独特のスタイルは、オリジナル・クインテットまでお預け、
といったところで、ここではまだ、控えめなプレイに終始しています。

         
■ 「New York 7」

▽ 「Horace Silver And
The Jazz Messengers」
1954 / 1955

 
「The Jazz Messengers At
The Cafe Bohemia / Volume 1・2」
 
とメンバーは同じですが、
すべてホレス・シルバーのオリジナル・ナンバーばかりです。
シルバーの考える、音楽がここでは聴けます。

「Room 608」 私にとっては、あまり魅力を感じない曲ですが、統一のとれた演奏スタイルは、
シルバーの意思が隅々まで行き届いている事を示しています。

「Creepin' In」 スローで、ファンキーな曲です。
ここでのモブリーは、ブルース・フィーリングたっぷりで、堂々としたプレイを聴かせます。
ドーハムもゆったりとしたリズムで、美しいソロをとります。
ここで、初めて、クリクリッとひねる、ホレス・シルバーのあのスタイルが初めて楽しめます。
こういったスロー・ブルースは、彼の音楽が、ファンキー・ジャズと呼ばれる特徴をよく表しています。

「To Whom It May Concern」 
シルバーの音楽は、親しみやすいメロディが特徴ですが、
これもそんな雰囲気の曲です。ピアノ・ソロも彼らしいアドリブが一杯です。

「Hippy」 
ハード・バップの特徴が良く出ている曲です。統一感、各自のソロ、曲の楽しさが味わえます。

「The Preacher」 
モダン・ジャズというにはあまりにもポピュラーで、親しみやすいメロディです。
でも、各自のソロ・プレイは、ジャズ・フィーリングに溢れています。
シルバーのピアノは、ファンキーの極致といった味わいです。

♪ 「Doodlin'」 
馴染みやすいといったらこれが一番です。
子供の頃、ランバート・ヘンドリックス&ロスのスキャットで、レコードがあり、
なぜかこの曲が気に入っていて、しょっちゅう聴いて言いましたから、
CDを購入して、ホレス・シルバーの曲であり、ブルー・ノートの経営を救ったほどの、
ヒット・ナンバーだったことを知って、懐かしさ、いとおしさもひとしおです。
 各プレイヤーの優れたソロを、今ではゆっくり楽しんでいます。
それにしても、ホレス・シルバーというアーティストは、明るさ、スィング感、
ファンキーさを生まれながらにして、持っているプレイヤーである事が、よくわかります。

▽ 「Six Pieces Of Silver」 1956
 
 
今思うと、プレスリーの 「ハート・ブレイク・ホテル」 に心奪われていた同じ年に、
ホレス・シルバーのオリジナル・クインテットの初アルバムとして、録音されていたのです。
ホレス・シルバーの考える音楽が、100%発揮された初めてのアルバムです。
同時に、モダン・ジャズにとっても、大きな進展のあった記念すべき年だったようです。


「Cool Eyes」 
オープニングから、ハード・バップの典型的なスタイルで、見事にスウィングしています。
チームとしてのまとまりもよく、心地よい曲です。

「Camouflage」 
変則的なスィング・ナンバーで、意欲的なシルバーの曲作りを良く表しています。
チョッとゴスペル風なメロディが特徴的です。

「Enchantment」 
親しみやすいテーマにのって、ラテン・ムードたっぷりにスィングします。
モブリー、ドナルド・バードそして、シルバーのプレイもスムーズです。

♪♪ 「Senor Blues」 ラテン・フィーリングとモダン・ジャズが見事に融合した、
文句なしに、ホレス・シルバーのベスト・ナンバーです。カッコよさ以上に、曲全体に風格が感じられます。 
 ドナルド・バードの粘り気のあるトランペットが、ファンキーさを増幅していて、魅力がありますし、
続く、モブリーのテナーもスムーズで心地よく、さっそうとした感じの、リフのあと、
ホレス・シルバーの、正に独壇場といった、ファンキーなピアノ・ソロが圧巻です。
そして、全員での魅力あるテーマへ戻っていきます。
 彼のすべての作品の中で、最も好きな曲です。

 アルバムとしては、最高とは思いませんが、「Senor Blues」 1曲で、十分価値があります。
こんな素敵な曲を作れるという、シルバーの才能を感じますし、
トランペットのドナルド・バードが参加している、このアルバムでの、ホレス・シルバー・クインテットが、
最高のメンバーだと思っています。

 
■ 「San Antonio 1

▽ 「The Stylings Of Silver」 1957
「No Smokin'」 スマートでカッコのよい曲に驚かされます。
アップ・テンポで、さっそうとしたテーマと、
スピード感のある、シルバーのバッキングに、
モブリーも、ファーマーも一生懸命に追いついていこうとして
頑張っています。スィング感と、統制の取れた演奏スタイルで、
迫力ある演奏がとても魅力的なナンバーです。
「The Back Beat」 変わったテンポですが、親しみやすいテーマが魅力です。
モブリーのテナー・サックスは、肩のこらないリラックス感が良く、ファーマーのチョッとくぐもった
トランペットもシャレています。
シルバーは、どこかで聴いた事のあるメロディをはさみながら、堂々としています。
曲作りの巧みさを感じるナンバーです。

