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 ♪♪ 
ブルース・アーティスト。

  ■ 「Blues Artists」 

 子供の頃から、淡谷のり子のブルースを聞き、ディキシー、スィング、ロックン・ロール、
リズム&ブルース、ハード・バップ…、これらの音楽をゴッチャに聴いてきましたが、
そのどれにもブルースが関係していて、かえってブルース本来の意味が長い間曖昧のままでした。

 恐らく私に限らず、誰にも親しまれている言葉の割には、キチッと答えられないのが
 “ブルース” なんだろうと思っています。
私の後の年代で、ロックなどをやっている人だったら、ブルースを熱く語りたがるかもしれません。
でも、その人たちもブルースの一面しか見ていないのかもしれません。黒人のコアなブルースは、
ロックにかなりの影響を与えたはずですが、ジャズからブルースに興味をもった人にとっては、
違ったアプローチがありそうです。

 
ジーン・ビンセントの「ビーバップ・ア・ルーラ」 が流行った時、
ビーバップって何だろうと不思議に思ったものでしたが、当時、詳しい資料など無く、
またそんな音楽を深く理解して聴いている人など、ほとんどいなかったものです。
日本中が先進国の文化に無条件で飛びついた時代でした。

 ビ・バップが一般的になったのは、むしろハード・バップより遅れて60年代に入ってからだと記憶しています。
ハード・バップのほうが、先に映画音楽としてポピュラーになっていましたから〜。
 バードがモダン・ジャズのパイオニアだと聞いても、私の場合、
アルトはキャノンボール・アダレイのほうが早かったし、ジャズ・メッセンジャーズはもっと前に知っていたし、
強いてモダン・ジャズ全体で言えばシェリー・マンのほうが、50年代の半ばには既に映画で聴いていましたから、
チャーリー・パーカーに特別な想い入れはなかったものです。

 成人してから知ったアーティストで、凄いと思ったのは、せいぜいギタリストの、ウエス・モンゴメリー位で、
ましてや、練習曲のようなビ・バップが、素晴らしいなんていわれても、素直には納得できないところです。
  ■ 「Wes Montgomery」 
 ジーン・ビンセントの曲の意味を後に理解して、ポピュラー・ソングにありがちな、
流行り言葉を使っただけなんだな、と納得したものでした。
流行と言えば、日本のジャズ・メンも随分麻薬をやっていたようで、技術だけでなく、
ライフ・スタイルも真似ればバードやマイルスになれると錯覚していたのかもしれません。
アメリカでは貧困と差別から麻薬へ、一方日本ではカッコいいから麻薬でも〜。
当時の状況や、日本でのモダン・ジャズの普及を考えると何となく理解できるような気がしています。

 私がスポーツなどやらず、ミュージシャン志望だったら、恐らく同じように真似したんだろうなあ、
と思っています。…例によって、またわき道にそれました。


 アメリカに住む黒人が、奴隷制度が無くなった後、逆に白人から差別を受け続け、
一般社会から阻害された生活の中で生まれた音楽がブルースだということや、西洋の洗練された音楽と、
ブルースが合体して生まれたのがジャズだということは、今なら理解しています。
もっと正確な解釈もあるのでしょうが、それは専門家にまかせるとしても…。

 言葉というのは、時代によって解釈のしかたが随分違うようで、例えば、“クール”…、レスター・ヤングが、
“カッコいい”という意味で使ったのが最初、と聞いたことがありますが、真偽のほどは解りませんし、
“ファンキー”…、ハード・バップでは、“黒人がもつ独特の泥臭さや、
バイタリティ”という意味で使われていたものですが、今ごろ、とんでもないシーンで耳にします。
だからといって違うというには根拠も希薄ですから、まあ、適当に時流にあわせて言葉の意味も変化している、
と考えた方がよさそうです。

 曖昧な定義とは別に、私なりにブルースを感じる音楽には、昔から魅力を感じていたものでした。
それらは、家族の間ではすこぶる不評でしたが、単純なメロディをしつこく繰り返すところが、
主に嫌がられた理由だと思っています。
■ 「Blues」

今思えば、ブルーノート、オフ・ビート、コール・アンド・レスポンス、リフ、ブギ・ウギ…
私がジャズにひかれた大きな要素は、そのままブルースの特徴のようです。
 ディキシーランド・ジャズはもちろん、スィング・ジャズもブルース抜きには
生まれなかった音楽だけに、文字通りブルーな題材を歌う、
ブルースを好きになったのは、ごく自然の成り行きなのでしょう。
確か、エディ・ラングのところで書きましたが、彼のアルバムで唯一心地よいのは、
ロニー・ジョンソンとの共演の曲だけで、ブルースの香りのしない他の演奏は何とも間延びした西洋音楽、
といった感じを抱いたものです。

