私の趣味の音楽のページ
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Spotlight 1
@ ジョー・スタッフォード A フランク・シナトラ 


 このページでは、私の最もお気に入り、
女性歌手:ジョー・スタッフォード、そして男性歌手:フランク・シナトラについて書いてみたいと思います。
 資料に基づいた正確な記述などとは無縁の、勝手気ままな感想や、独りよがりの想い出話に終始することを、
あらかじめおことわりしておきます。



 
@ ジョー・スタッフォード  
  
■ 「Jo Stafford」


 子供の頃、S晩アワー、L盤アワー、ユア・ヒット・パレード等、
海外音楽の紹介番組が大の楽しみで、よく聴いていたのですが、
中でもで大ヒットした、ジョー・スタッフォードの
 
「On London Bridge / 霧のロンドン・ブリッジ」
 という曲が
特にお気に入りでした。
ハリのある、洗練された彼女の歌声に、子供心がなぜかときめいて、
彼女とその歌は、その後、ずっと忘れられない存在でした。


・「You belong To Me」
 「Make Love To Me」 等もヒット・チャートで知った曲ですが
 「霧のロンドン・ブリッジ」
 はなぜか他の曲とは違った魅力とインパクトがあって、
曲名を口にするだけで、当時の状況が浮かんでくるほど特別な歌になってしまいました。
 
 その後、彼女の歌を耳にするたびに、懐かしさと愛おしさが高じ、 CD時代になってからは、
39年〜44年の初期の歌から、「Jo+Jazz」 のような、ジャズ物まで、
何枚かのアルバムを聴くことになりました。

 今では、女性ヴォーカリストでは、一番のお気に入りです。
  

■ 「On London Bridge」
 

・ 1944年: 
「I Didn't Know About You」 
「On The Sunny Side Of The Street」
 
パイド・パイパーズをバックに歌うジョーは、
すでに、一流のソロ・シンガーです。

「Old Acquaintance」 「How Sweet You」
 独立のきっかけになった、ヒット・ナンバーです。

「I Love You」 「It Could Happen To You」
 確かな歌唱力と、情感に溢れていて魅力的です。
 
・ 1945年: 
「There's No You」 「That's For Me」 「Symphony」 「Walkin' My Baby Back Home」
 スローな曲でも、軽快な曲でも、自分のものとして歌いこなしています。

・ 1946年: 
「Ridin' On The Gravy Train」
 珍しく、ナット・キング・コールのピアノをバックに、軽快に歌うジョーが素敵です。


 ジョーの声は、若々しく、詩のもつ意味をかみしめるような、丁寧な歌い方、よく伸びる澄んだ声は、
オーケストラをバックに、堂々たる魅力に溢れています。

 「Jo Stafford Collectors Series」 
 「Spotlight On Jo Stafford」 などのCDアルバムで、当時のヒット曲を楽しんでいます。

▽ 1955年: 「Once Over Lightly Jo Stafford And Art Van Damme Quintet」
・ 
「Almost Like Being In Love」 「A foggy Day」 「Autumn Leaves」 「But Not For Me」
 アコーディオンの、アート・ヴァン・ダム・クインテットをバックに歌う、珍しいアルバムですが、
ここでも、スィンギーで、素敵なジョーに変わりはありません。

 「Autumn In New York」
♪♪ 
「Autumn In New York」 「Smoke Gets In Your Eyes」 「If I Loved You」 
「Just One Of Those Things」
名曲ぞろいの、大好きなアルバムです。

 沢山のアーティストが、「Autumn In New York」 を歌っていますが、
ここでのジョー・スタッフォードが、ベストだと思っています。
彼女は、やや、けだるげで、やるせなげです。
 ポール・ウエストンのオーケストラによって、増幅される寂寥感がたまらない魅力です。
スタンダード曲を、原曲に忠実に歌う姿勢と、優れた歌唱力に心がなごみます。

▽ 「Starring Jo Stafford」

・ 
「Red River Valley」 「Fools Rush In」 「The Gentleman Is A Dope」 「Day By Day」
 幅広いジャンルを、すべて自分のものとして、歌いこなしています。彼女の実力を、垣間見る思いです。
  
 「Jo Stafford The Big Band Sound」 
♪♪ 「Love For Sale」  「I Got It Bad And That Ain't Good」 
「Takin' A Chance On Love」 「Early Autumn」 「Speak Low」 
「Candy」 「Anyplace I Hang My Hat Is Home」 「Old Devil Moon」
 