「Soulville」 
ファンキーなマイナー・ブルースです。言葉少なに語りかけるシルバーのピアノは、
ワン・アンド・オンリーの世界を表現しています。
暗いブルースではなくユーモラスな面ものぞく独特のセンスを感じます。

「Home Cookin'」 
ファンキーだけれど、洗練された雰囲気も漂うというのが、シルバーの曲の特徴ですが、
この曲もそんな感じです。全体としては、大人しい出来栄えだと思います。
リズムとホーンのバランスが粋です。

「My One And Only Love」 アルバム唯一のスタンダード・ナンバーです。
しっとりと、シルバーのメロディは、優しく、美しい音色です。ファーマーのトランペット、モブリーのテナーも叙情的で、
曲のイメージを損なわない見事な出来栄えです。
 
彼のアルバムとしては、上品な印象を受けますし、音楽の完成度としても、かなり高水準なものだと思います。
これ以降、モブリーも抜け、やや、物足りないメンバーになっていくのですが、その分ファンキーさは、倍増していくのです。

▽ 「Finger Poppin'」 1959
「Finger Poppin'」 スィンギーなアップ・テンポのタイトル・ナンバーです。
ブルー・ミッチェルのトランペットもスムーズですし、ジュニア・クックも力強くスィングしています。
今まで以上に、ホレス・シルバーは、力感溢れるソロを聴かせますし、
バッキングにも熱が入っています。

「Juicy Jucy」 
ファンキーな曲ですが、いつもどおり、素直なブルースではなく、一ひねりといったところです。
ブリリアントなトランペットの音色と、フレージングが魅力です。

「Swingin' The Samba」 このアルバム一番の曲です。
心地よいサンバのリズムにのって、サックス、トランペット、ピアノと一体感のある演奏が聴けます。
ホレス・シルバーは、このての音楽が得意なのでしょう、
他のピアニストには決して真似の出来ない、陽気で、スィンギーで想像力に溢れたプレイぶりです。
シルバーの思うように、プレイヤーを操っているといった見事な統制ぶりです。

「Cookin' At The Continental」 
ホットなスィング・ナンバーです。今後、シルバーが最も得意とする、バッキングの典型や、
リフのくどさが聴かれて、ファンキーの完成といった感があります。

「Come On Home」 
こちらの方が私は好きです。
単純なテーマの繰り返しによる、ブルース・フィーリングがたまりません。
それぞれのソロも、ゆったりしたリズムに乗って、心地よいアドリブが展開されます。
シルバーの、チョッとユーモラスでアーシーなソロは、抜群です。

 
8曲それぞれ特徴のある曲作りをしていますが、全部が全部好きというわけではありません。
ただ、この新しいメンバーでの、再出発は、シルバーが、従来より、黒さを増して、
いわゆるファンキー・ジャズそのものを前面にだしていった事がよく理解できるアルバムです。

プレイヤーとしては、ジュニア・クックをあまり好きではないのですが、バランスのとれた、しかも、
ホレス・シルバーが考えるファンキーなジャズには、彼が適していたのかもしれませんし、
自由に彼の音楽を表現するためには、大御所はむしろ不必要だったのかもしれません。

 
■ 「San Antonio 2


 「Blowin' The Blues Away」 1959

「Blowin' The Blues Away」 
いきなりものすごい熱気漂う
ホレス・シルバーのピアノに圧倒されます。
ソロでもバックに回っても一度も休みの無いピアノは、
ファンクの権化といった趣があります。スピードに乗って心地よいスィング感が味わえます。

♪ 「The St. Vitus Dance」 
今まで必ず、トリオものを入れてきたシルバーですが、この曲が一番好きです。
メロディに無理が無く、流れるような美しさに、適度なアーシーさが加わって好感が持てます。
従来どうしても、バド・パウエル風の硬さや難解さが目立ったのですが、
ここでは、リラックスしたプレイに終始しています。
同様にトリオでの、「Melancholy Mood」 は、シルバーの違った顔を知ることは出来ますが、
好みではありません。

「Break City」 丁度、「No Smokin'」 を想いおこさせるような、さっそうとした曲です。
メンバーが変わって、ジュニア・クックのサックスは、モブリーより、野太く、ブルージーですし、
トランペットは、ファーマーより、ブリリアントですが、曲としての迫力や、
まとまりはこの方がありそうです。ただ、ジャズの上品さという点でははるかに劣ります。
それが良い悪いの判断にはなりませんが…。

「Peace」 
珍しく、クインテットのスロー・バラッドです。ブルー・ミッチェルのトランペットは、なかなか素晴らしく、
ファーマーよりは、気に入っています。ピアノのシルバーは、ブルースをやっている時が一番好きで、
このように大人しく、ややスマートになるとチョッともの足りません。