 「グレン・ミラー物語」での
「セントルイス・ブルース・マーチ」 「上流社会」での、「これがジャズだ」 
「黄金の腕」の
「黄金の腕のテーマ」…私の洋楽好きの原点になった映画で使われた曲ですが、
どれもブルース・フィーリングたっぷりでした。
 サッチモは、白人の伝記映画には大抵出演して、ジャズの楽しさを映像で教えてくれました。

「ムーンライト・セレナーデ」 は忘れられない曲で、学生時代、彼女とダンス・パーティの予行演習と称して、
狭いアパートでこのレコードをかけ、ムードたっぷりに踊った曲としていつまでも鮮明なのですが、
これも覚えたてのブルースのステップでした。

 フォックス・トロットとブルースの違いは今でも曖昧ですが、フォックス・トロットなんて、
その頃単語すら知らなかったものです。
最近社交ダンスが盛んらしく、聞きなれないステップ名がよくでてきます。パソドブレとかジャイブとか…、
ラテンではチャチャチャというのは知っていましたが〜。ともかく当時は元気な曲はジルバやマンボ、ワルツ以外の
スローの曲はブルースでオーケーでした。…ブルースというと、すぐ彼女とのダンスのシーンを想い出すというのも、
相変わらず思考が短絡のようです。

 
■ 「B.B.King and Fats Domino」 

ブルースから派生した、R&B、ロックン・ロール、ロカビリーが、
丁度私のリアル・タイムでしたから、
ファッツ・ドミノの
「ブルー・ベリー・ヒル」 ♪「アイム・イン・ラヴ・アゲイン」
「ザ・プラターズ」の
「オンリー・ユー」 ♪「ユール・ネバー・ネバー・ノウ」 
などのR&B、ドゥ・アップや、ビル・ヘイリーの
「ロック・アラウンド・ザ・クロック」 は、
当時ヒットした曲として忘れられません。
 50年代後半のポピュラー・ヒット・チャートにはそんな曲が沢山あって、今、懐かしく聴いています。

 チャック・ベリー、チャビー・チェッカー、など黒人ロックン・ローラーも活躍していましたから、
50年代は音楽同様、用語なども混沌として…活気のある時代でした。
 今の時代はむしろジャンルとか定義にうるさすぎて、音楽の中身より理屈が好きな人も多いように感じています。
リアル・タイムの体験をもたない世代にとっては、知識から入るのもやむを得ないのでしょうが、
余計な知識を持ちすぎると、自分の感性で自由に音楽を楽しめなくなる恐れもあるはずだと思っています。
 幸い、私の時代はまず音楽ありきで、理論や解説などもいい加減でしたから、
色々聴いて自分なりに解釈して楽しんでこれたのですが…、
今でもこの自由さが趣味の音楽の良いところだと思っています。

 ロックン・ロールとヒルビリーの合体と言われる、ロカビリーの王様:プレスリーは、
同時代の最大のアイドルでしたが、マーティ・ロビンスやパット・ブーンはじめ多くの白人シンガーも、
流行のロカビリーを歌っていたようで、そのうちの何曲かは、50年代ポピュラー音楽番組で流れていたものです。
マーティ・ロビンスやガイ・ミッチェルの
「ブルースを歌おう」 …、
何を歌えばいいんだろう?、と不思議な気持ちになった事を想い出します。

 また、ハンク・ウイリアムスのカントリー・ソングの数々…、
黒人のブルースの影響を強く受けた音楽に違いありませんから、私が彼にぞっこんなのも当然だと思っています。
彼の、題名にブルースがついている歌には裏声が入るものが多く、
折角好きなのに歌えなくて、若い頃は悔しい思いをしたものです。

 大学に入って夢中になった、ソウルの先駆者:レイ・チャールズも、アルバムではハードなブルースや、
リズム・アンド・ブルースも歌っていましたが、ハード・ブルースは、50年代にマスコミから流れるということは
無かったような気がしています。やはり、黒人の地位が向上し始めた60年代から、モダン・ジャズなどと一緒に、
日本でも一般的になったのだと、実感しています。

 
■ 「Ray Charles」

私が、ブルースを意識して聴いたのは、大学1年の時に買った、
レイ・チャールズのLPからかもしれません。
「ホワッド・アイ・セイ」 はソウル・ナンバーでしたが、
R&B、ハード・ブルースと、アルバムには多彩な曲が入っていて、
ともかく夢中になったものです。