「Teach Me Tonight」「The Night We Called It A Day」 「The One I Love」
 
「Anything Go」 「Whatcha Know Joe?」 「Tomorrow Mountain」

 やはり、彼女は、スィング・バンド出身だと納得させられる、見事なスウィング感と、歌唱力です。
ポール・ウエストン、ビリー・メイ、ベニー・カーターなどのビッグ・バンドを相手に、
曲のイメージに合わせて、堂々と、しっとりと、優しく聴かせてくれます。
 私が、男性ではフランク・シナトラ、女性では、ジョー・スタッフォードが最高と決める理由が、ここにあります。

 このアルバムの曲全てが気に入っていて、いつでも聴けるように手元に置いています。


♪♪・ 「You belong To Me」 「Make Love To Me」 子供の頃からおなじみの曲です。
 
「Come Rain Or Come Shine」 「All The Things You Are」 「Stardust」 「I Should Care」
 ビッグ・ヒットの数々ですが、多才という言葉だけでは、彼女の魅力を言い尽くせません。
他の歌手でしばしば感じる、テクニックというものを、彼女からは微塵も感じません。
ストレートに歌って、十分その歌の素晴らしさが伝わってくるのです。

 圧倒的な歌唱力、豊な歌心、素直な語り口…それが心を打つのです。

▽ 1959: 「Jo Stafford Ballad Of The Blues」
彼女の歌を通して、ブルースの変遷を知ることが出来る、何ともユニークなアルバムです。

「The Blues Is An Old, Old Story」 「Street Cries」 「John Henry」 
「Sometimes I Feel Like A Motherless Child」 「Nobody Knows The Trouble I've Seen」 
「The Blues Is A Tale Of Trouble」 「Kansas City Blues」 「Memphis Blues」 
「The Blues Is A Traveling Thing」 「He's Gone Away」 「Seems Like When It Comes In The Morning」 
「Every Night When The Sun Goes In」 「Times Change And Things Change」 「Lover Man」 
「Blues In The Night」 「The Blues Is An Old Old Story」


 曲名を順に並べるだけで、このアルバムの内容が理解できますが、私の音楽好きの根っ子には
ブルースがありますから、ジョーがこのようなアルバムを残してくれたことに対して、大いに感動していますし、
情感・歌唱力とも申し分ない彼女だからこそ生まれたアルバムだと思っています。

▽ 1960年: 「Jo+Jazz」 

 「Just Squeeze Me」 「For You」 「Midnight Sun」 「You'd Be So Nice To Come Home To」 
「I Didn't Know About You」

 スィンギーに、優雅に、時にさらっと、曲目にあわせて雰囲気のあるボーカルを聴かせてくれる彼女は、
最高にジャズ・シンガーです。
 
ジョニー・ホッジスも好演していますが、テナー・サックスがベン・ウエブスターということで、複雑な気持ちです。
ここでは、かなり抑えたプレイをしていますが、基本的に彼の音色が好きではありませんから、残念ながら、
気に入ったアルバムとはいえません。
 
 
■ 「America's Most Versatile Singing Star」

♪♪ 「I Will be Seeing You」 は私にとって特別な歌です。
うまいとか、いい曲だとかを通り越して、ハートが揺さぶられます。
 バイオリンを多用したオーケストラとのハーモニーで、
切々と歌い上げる心情が、こちらにまでひしひしと伝わってきて、
…切ないのです。
 彼女の、気品と透明感のある歌声に心打たれ、
この曲は、私のボーカル部門ランキング、トップ3以内には位置します。


▽ 「Jo Stafford America's Most Versatile Singing Star / Greatest Hits」
というアルバムがあります。
確かに彼女は、どのジャンルの音楽も、違和感無く歌いこなしてしまう、多才なアーティストです。
 カントリー・ソング、ポップス、スィング・ジャズ、ブルース、モダン・ジャズ…、
どれを聴いても一級品の歌手なんて、他にいません。
 ハンク・ウイリアムズの 「Jambalaya」 も彼と同じ年に大ヒットさせていたのですが、
いずれ、カントリー・ミュージックのページで触れたいと思っています。


▽ 「Jo Stafford The Vintage Years」 
▽ 「Best Sellers Jo Stafford」
などのコンピレーション・アルバムも、内容が重複していますが、
その時々の気分で聴き分けています。いかに好きな彼女でも、
「G I Jo」だけは手が出ません。彼女が軍服を着ている、その敵国は日本でしたから…。


 子供の頃聴いた、例の曲のおかげで、その後、ジャンルを問わない、
素晴らしい歌唱力・魅力を知ることが出来ました。
 彼女の歌を聴いていると、“誠実”とか“優雅” という言葉が思い浮びます。
それに、スローな曲での、しっとりとした叙情表現。アップテンポでの、パンチの効いた、ノリの良いスウィング感。
オーソドックスに歌ってこれだけの説得力は、時代を超越した、魅力ある歌手であることを証明しています。
 彼女の歌声は、トランペット・ヴォイスと言われたようですが、そんな単純な言葉で、
彼女を表現しないでもらいたいものです。