♪ 「Sister Sadie」 
文句なしに、アルバムaE1のファンキー・ジャズです。
単純なメロディは、親しみやすく魅力的です。テンポも申し分なく、
シルバーの効果的なバッキングが、トランペット、サックスのソロをフォローしています。
 そして、圧巻はシルバーのソロです。ファンキーさには、チョッとしたユーモアが含まれると、
何かで読んだことがありますが、恐らく、その人は、ホレス・シルバーのピアノを聴いて、
逆に、ファンキーを定義したのでしょう。
クリックリッっとひねったピアノは、彼独特の持ち味ですし、
曲全体のドラマティックな構成も申し分ありません。

「The Baghdad Blues」 
題名どうりバグダッドの雰囲気が、メロディには感じられますが、
アップ・テンポのマイナー・ブルースに仕立てています。
作曲家としては、最高の気分でしょうが、もう少し、オーソドックスな題材の方が、
私は好きです。でも、シャレた感じではあります。

 
ジャケット・デザインのオシャレさといい、内容の充実度といい、
さぞ人気盤だったろうと想像できます。
ファンキーという言葉を、音楽に置き換えたといったところです。

 
■ 「San Antonio 3

▽ 「Doin' The Thing」 1961
 
ライブでの演奏は、やはり熱気が感じられて
スタジオものとは違った味わいがあります。
シルバーの、人柄がしのばれるような、
優しい語り口でアルバムが始まります。

♪ 「Filthy Mcnasty」 単純なテーマ・リフが、何とも心地よい限りです。
シルバーは、ブルー・ミッチェルのトランペット、ジュニア・クックのテナー・サックスのソロの間も、
ひと時も休まずピアノを叩いています。
 そして、ピアノ・ソロに移ると、ファンキーさの一杯詰った魅力あるフレージングで、
興奮度はいや増していきます。
豊な才能に、見事なテクニックが備わって文句なしにゴキゲンです。
ライブだけに、音をはずす事もありますが、それがまたビレッジ・ゲートのライブである事を強調して、
欠点にはなっていません。このアルバムのベスト・ナンバーです。

「Doin' The Thing」 
アップ・テンポのマイナー・ブルースで、ジュニア・クックのテナーが目まぐるしくソロを展開します。
続く、ブルー・ミッチェルのトランペットの方が私は気に入っていますし、
ここでのミッチェルのアドリブは、かなりクリエイティブで魅力があります。
 シルバーのソロは、変化に富んでいて、熱気の中ではじけています。ロイ・ブルックスのドラムも、
力強くライブならではの熱の入ったプレイを展開しています。
 一段落したところで、全員でのテーマにもどる雰囲気も、
ホレス・シルバーの卓越した曲づくりのセンスを感じさせます。

「Kiss Me Right」 
ややスローなマイナー・ナンバーで、ようやく落ち着いたプレイが楽しめるといった展開です。
ジュニア・クックも、彼なりのリリシズム表現で熱演していますが、こういう曲では、やはり、
モブリーのテナーで聴きたかったと思わせます。
その点、ミッチェルのトランペットは、なかなか雰囲気があって、見事です。
相変わらず一時も休まないシルバーですが、ここでは、色んな曲をアドリブに取り入れて、
お茶目なところを見せています。

■ 「San Antonio 4」

ライブならではの熱気に満ちた、ハード・バップ
最後の熱演といった趣のアルバムです。

シルバーが、他人のソロの時にも、常にせきたてるような
バッキングや、チョコチョコ指先を動かしていることによる
圧倒的なスィング感、バイタリティは、このグループの特徴ですが、
変わらぬメンバーだからこそ可能な、息の合った、真似の出来ない音楽を創造しています。

 ファンキーの権化といわれたホレス・シルバーですが、
私にとってのホレス・シルバーはここまでといったところで、
その後のアルバムをあまり気に入っていません。

 
        
▽ 「Silver's Serenade」 1963
 
このアルバムから、私のホレス・シルバーへの魅力は遠ざかっていきます。
ジュニア・クックのテナー・サックスが上手になったとか、
ブルー・ミッチェルのトランペットが良い味を出しているとか、
ライナー・ノーツには、シルバーの普遍的な音楽性とともに、プレイヤーについても褒めていますが、
チョッと、物足りません。
グループの統制がとれすぎていて、荒削りな躍動感が削がれてしまい、面白みが薄れてしまっています。


「Let's Get To The Nitty Gritty」 「Sweet Sweetie Dee」 
シルバーらしいファンキーの香りのするナンバーですが、
イマイチ乗り切れない感じです。 他の曲は、もっと興味が湧きません。
        
▽ 「Song For My Father」 1964
「Song For My Father」 大ヒットした曲ですが、国籍不明の音楽といったところです。
単調で、ジャズの面白さにかけてしまいました。
 