 B.B.キングの
「スリー・オクロック・ブルース」 ♪「ユー・アプセット・ミー・ベイビー」
T-ボーン・ウォーカーの
「コール・イット・ストーミー・マンディ」 
「コールド・コールド・フィーリング」
 を聴いたのも、大学時代だったと思います。
そのおかげで彼らが今でもお気に入りです。

 ジャズでは、アート・ブレイキーの 
「モーニン」、キャノン・ボール・アダレイの「ワーク・ソング」 ♪「ダット・ディア」
ホレス・シルバーのピアノで
「ドキシー」 ♪「ドゥードリン」 が大好きですし、
シカゴ・スタイル・ジャズのエディ・コンドンや、シドニイ・ベシェ、カウント・ベーシーのカンザス・ジャズも
ブルースの香りが濃厚ですから、私のお気に入りは一貫してブルースを基調としているようです。

 私は、ブルースとジャズを一緒に聴くことはあまりないのですが、
困ったのはカウント・ベーシー楽団で、特にジミー・ラッシングなど、ブルース・シンガーと
ジャズ・シンガーを分けること自体ナンセンスなアーティストですから、やはりカンザス・スタイル・ジャズとして、
他のジャズ・バンドとは一線を画して聴いているという状態です。
T−Bone Walkerにも同じ感覚をもっていますが、カンザスやテキサスのブルースには重苦しく切ない雰囲気が無く、
その明るさが気に入っているのだと思います。
 

■ 「Jimmy Rushing」

今ごろ、CDショップに行くと、ブルース専門のコーナーがあって、
昔聴けなかった数々のアーティストのアルバムなど、充実していて驚かされます。
 60年代から、ビートルズやエレキ・ギターのブームが起こりましたが、
彼らの原点としての、アメリカのブルース・マンのアルバムは、
ファンにとってみれば重要なコレクターズ・アイテムのはずです。
私は、60年代以降のロックの世界には全く興味がありませんから、
CDショップで購入するアルバムは、一般的なものとは違うかもしれませんし、
かなり限定されたアーティストのアルバムにしか食指がのびません。

 最近はカントリー・ミュージックもなにやらロック調で、それでも時々聴いているのですが、
ほとんどのヒット曲は、歌手の声が聞き取れないほどのバックの騒がしさです。
こんな音楽しか聴けない今の若者が、チョッと可愛そうな気もします。
       
 時代を超えて人に安らぎを与えてくれる、心地よい音楽というのはあるのですが、
音楽を商売にしている人たちにとってみれば、いつまでも同じ曲ばかり聴かれてはかなわない
ということなんでしょう、よくも次々と新しいものが生み出されてくるものです。
私としては、せめて音楽ぐらいは商業主義の餌食になりたくないと思っています。
 ということで、私の購入するCDは、自分の想い入れ主体、ということになります。

 
■ 「Bessie Smith」


ブルースのページを書き始めてから、ふと思いついたことがあります。
現代のアメリカの黒人にとって、ブルースは、もしかしたら触れられたくない、
過去の古傷のようなものかもしれないということ〜。
ブルース曲のほとんどの内容が、孤独で、短絡的で、厭世的で、
絶望感に満ちています。

 私は、意味など深く理解する事無しに、音楽としての心地よさで、ブルースが好きなのですが、
黒人にとってみれば、音楽というより心の叫びと聞こえるのかもしれません。
 虐げられた人間の、心の思いを歌に託した…、重い背景が気になります。

 男女間のやり取りが多いことで、日本の演歌と似ているとよく言われますが、
チョッと違うんじゃないの、といつも思っています。
ブルースでは、ユーモアがあり、比喩が使われることが多いのに、演歌は、じめじめしていて、
情念のこもった暗い表現が多いような気がしています。私が演歌嫌いということで、正当な判断はできませんが〜。

 …余計な話ですが、失恋したり辛い目にあって、その痛手から逃げようと、
数十曲、自作したことがありますが、その際、ブルース・ナンバーを参考にし、
あまり未練たらしい表現を避けたものでした。
カントリー・ミュージック仕立てで、ハンク・ウイリアムスやスノウをチョッと意識して歌い、
仲間うちではなかなか評判が良かったんじゃないかな、と自負しています。
もっとも聴かされた連中の本心までは解りませんが〜。
 聴く音楽、歌う音楽、どちらもブルース・フィーリングのあるものは好きですが、
重くて暗いものは、今も昔も苦手です。
   
■ 「Blues Harmonica」


カントリー仕立てで、ブルース・フィーリングのある曲というと、
昔から気になっている事があります。
かまやつひろしが歌って随分ヒットした… 
「どうにかなるさ」 
という曲名のもの。この歌、ハンク・ウイリアムスでおなじみの
「Lonesome Whistle」  の歌詞だけ変えたもののようですが、内容が違い気に入りません。
 レスター・ヤングが、ガーシュインの
「I Got Rhythm」 のコード進行を使って、
 
「Lester Leaps In」 を作曲したなんていうのとは違って、
メロディまで、そして汽車をモチーフにしているところまでそっくりなのに…。
また話が脱線しました。


 アメリカが生んだ最大の文化といったら間違いなく、ジャズだと思っていますが、それは、
白人と黒人の融合から出来たということも事実です。
日本人にとって、心のよりどころとしての音楽って何なんだろう?…。
私のようなアメリカ音楽で育った者にとっては、特に難しいテーマです。

 T−ボーン・ウォーカーについては、ベニー・グッドマン時代のギタリスト:チャーリー・クリスチャンや、
カウント・ベーシー楽団のギタリスト:エディ・ダーハム関連で知っていましたから特別で、
彼のくつろぎに満ちた演奏は、今でも一番のお気に入りです。
また、シカゴ・ジャズでよく出てきた名前の、ビッグ・ビル・ブルーンジー…、
彼の暖かい歌声もまんざらではありません。

 以下、思いつくまま、ブルース・アーティストを取り上げたいと思います。


  レイ・チャールズ
 
 
■ 「Ray Charles」


50年代は、ポピュラー番組で新しい外国の音楽を知った時代
でしたから、黒人のコアなブルースを聴くチャンスなどほとんど無く、
せいぜい映画の中で、それらしいシーンを見かけたくらいでした。

そんな時代、私が偶然手にしたブルースのレコードが
レイ・チャールズでした。それもLPのB面6曲だけ…。

・「The Genius Ray Charles Twist/Blues」
A面:
「What'd I Say」「Talkin' Bout You」「You Be My Baby」「Leave My Woman Alone」
「I'm Movin' On」「Heartbraker」

B面:
「Early In The Morning」「Hard Times」「The Right Time」 「Feelin' Sad」「Ray's Blues」
「Mr. Charles' Blues」

 ラジオで知った
「What'd I Say」 をもう一度聴きたくて、上京してすぐ買ったレコードですが、
アメリカで既に発売された二枚のLPを、日本向けにアレンジしたもののようで、
A面すべてが当時流行っていたツイスト曲、B面が本格的ブルース曲という変則構成でした。
ということで、ラッキーにも、まともなブルースを聴く事ができたわけです。

 彼のブルースは本物じゃない、と、いつかどこかで聞いたことがありますが、
とんちんかん且つ余計なお世話です。
12小節かその変形で、ブルーノートとくれば、誰がなんと言ってもブルースに違いありませんし、それに、
当時はブルース、R&B、ファンキー、ソウル、ゴスペル…言葉などにとらわれない、おおらかな時代でした。
レコードのライナーには、“ファンキーと言ったら、このLPを置いて他には無い”、とは書いてありますが〜。

 現在は、何枚かのレイのCDがありますが、
・「The Best Of Ray Charles」 
 初期の頃のブルース・ナンバーも何曲か入っていて、お気に入りの一枚になっています。
 彼については以前にも触れていますので、これ以上は省略しますが、長いキャリアを重ねて、
今ではブルース歌手・ソウル歌手という枠には納まりきれない、
最も有名なマルチ・アーティストになりましたから、半世紀近くに渡って彼の音楽を愛してきた
一ファンとしては嬉しい限りです。



  B.B.King 
  
■ 「B.B.King」


「Three O'clock Blues」 ♪「You Upset Me Baby」

 10年ほど前、偶然買ったCDでこれらの曲に再会しました。
曲名を見ただけではメロディが浮かばなかったのですが、
演奏が始まった途端に懐かしい昔が蘇りました。
初めて聴いたのは、
確かレイ・チャールズに入れ込んでいた時代でした。

 彼のブルースは、都会の香りを取り入れた、いわゆるモダン・アーバンというスタイルなんでしょうが、
ラジオ・テレビ・映画でその後の活躍を知る限り、時流に合わせていろいろな音楽を取り入れてきたせいか、
ブルースのもつ素朴で心地よい響きが薄れてしまったようで、個人的には、物足らなさを感じています。
今でもエレキ・ギターを手放さないのは、ブルース・マンとしてのこだわりなのかもしれませんが。
 レイ・チャールズの場合とは違って、彼との出会いが、まともなブルースだっただけに、
スタイルの変化にはことさら厳しいのかもしれません。熱心に聴いてこなかったので偉そうな事は言えませんが…。