■ 「San Antonio 5


▽ 「The Cape Verdean The Blues」 1965
「The Cape Verdean Blues」 
こうなってしまうと、もうジャズではありません。
ジャズ・サンバというなら、
スタン・ゲッツのもののほうが本物という感じです。
「Senor Blues」
 の頃が懐かしいところです。

 ホレス・シルバーの音楽は、親しみやすいテーマ、ソロとソロの合間でのカッコよいアレンジ、
一時も休まないバイタリティ溢れるピアノ、身体に染み付いているファンキー・フィーリングと
スィング感が特徴です。
 個人の魅力にプラスして、リーダーとしての圧倒的なメンバー統率力によって、
アンサンブルとしての魅力も抜群です。
デューク・エリントンも同様の手法だったように感じますが、基本的に、
ホレス・シルバーの音楽は、わかり易く、親しみやすい曲作りが特徴です。
それに、黒人の持ち味を十分発揮しながら、ジャズのカッコよさ、スマートさが十分感じられます。

 モダン・ジャズでも、ファンキーな香りとスィング感のあるものは好きですが、
60年代、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズは、単にテーマを繰り返すだけの、
つまらない音楽に成り下がっていってしまうのです。
モード、フリーなどは嫌いですから、モダン・ジャズ全体が終わってしまった感じです。


 現在まで活躍しているプレイヤーも沢山いるようですが、私は興味がありません。
だからといって、ホレス・シルバーがアイドルであることに変わりありません。
むしろ永遠であって欲しいから、その後を知りたくないといったほうが本当の気持ちです。



  クリフォード・ブラウン(マックス・ローチとの双頭コンボを結成)
  
■ 「Clifford Brown 」


テナー・サックス好きな私としては、
メンバーにハロルド・ランドが参加していることが、
このクインテットの魅力の一つになっています。
後にソニー・ロリンズが加わりますが、
活動期間が短いにもかかわらず、ブラウン・ローチ・クインテットは、
ハード・バップ期の素晴らしいコンボとして名を成しました。

▽ 「Dinah Jams」 1954
 ダイナ・ワシントンとのセッションです。
クラーク・テリー、メイナード・ファーガソンのトランペットが、邪魔と思えるアルバムです。
ライブで、調子付いているだけといった感じのトランペット・バトルは
折角のセッションの上品さを損なっています。
クリフォード・ブラウンだけは、それとすぐわかる美しい音色だけに残念です。

「Lover Come Back To Me」 
ダイナのテーマに続いて、クラークの調子はずれのようなトランペット・ソロrが気に入りません。
ハロルド・ランド、クリフォード・ブラウン、ハーブ・ゲラーのアルト・サックスのスムーズなソロがやや救いです。
メイナード・ファーガソンの、これまたクラークに似たソロがひっかかりますが、
最後のダイナ・ワシントンのシャウトが、会場を盛り上げています。

「Alone Together」 「Darn That Dream」 
ハロルド・ランドのしっとりとしたテナー・サックスのソロをフィーチャーしたナンバーです。
このアルバムで最も気に入っています。

「Come Rain Or Come Shine」 
ダイナ・ワシントンの豊な歌唱力が楽しめます。
ブルージーなシャウトが、2分足らずのヴォーカルにも関わらず観客を魅了しています。

「No More」 ダイナのしっとりとしたヴォーカルと、
クリフォード・ブラウンの情感溢れるトランペットのハーモニーが美しいバラッドです。

「I've Got You Under My Skin」 
力強いダイナのヴォーカルが、心地よいリズムに乗って展開され、
続いてクラーク・テリー、メイナード・ファーガソン、クリフォード・ブラウンと
トランペッターが盛り上げ、最後のダイナのヴォーカルへ続きます。
トランペットが好きならこれも良いのでしょう。
私には、ヒステリー集団の騒ぎ、としか聞こえてきません。

「There Is No Greater Love」 
ジミー・ラッシングばりのブルース・シャウトが見事です。
この分野での第一人者である歌唱力を聴かせてくれます。

「You Go To My Head」 
ダイナのスロー・バラッドから、ラテン調のスィングするリズムへ変化し、
それからメンバーによるソロ・プレイへ続きます。サックス、ピアノのスムーズなソロも心地よく、
クリフォード・ブラウンのソロは、すぐ彼だとわかる柔らかな音色と豊な歌心で納得できます。

 ブルースの女王とハード・バップグループとのジャムです。
スロー・バラッドは、さすがと思わせますが、ライブの特徴として、
トランペッターがハイになりすぎる欠点が、このアルバムでも聴かれます。
個人的には、彼女の影響を受けたと思われる、ナンシー・ウイルソンのほうが好きですが、
二人とも、どうしても、いつも聴いていたい、というほどのヴォーカリストではありません。
やはり、気合を入れて聴かないといけないヴォーカルというのは、疲れてしまいます。



■ 「San Antonio 6

▽ 「Helen Merril Wuth Clifford Brown」 1955
 彼女が、録音に当たって、
ブラウンのトランペットと、アレンジャーに
クインシー・ジョーンズを指名したという曰くつきのものです。