・「The Fabulous B.B.King」
「Three O'clock Blues」 
「You Know I Love You」 
「Please Love Me」 
「You Upset Me Baby」 
「Bad Luck」 
「On My Word Of Honor」 
「Everyday I Have The Blues」 
「Woke Up This Morning」 
「When My Heart Beats Like A Hammer」 
「Sweet Little Angel」 
「Ten Long Years」 
「Whole Lotta Love」

 彼の、50年代中期までのヒット曲のオリジナル・レコード、マスター・テープをCDにしたものです。
 偶然手に入れたものですが、懐かしい2曲の他にも、聞き覚えのある心地よい曲が何曲かありました。
大体が、スロー・テンポのしっとりしたブルース好きなのですが、 アップ・テンポの力強い感じも悪くありません。
「Three O'clock Blues」 ♪「When My Heart Beats Like A Hammer」 ♪「Sweet Little Angel」
「Ten Long Years」
などのスロー・ブルースには特に心地よさを感じますが、
「You Know I Love You」 ♪「On My Word Of Honor」 ♪「Woke Up This Morning」
 など
ブルースの香りのしない曲は、なぜか何度聴いても好きになれません。

・「26 Classic Recordings B.B.King」
 1949年の
「Miss Martha King」 を筆頭に、初期の録音26曲が網羅されている、
コレクターズ・アイテムといった感じのCDです。
 残念ながら、録音状態も悪く、それにまだ荒削りのバック・バンドのせいか、
音楽の完成度に不満があるのですが、魅力的な曲はいくつもあります。前出の曲以外にも…、
「She Don't Move Me No More」 
「Hard Workin' Woman」 
「Fine Lookin' Woman」 
「B.B.Blues」 
「Questionnaire Blues」
「Waokin' And Cryin'」
「The Other Night Blues」
「Mistreated Woman」

 やはり彼はブルース・マンだと納得させられる、心地よいブルース曲ばかりです。
スロー・ブルース、ブギ・ウギ、ゴスペル、ロックン・ロール…多彩なところがこの時代の特徴なのかもしれませんが、
我がプレスリーも、恐らくこういった音楽を聴いて育ったのだと思うと、感慨深いものがあります。

・「B.B.King Best One」
 このCDは、60年代半ば〜70年代半ばまでの演奏をアルバムにしたもののようです。
 私はこの頃、ブルースをあまり聴いた覚えがありませんから、アルバムにある演奏を聴いたはずもありません。
社会人になって公私とも一番忙しかった時代でしたし、せいぜいジャズとカントリーで手一杯だった頃でした。
「Ask Me No Questions」…ゴスペルの香りのするテンポの良い曲です。
「Sweet Sixteen」…代表曲で伴奏は厚みを増していますが、ギター・ソロもあってよい演奏です。
「Don't Answer The Door」…このアルバムで最高に素晴らしいスロー・ブルースです。
初めて聴いたのですが大いに気に入りました。
その昔聴いた、
「Three O'clock Blues」 の感動に近いものを覚えました。
「Help The Poor」
「I Got Some Help I Don't Need」 
「Guess Who」 


 曲としては素晴らしいのですが、いかんせんバックのオーケストラが興を削いでしまいます。
他の10曲などは、ブラスやヴァイオリンのアンサンブル、シンセサイザーの音色、
ロック調の叩きつけるようなドラムのリズム音、ギター・ソロもテクニックに走りすぎている感じがして、
もうブルースという感じがしません。
私の知っているブルースは、もっと素朴な雰囲気が漂っていたものでした。
 ということで、3曲しか気に入ったものが無かったCDです。

・「Live At San Quentin / B.B.King」
 サンクエンティンでのライブ録音ということで、B.B.Kingと囚人のかけ合いの中で曲が進行していきます。
アメリカらしいオープンな雰囲気が伝わるアルバムです。
「Let The Good Times Roll」 
「Everyday I Have The Blues」 
「Sweet Little Angel」 
「Nobody Loves Me But Mother」 
「Sweet Sixteen」 