「Don't Explain」 「What's New」 
「Yesterdays」 「Born To Be Blue」
 しっとり歌っていますが、このまったりした感じが嫌いです。

「Falling In Love With love」 
折角のスィング・フィーリングですが、オスカー・ペティフォードのソロが気に入りません。 
 
「'S Wonderful」 
ヘレン・メリルもスィンギーに歌っていますが、編曲が気に入りません。
 
♪ 
「You'd Be So Nice To Come To」
 
結局、この曲しか想い出もありませんし、この曲しか好きではありません。

 ホーン・ライクだと言われる、彼女の声に魅力を感じないこと。
クインシー・ジョーンズのアレンジが好きではない事。
等から折角のクリフォード・ブラウンの好演も、私にとってはアルバムとして魅力を感じていません。

         
▽ 「Clifford Brown And Max Roach」 1954/1955
 このアルバムは 「Study In Brown」 と並んでクインテット最高の出来栄えと言われています。

「Delilah」 
ハロルド・ランドのテナー、ブラウンのトランペット・ソロは、心地よいのですが、
テーマ部分の、妙な雰囲気のアンサンブルが気になります。
もっと、パッとやってほしかったというところです。

「Parisian Thoroghfare」 
バド・パウエルの曲ですが、曲も、アレンジも気に入っていません。
テナーと、トランペットの流れるようなソロだけが気に入っています。

「The Blues Walk」 ハード・バップらしい元気一杯で気持ちの良い演奏です。
テナーとトランペットのバトルはなかなかスリリングで、スィンギーです。
スピード感とブルース・フィーリングが味わえる名演奏だと思います。
ドラム・ソロも溌剌としていて、こうでなくっちゃと思わせる熱演です。

♪ 「Daahoud」 単純で明快なテーマが心地よく、歯切れが良い曲です。
マックス・ローチのドラムもスィンギーで、効果的なサポートをしています。

♪ 「Joy Spring」 
上品なテーマに続く、ハロルド・ランドのテナーが、くつろいだ雰囲気を高めてくれます。
ブラウンの超人的なアドリブ・プレイも歌心溢れるもので、
全体を通して適度なスィング感が心地よい演奏です。

♪ 「Jordu」 
クリフォード・ブラウンのソロが見事なナンバーです。
流れるようなリズムの中、こんこんと湧き出る泉のごとく、美しいアドリブが展開されます。
彼はファンキーさの薄いところが不満ですが、歌心とテクニックは、トランペッターとして、
1番である事は間違いありません。

「What Am I Here For」 
デューク・エリントンの曲ですが、あまり魅力を感じません。
スィンギーに、歯切れよく、プレイして、アンサンブルとしては良くまとまっていると言った程度です。

 クリフォード・ブラウンのトランペットは、
バップ時代のファッツ・ナバロゆずりのハリのある音色、豊な歌心で素晴らしいのですが、
私は、マックス・ローチのスタイルがあまり好きではありません。
 恐らく彼がアレンジをしているのだと思いますが、曲のイメージを膨らませたアンサンブルは、
デューク・エリントンに感じる、“クサさ” があります。
 又、ソロ・ワークでも、あまりに情感がダイレクトに表現されていて、気になるときがあります。
彼は、ヴァイブの名手でもあり、優れたクリエーターだと思いますが、
もっと、ハードに、アーシーにやってほしかったものです。

もっとも、クリフォード・ブラウンも、その音楽性に共感したからこそ、アート・ブレイキーではなく、
マックス・ローチを選んだのでしょうから、私の好みと基本的には違うところに、
このグループの魅力があるのでしょう。



■ 「San Diego 1


 「Study In Brown」 1955
 ブラウン&ローチ・クインテットとして、
最も音楽的完成度の高い作品という評判です。

「Cherokee」 イントロが、「Delilah」 と同様、
妙に演出過多といった感じで、好きではありません。
まあ、インディアンをテーマにしているのでしかたありませんが、
続くハードな演奏と、どうもイメージが一致しません。
アップ・テンポにスィングしていて、モダン・ジャズの典型といった素晴らしい出来栄えですが、
アーシーさが欲しいところです。

「Jacqui」 
この曲もテーマのアンサンブルが気に入りませんし、特別魅力を感じないナンバーです。

「Swingin'」 
解りやすいテーマとスィング感、やはりこうでなくてはモダン・ジャズとは言えません。
ブラウンのトランペット、ハロルド・ランドのテナーも実にスムーズです。
リフも単純で、ホットな感じを盛り上げていて好感が持てます。
あまりアーシーさはありませんが、これはこれで魅力があります。

♪ 
「Lands End」
 
私は、このてのブルースがたまらなく好きなので、文句なしに気に入っています。
ハロルド・ランドのファンキーな面が、いかんなく発揮されて魅力一杯です。
 テーマのデュオでは、ブラウンも精一杯ブルージーにがんばっていていますが、
ピアノのリッチー・パウエルのほうが、曲のイメージを良くとらえてファンキーにこなしています。

♪ 「George's Dilemma」 
この曲は、ドラマティックなテーマが、いやらしくなく、
エキゾチックなリズムとモダン・ジャズのカッコのよさが、融合されていて、
文句なしに素晴らしいナンバーです。

 トランペットもサックスも、テーマにマッチしたアドリブを展開していて、ゴキゲンですし、
リッチー・パウエルのピアノ・ソロも印象的です。
クインテットのまとまりと、各自のソロが見事にかみ合った名演奏だと思います。
 こういう曲を作るブラウンの才能、トランペット・ソロに聴く豊な歌心は、
やはり、黒人特有のブルース・フィーリングが備わっているんだと思わせます。

♪ 「Sandu」 
この曲も、きちっとスィングするリズムに支えられて、心地よいメロディが聴けます。
やはり、ジャズの良さは、このようにチョッとカッコ良く、スィングしてくれなくては困ります。
クリフォード・ブラウンとハロルド・ランド、そしてリッチー・パウエルのくつろぎに満ちたプレイ。
マックス・ローチのドラム・ソロから、ジョージ・モローのベースから、テーマにもどるところなど、
ハード・バップ・ジャズの最高にオシャレな雰囲気が感じられます。

「Gerkin For Perkin」 
メロディに魅力が無く、プレイヤーがいくら素晴らしいソロを展開しても、ピンときません。
クリフォード・ブラウンの歌心は理解できますが、ハード・バップとしてはもの足りません。

「If I Love Again」 
アップ・テンポでスィングしていますが、このアルバムには、素晴らしい曲が他にあるので、
特別良いとも思えません。妙にあか抜けた感じのアンサンブルが、特に気に入りません。
 下品は嫌いですが、上手いだけでは心に残りません。

「Take The A Train」 
デューク・エリントンのテーマ曲と言う以上に、このクインテットは、
エリントンを意識しているように思います。各パートは、きらびやかなソロ・ワークで、文句無いのですが、
アレンジが、“くさい”のです。エリントン嫌いの私なりの感想ですが。

 このアルバムは、「Lands End」 「George's Dilemma」 「Sandu」 の3曲だけで十分満足できます。
曲のイメージを大切に、美しいハーモニー、高い音楽性を大切にしたグループで、統合された中での、
各プレイヤーの名人芸は見事です。
 そして、ハード・バップ・エイジを代表するクインテットの、完成された姿を、このアルバムが証明していま。
これほど素晴らしい出来栄えでも、常時手元に置いておくまでには至りません。

         
▽ 「Clifford Brown With Strings」 1955
 モダン・ジャズではなく、イージー・リスニング・アルバムです。スタンダード・ナンバーばかりですから、
何かをしながら聴こえてくる分には、何の抵抗も無く聞きやすいといえます。

「Memories Of You」 「Smoke Gets In Your Eyes」 「Yesterdays」 「Where Or When」 「Stardust」 
「What's New」 「Blue Moon」 「Laura」 「Embraceable You」 「Willow Weep For Me」 

 ブラウンのトランペットに、ニール・ヘフティのオーケストラがバックをつとめています。
ブラウンの、甘い歌心がどの曲にも発揮されていて、彼の才能は十分伝わってきますが、
特別彼でなくても良かったアルバムでしょう。スロー・バラッドばかりと言うのも退屈する原因です。
これでは、スィング・ビッグ・バンドのものの方が数段聴く気になります。

 チャーリー・パーカーも、オーケストラ好きだったようですが、
才能ある二人が、白人ビッグ・バンドをバックにして、プレイしたがった事に興味があります。
 クリフォード・ブラウンのトランペットと、オーケストラの音しか聞こえてきませんから、
別にクインテットが参加する必要は無かったように思います。

 
■ 「San Diego 2

▽ 1956年: 「Sonny Rollins Plus 4」
 
 テナー・サックスが、ハロルド・ランドから、
ソニー・ロリンズに変わってからのアルバムです。
でも、この翌々月、クリフォード・ブラウンと、
リーッチー・パウエルは、非業の最期を迎えてしまうのです。

♪ 「Valse Hot」  このアルバムで唯一気に入っている曲です。
昔、家にあった、彼のコンピレーション・アルバムに入っていた曲で、
慣れ親しんだからかもしれません。
心地よいテーマが、ソロの合間に何度もくり返されて憶えやすく、親しみやすいのです。
もちろん、ロリンズ、ブラウンのスィング感のある、プレイも気に入っています。

「Kiss And Run」 「I Feel A Song Comin'」  「Pent-up House」 
での、歌心、超人的なトランペットや、サックスのソロもすばらしいのですが、
親しみの湧かないメロディといったところです。