 これらの曲は悪くないのですが、妙な熱気に溢れていて、B.B.Kingも普段よりハイになっているらしく、
じっくり聴くには物足らないアルバムです。
 ジャズ・アルバムなどでも同じですが、観客の一員だったら最高の気分なんでしょうが、
その実況だけを聴いているというのは、やや興ざめのところがあって、ライブものはあまり好きではありません。
私がライブのアルバムで気に入っているのは、マヘリア・ジャクソンのニューポート・ジャズ・フェスティバルの
ものだけですが、それも映画館で、観客と一緒に興奮を味わったせいだと思っています。

・「B.B.King Heart & Soul」
 全20曲、ギターもなしブルースの香りなどしない、ラヴ・バラードといったアルバムです。
 自作の曲が大部分ですが、
「Don't Get Around Much Anymore」 ♪「My Heart Belongs To You」 なども
入っているのですから、自ずとこのアルバムの性格がわかるというものです。
 一度聴いただけお蔵入りしています。彼にこのような音楽を期待していない、というのが正直な気持ちです。
たった2曲の想い出の曲から始まって、結局何枚かのCDを買うことになりましたが、落胆することが多いようです。

 彼は現役で活躍しているので、初期のスタイルを守って欲しいなどというのは無理というものですが、
私としては、どうやら50年代の、ギター・ソロの聴けるB.B.Kingにしか魅力を感じないようです。
ここらへんが、ロック好きな人達とは嗜好が違うところなんだろうと思っています。

 彼は、第二次大戦後この道に入ったということですから、かれこれ60年近く第一線で頑張っていることになりそうです。
…私の好みなどは別にして、素晴らしいアーティストと言わざるを得ません。


 ♪ T・ボーン・ウォーカー

  

■ 「T-Bone Walker」


ゆったりしたギター・ソロの心地よい音色、
くつろいだ彼のヴォーカル…、ブルースを聴こうという気持ちがなくても、
夜のひととき、ふと聴きたくなるのが彼のアルバムです。
今ではかなりの数のブルース・アルバムを持っていますが、
ジャズ・ヴォーカルなどと同じ感覚で聴きたくなる
ブルース・アーティストといったら、未だに彼しかいないようです。

 ややダミ声の部類で上品とは言えないけれど、暖かく力強い独特の魅力に溢れています。
ブルース歌手特有の重苦しさやヒステリックなところが無いので一層聴きやすいのかもしれません。

 その昔、たった1曲聴いただけなのに、ずっとその曲が忘れられず、今になってようやくCDで再会した…
私が今楽しんでいる音楽は、大抵の場合そんな理由ですが、T−Bone Walkerも同様で、
「Call It Stormy Monday」 ♪「Cold Cold Feeling」 しか聴いた事がなかったのですが、
今では彼のアルバムで他のくつろぎに満ちたブルースも一緒に楽しめるのは何とも嬉しい事です。

・ 「The Very Best Of T-Bone Walker」
「Call It Stormy Monday」
「Dream Girl Blues」
「Too Much Trouble」
「Hypin' Woman Blues」
「Prison Blues」
「Hometown Blues」
「West Side Baby」

 解説によると、ここまでが、42年〜47年まで在籍したキャピトル時代の演奏らしく、
スモール・コンボでのそれぞれのソロ・プレイがジャズ・フィーリングに満ちていて、何とも聴きやすい曲ばかりです。

 聴き馴染んだ 
「Call It Stormy Monday」 のようなスロー・ブルースだけでなく、
「Too Much Trouble」 のようなシャッフル・ナンバーや「Hypin' Woman Blues」 のブギ・ウギでの
ギター、サックス、ピアノ・ソロなどには、心地よさと共に高い音楽性を感じます。
「The Sun Went Down」
「You Don't Love Me」
「The Hustle Is On」
「I Get So Weary」
「Tell Me What's The Reason」
「Cold Cold Feeling」
「Get These Blues Off Me」
「Through With Woman」
「When The Sun Goes Down」
「Wanderin' Heart」
「I'll Always Be In Love With You」
「Hard Way」
「Struggin' Blues」


 50年から54年、インペリアル時代の演奏で、3〜4管編成の厚みのあるサポートを得て、
よりR&Bの香りが強く出ているようです。

「Cold Cold Feeling」
 はもちろんこの中でも一番ですが、
「Get These Blues Off Me」 ♪「Through With Woman」
 
などでの彼の情感に満ちたアドリブ・ソロは、聴き応え十分です。
 シングル・トーンでの暖かい音色、時にザッザッザッと、時にシャーン シャーンと刻むシャレたリズムの音色…、
素朴な構成の中で彼のモダンで明るいセンスが生きていて、どれを聴いても心安らぎます。

 彼はモダン・ブルース・ギターの父と呼ばれているように、
エレキ・ギターを最初に使ったブルース・マンらしいのですが、バックのピアノ、ベース、ドラム、
トランペット、サックスなど、時にはもっと分厚いサウンドの中で自由にギター・ソロを展開している点で、
カントリー・ブルースなどとはかなり雰囲気が違います。
 それだけに、彼のギターや歌はジャズを聴いているようなくつろぎやカッコの良さがあります。
チャーリー・クリスチャンとも親交があったと聞いていたので、親しみ易かったのかもしれません。
力強く暖かい声にエレキ・ギターはピッタリで、これがアコースティックだったら、ここまでの粘りと、
間のあるブルース・フィーリングは表現できないんだろうと思います。

 チャーリー・クリスチャンやカウント・ベーシーにも共通する、くつろぎを与えてくれる絶妙な 
“間” が彼のブルースの最大の魅力であることは間違いありません。
 個人的には、昔聴いたとおりのスロー・バラードが好みで、ゆったりしたアドリブ・ソロなどは
最高に心癒されるのですが、ブギ・ウギのリズムに乗ったアップ・テンポのシャッフル・ナンバーも雰囲気があって、
このアルバムのほとんどの曲が気に入っています。

「The Great Blues Vocals And Guitar Of T-Bone Walker」
His Original 1942-1947 Performances /モダン・ブルースの父と
邦題がついています。

「Got A Break Baby」
「Mean Old World」
「No Worry Blues」
「Don't Leave Me Baby」
「I'm In An Awful Mood」
「I Know Your Wig Is Gone」
「T-Bone Jumps Again」
「Call It Stormy Monday」
「You're My Best Poker Hand」
「First Love Blues」
「She's My Old Time Used To Be」
「T-Bone Shuffle」
「That Old Feeling Is Gone」
「Plain Old Down Home Blues」

「Call It Stormy Monday」
 がダブってありますが、
何と言ってもこの時期のbPヒットのようですからしかたありません。

「T-Bone Shuffle」 
などもよく売れたらしいのですが、聴きなじみが無いので、
そうなの、程度しか感じません。
 キャピタル時代の方が、ジャズに近い雰囲気をもっているようですが、このアルバムより、
前のもののほうがよくセレクトされていて聴きやすいので、こちらはあまり聴きません。また、
CDショップでは、沢山の彼のアルバムをみかけますが、もう十分かなと思っています。
 解説にある最初のヒット曲 
「ボビーソックス・ブルース」 ♪「ウエスト・サイド・ブルース」
 
というのが、どんな曲なのか、チョッと気になりますが…。

 この2枚のCDは、珍しく日本語の解説が付いていて、彼の生い立ちからプレイ・スタイル、
そして曲説明なども事細かに書いてあるのですがあまり感動もしません。これが、ハンク・スノウだったら、
これでもかという位聴きなおして、彼のギター・ソロをそっくりコピーしたものですが、
ロック・ギターを弾くわけでもないので、テクニックについては凄いなと思いながら聴いて楽しむだけです。 

 ロックなどに興味があったら、彼の音楽の違った面に注目するのでしょうが、
私の場合、カンザス・ジャズを聴いているような感覚で楽しんでいるので、当然受け取り方が違います。
カウント・ベーシーの絶妙な間、レスター・ヤングの流れるような心地よいフレージングに影響を受け、
それをギターで表現したチャーリー・クリスチャンとイメージがダブります。
実際T・ボーン・ウォーカーのブルースとカンザス・ジャズは同じ背景をもっているようですから、
くつろぎのある音楽という点で共通するのは当然なのかもしれません。
またチャーリー・クリスチャンと影響し合ったんじゃないかなどと、はるか1930年代半ばの、
若かりし彼らの姿を勝手に想像するだけで嬉しくなってしまいます。
…長い間気になっていた、彼のくつろいだブルースに再び巡り会えて、十分満足しています。



 ♪ ビッグ・ビル・ブルーンジー
  

■ 「Big Bill Broonzy 1」


 
ビッグ・ビル・ブルーンジーは、たまたまシカゴ・ジャズを
聴いている過程で名前を知っただけで、
学生時代に彼の歌を聴いた憶えがありません。

社会人になってから初めて聴いた音楽は、時として
素晴らしいものもありましたが、“良いね〜”で終わってしまうことが
ほとんどで、やはりそれ以前の音楽体験のものにはかないません。

 “音楽を聴いて心なごむのは、曲を通じて自分の想い出を懐かしんでいるから〜。”
私の趣味の音楽はこんな調子ですから、身体に染み付いていない音楽については、どうしても頭で聴きがちです。