「Count Your Blessings Instead Of Sleep」 
このアルバムでは唯一の、バラッド曲で、ロリンズが、朗々と歌い上げていますし、
リッチー・パウエルのピアノも、バド・パウエルを思わせる歌心を発揮しています。
ただし、トランペットはお休みなのです。

 
クリフォード・ブラウンは、短い生涯にもかかわらず、豊な音楽的才能を、
いかんなく発揮したプレイヤーとして、現在でも高い評価を受けています。
私も、マイルス・デイヴィスより、ブラウンの方が好きです。
彼は、長生きしても、それほど自分のスタイルを変えるタイプのアーティストではなかったと思います。
 ただし、彼のあまりにも上手なアドリブを聴くにつけ、
単純なアーシーさが望みの私としては、チョッと上品過ぎて、
同時に上手すぎることから、人間性を感じない不満がどうしても残ります。



■ 「San Diego 3


 ハロルド・ランドについて…。
彼は、ブラウン・ローチのオリジナル・クインテットの
メンバーの一人で、活躍期間が短いのですが、
私好みのブルース・フィーリングが備わった、
魅力的なテナー・マンです。
 
▽ 「Wset Coast Blues!」 1960 Harold Land(ts) Joe Gordon(tp) Wes Montgomery(g)
Barry Harris(p) Sam Jones(b) Louis Hayes(ds)
 西海岸で活躍していたハロルド・ランドやモンゴメリーと、
アダレイ・クインテットのリズムセクションの珍しいセッションです。

「Ursula」 
ゆったりとしたテンポと上品なメロディを、ハロルド・ランドがスムーズなテナー・ソロを聴かせます。
リズム陣には、チョッと上品過ぎるかな、といった感じの曲です。

「Don't Explain」 
この曲は、デクスター・ゴードンにはかないませんが、ハロルド・ランドは、スローな中にも、
複雑なアドリブを入れて情感を高めています。ここでは、トランペットが効果的で、
切ない感じがよく表現されています。
ピアノが、ソニー・クラーク同様効果的なバッキングを披露しています。

「West Coast Blues」 
おなじみ、ウエス・モンゴメリーのナンバーです。
なんと言っても、「The Incredible Jazz Guitar」 での、ウエスがあまりにすごすぎます。
でも、他のメンバーも、ブルースが得意といった感じで、完成度の高いプレイになっています。

「Terrain」 
ハード・バップの典型のような演奏で、好感が持てます。
ファンキーで、キャノン・ボール・アダレイのリズムセクションが、
自由にソウルフルに活躍しています。こんなブルース・ナンバーでのハロルド・ランドは、
水を得た魚のようにのびのびアドリブを展開しています。

「Compulsion」 
アップ・テンポのリズムに乗ってのバップ・ナンバーです。
ハロルド・ランドもスムーズです。
彼のブルース・フィーリングに満ちたスィンギーなプレイは、ここでも十分発揮されています。
 

 彼は、ブラウン・ローチ・クインテットを辞めて、西海岸へ行ってしまったのですが、
出来れば、ハード・バップ全盛の時期、もっと沢山のプレイを残してもらいたかったものです。
このアルバムを聴くにつけ、ブルース・フィーリングたっぷりの、
スウィングするテナー・マンであったことを認識させられます。

 

■ 「Modern Jazz : My Best 10」


ここらで、モダン・ジャズで気に入った曲を、1
0曲だけ厳選してみようとしたのですが…、
時代や、その時の雰囲気で好みが変わるものですから、
なかなか決まりません。
 とりあえず、私にとって、印象の強いものを選んでみました。
順序はランクとは関係ありません。
 
 「Willow Weep For Me」 1955 「Bohemia After Dark」
 Cannonball Adderley(as) Horace Silver(p) Paul Chambers(b) Kenny Clarke(ds)
 キャノンボールとホレス・シルバーという組み合わせは、理想的です。
スロー・ブルースでのファンキー・フィーリングがたまりません。

 「Willow Weep For Me」 1963 「Our Man In Paris」
 Dexter Gordon(ts) Bud Powell(p) Pierre Michelot(b) Kenny Clarke(ds)
 デクスター・ゴードンのアルバムですが、バド・パウエルの気品のあるピアノが素晴らしく、
この演奏も、大のお気に入りです。
この曲は、沢山のアーティストが好演していて、2つに絞るのがようやくといった感じです。

♪ 「Whisper Not」 1956 「Lee Morgan Vol/2」
 Lee Morgan(tp) Kenny Rogers(as) Hank Mobley(ts) Horace Silver(p) Paul Chambers(b) Charlie Persip(ds)
 ベニー・ゴルソンの名曲です。リー・モーガンの、若くして完成されたプレイに驚かされます。
メンバー全員の、しっとりとした演奏も見事です。

 「Whisper Not」 1958 「Wynton Kelly Piano」
 Wynton Kelly(p) Kenny Burrell(gi) Paul Chambers(b) Philly Joe Jones(ds)
 この演奏を含め、アルバムに収められた全曲がお気に入りです。ウイントン・ケリーの落ち着いたプレイや、
ケニー・バレルの確かなテクニックが楽しめます。結局、どちらかに決める事は無理です。

 「Decisions」 1956 「Sonny Rollins Vol/1」
 Donald Byrd(tp) Sonny Rollins(ts) Wynton Kelly(p) Gene Ramey(b) Max Roach(ds)
 ソニー・ロリンズは、この曲や、
「Doxy」 などファンキーな曲でも、魅力一杯です。
「Valse Hot」 も大のお気に入りですが、とりあえず、1曲だけというと、この曲になります。

 「Senor Blues」 1956 「Six Pieces Of Silver」
 Donald Byrd(tp) Hank Mobley(ts) Horace Silver(p) Doug Watkins(b) Louis Hayes(ds)
 ホレス・シルバーは、大のお気に入りプレイヤーですから、沢山気に入った曲があり、
今でも、この曲以外にも、いろんな曲を楽しんでいます。

 「Blue Train」 1957 「Blue Train John Coltrane」
 Lee Morgan(tp) Curtis Fuller(tb) John Coltrain(ts) Kenny Drew(p) Paul Chambers(b) Philly Joe Jones(ds)
 コルトレーンでは、これが1番です。リー・モーガン、カーティス・フラー、ケニー・ドリューも、完璧なプレイをしています。
アレンジもシャレていて、ハード・バップの最高の演奏が楽しめます。

 「Autummn Leaves」 1958 「Somethin' Else
 Miles Davis(tp) Cannonball Adderley(as) Hank Jones(p) Sam Jones(b) Art Blakey(ds)
 マイルス・デイヴィスの、数少ないお気に入りナンバーです。キャノンボール・アダレイが良いからとも言えます。
ウイントン・ケリー、ビル・エバンス、サラ・ヴォーンと、他にも、名盤と言われているものがありますが、これが1番でしょう。

 52年ルースト・セッションでの、スタン・ゲッツの豊な歌心と音色も捨てがたいものがあります。
演奏に良いものがあるため、シャンソンが嫌いの私が、例外的に気に入っている曲です。

 「This Here」 1959 「The Cannonball Adderley Quintet In San Francisco」
 Julian Cannonball Adderley(as) Nat Adderley(cor) Bobby Timmons(p) Sam Jones(b) Louis Hayes(ds)
 ボビー・ティモンズの曲づくりと、プレイ両面での非凡さを感じるナンバーです。
キャノンボール・アダレイとの共演が最高に魅力的です。
 「Mornin'」 もファンキー・ジャズの決定盤として忘れられません。

 「Remember」 1969 「Hank Mobley Soul Station」
 Hank Mobley(ts) Wynton Kelly(p) Paul Chambers(b) Art Blakey(ds)
 リラックスしたテナー・サックスの魅力が味わえる、最高の演奏だと思います。
ハンク・モブリーは、大のお気に入りプレイヤーですから、他にも沢山の好きな曲があります。

 「Don't Explain」 1962 「A Swingin' Affair」
 Dexter Gordon(ts) Sonny Clark(p) Butch Warren(b) Billy Higgins(ds)
 本家、ビリー・ホリディの歌より素晴らしいという、デクスター・ゴードンのテナー・サックスによる決定盤です。
あたたかく優しさに満ちた音色に、心がうずきます。

 「No Blues」 1965 「Smokin' At The Half Note」
 Wes Montgomery(g) Wynton Kelly(p) Paul Chambers(b) Jimmy Cobb(ds)
「D-Natural Blues」 
のくつろぎに満ちたスロー・ブルースの魅力的なメロディと、ウエスの超人的なテクニック。
「Cariba」 のエキサイティングなジョニー・グリフィンのテナー・サックスと、続くウエスの見事なコード奏法 。
ウエス・モンゴメリーのプレイの中では、こちらの方が気に入っているのですが、
ウイントン・ケリーとの競演の素晴らしさから、この曲に絞りました。
 いずれにせよ、ここら辺の曲は、常に手元に置いて、楽しんでいます。


 
 好きなものに理由は必要ありませんが、私の好きな音楽には、
大抵ブルースの香りが強く漂っているようです。
 
■ 「San Diego 4

40年間以上、ジャズ一筋という友人がいます。
当然、プロの評論家のように詳しく、楽器もやります。
今でも、ライブ・ハウスを覗いているようですし、
特にピアノ・トリオを好んで聴いているらしいのですが、
私が一途なジャズ・ファンではないことや、
酒が苦手ということもあって、熱っぽくジャズの話をした事などありません。
 ジャズは、50年代から60年代始めが良かったと、彼も言っていますが、ウエスト・コーストの
ミュージシャンも好きらしく、私のように、アーシーなプレイを好み、想い入れ主体の聴き方とは随分違うようです。


 音楽の楽しみ方も色々あって良いのだろうと思っています。



 〜モダン・ジャズはこの辺りで終りにして、次はディキシーランド・ジャズでも、と思っています。〜


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