 そんな私ですが、彼の曲を聴いた時、ジメジメした暗い感じが無いだけでなく、彼の温かい歌声、曲自体の魅力、
独特のギター・スタイルなどが、私の好みと合致したのでしょう、瞬時に心に入り込んできました。
 ブルースの場合、ゆったりと、くつろぎに満ちたものが好きですから、高い音楽性とともに、
彼のそんな雰囲気が気に入ったのかもしれません。同じ理由で、ロニー・ジョンソンも好きなアーティストです。
 
「Big Bill Broonzy」


「How You Want It Done?」 「Bull Cow Blues」 「Long Tall Mama」 
「C And A Blues」 「Big Bill Blues」 「You Know I Got A Raason」 
「Baby I Done Got Wise」 「You Better Cut That Out」 「Just A Dream No.2」
「Lonesome Road Blues」 「Rockin' Chair Blues」 「Key To The Highway」 
「When I Been Drinking」 「I Feel So Good」 「Too Many Drivers」 
「Looking Up At Down」 「All By Myself」 「Wee Wee Hours Blues」 「Tell Me Baby」
「New Shake 'em On Down」 「Night Time Is The Right Time」 「I'm Gonna Move To The Outskirts Of The Town」

 
超廉価版のアルバムですが、とても気に入っています。
 アコースティック・ギターのシンプルな弾き語りだけのものから、エレキ・ギターでのジャズ風な演奏まで、
1枚のアルバムに過不足なく彼の活躍が入っています。
 彼は38年に、ジョン・ハモンドの有名なカーネギー・コンサート:「フロム・スピリチュアル・トゥ・スウィング」に出演して、
アルバート・アモンズやウォルター・ペイジと共演しているというのですから、当時の人気の高さが解るというものです。

「Big Bill Broonzy All The Classic Sides 1928-1937」

 年代別の録音を、5枚のCDにまとめたアルバムですが、
これを買ってチョッと後悔しています。
こんなに沢山あると全部聴くのは苦痛ですし、
もう少し絞り込んだ選曲のほうが、
聴き手としてはアルバムに愛着をもてるものです。

 A〜Eのアルバムの中で、AとCは全体的に録音状態が悪く、Dはピアノ伴奏が多くラグタイム風の雰囲気が漂い、
Eはピアノ、トランペットとジャズ風な演奏が目立ちます。あまり聴き込んでいないのでいい加減な判断ですし、
ジャズ風な演奏を決して嫌いではありませんが、これだけの曲を集めるとアルバムとしての
まとまりに欠けるきらいがあります。
 結局このシリーズでは、32年〜34年を網羅したCD:Bが一番聴きやすいようです。

 「Too Too Train Blues」 「Mistreatin' Mamma」 「Big Bill Blues」 「Mr. Conductor Man」 
 「Worrying You Off My Mind」 「Misteatin' Mama Blues」 「Bull Cow Blues」 「How You Want It Done」
 「Long Tall Mama」 「Friendless Blues」 「Milk Cow Blues」 「Serve It To Me Right」
 …。 

 ギターの弾き語り中心の素朴な曲ばかりですが、彼の独特のスタイルがよく出ていると思います。
「Rukus Juice Blues」 など、トランペット、サックスなどを交えて、ジャズの香り十分というものもありますが。
 私は、黒人の宿命を嘆くような、暗いカントリー・ブルースが苦手ですが、
彼は、エレキ・ギターをいち早くブルースに取り入れたり、サックスや他の奏者との共演を通して、
土着的なブルースを、洗練されたシティ・ブルースに発展させた功労者と言われています。
恐らくシカゴという洗練された土地が、彼のブルースを変えたのでしょう。
 チャーリー・パットンやロバート・ジョンソンの救いの無いブルースなどと違って、
彼の高度で多彩なテクニック、テンポの良さは、都会で働く貧しい黒人だけでなく、
音楽好きな白人からも相当支持されたんだろうなあ、と想像しています。
 


 
♪ その他のブルース・シンガー
 
 
 
   ■ 「Lonnie Johnson」   ■ 「Bessie Smith」       ■ 「Son House」        ■ 「Sonny Boy Williamson」    ■ 「Lightnin' Hopkins」   

 

  
  ■ 「Robert Johnson」    ■ 「Muddy Waters」      ■ 「Little Walter」        ■ 「Elmore James」     ■ 「Spirits Of Blues1/2/3」  
       
 いずれ機会があれば続けたいと思います。


  
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