 
それにしても、現代は、聴きたい音楽をさしたる苦労も無く、すぐ手に入れることが出来る、ありがたい時代です。
あの、
「On London Bridge」 が、1956年の、ヒット曲だったことも、今になって解りました。

 音楽に関しては、十分経済や、情報技術発展の恩恵にあずかっています。

  

■ 「Autumn In New York」


※ 子供の頃、ラジオで:雑音の間から一生懸命聴き取った一曲の貴重さ。
大学時代でも、輸入版に至っては、アパート代と同じぐらいで、
とても買えなかった一枚のLPレコード…。

 当時の音楽に関連した想い出は、生活体験と重なって、
何ものにも変えがたい心の財産となっています。
そして、手に入れるCDは、想い出の欠落したパーツを埋めるためと、
叶わなかった願望を、今、満たすためなのです。

 昔からのレコード。ラジオから録音した、様々な音楽特集の、膨大なカセット・テープ。購入した市販の音楽テープ。
これらと重複するものを、不合理と思いながら、CDで買いなおすのはしんどいと思う反面、店で、
懐かしいアーティストに出会う楽しみもあります。

 いわゆる音楽マニアのように、“良い音響設備のもと、レコードで聴かなければ納得しない” ということも無く、
ただひたすら気軽に音楽を聴きたい私には、CDがとても便利です。
 また、ジャンルにこだわった本当のコレクターではなく、“個人的な想いいれ” が動機のため、
節操のない買い方・聴き方になってしまいます。
 音楽好きのわりには、外出の際、ヘッドフォンで聴きたいと思ったことは一度もありません。
深い理由は無いのですが、やはり家で何かしながら、何もしないで、…のんびり聴きたいものです。

 
 

新しい発見も含め、「厳しい時代こそ情緒も大事に!」を隠れ蓑にして、
せいぜい趣味の世界を膨らませていこうと思っています。




 A フランク・シナトラ
 
  
■ 「Frank Sinatra」


 女性歌手で、一番のお気に入りが、ジョー・スタッフォードとすると、
男性歌手では、もちろんフランク・シナトラです。

小さい頃からずっと、フランク・シナトラと、ナット・キング・コールは、
身近な歌手でした。
この2人とルイ・アームストロングは、特集番組も多かったせいか、
随分テープ録音したものでした。
女性では、エラ・フィッツジェラルドやサラ・ヴォーンの録音が沢山残っています。

 シナトラや白人女性歌手と違って、黒人の女性ヴォーカリストについては、
今は、チョッと食傷気味というのが偽らざるところです。
年令と共に、軽快な音楽を好むようになってきたのかもしれません。
   

■ 「Sinatra & Dorsey」
 

 シナトラが、トミー・ドーシー楽団に移籍した40年、
ジョー・スタッフォードは、まだトミー・ドーシー楽団のボーカル・グループ、
パイド・パイパーズのメンバーでした。
ジョー・スタッフォードでもっとも好きな歌、
「I'll Be Seeing You」 も、
シナトラが40年に歌って大ヒットさせています。
彼は、トミー・ドーシーの、トロンボーン奏法を研究し、独自の歌唱法をあみだしたそうです。
          
 42年に独立してソロ活動を始め、彼のバラッドは“ザ・ヴォイス”と言われて、大変な人気だったようです。
彼の歌手へのきっかけでもあった、アイドルのビング・クロスビーを抜いて、
男性ボーカリストNO・1に輝いたのもこの頃のようです。
が、後に、ハリー・ジェイムス楽団、トミー・ドーシー楽団や、40年代の彼の歌を聴いても、
50年代の全盛期を知った後だっただけに、いまいち、物足らなさを感じたものでした。


・「I'll Never Smile Again」 「All The Things You Are」 「Oh, Look At Me Now」 「I Should Care」 「These Foolish Things」
 「My Melancholy Baby」 「Where Or When」 「Dream」 「September Song」 「Sweet Lorraine」 「Autumn In New York」
 等、
40年代のヒット・ソングですが、 声にも深みが無く、まだ表面的なスタイリストの域を脱していないシナトラという感じです。

 でも、
「Star Dust」 などを聴くと、トミー・ドーシーのほのぼのとしたトロンボーンの音色に加えて、
ジョー・スタッフォードがパイド・パイパーズの一員としてバック・コーラスをつとめるという、
夢のような共演を楽しむことが出来て…満足感も当然あります。


▽ 43年〜52年のコロンビア時代のアルバム: 「The Essential Frank Sinatra」
・「Saturday Night 」 「I've Got A Crush On You」 「Oh, What It Seemed To Be」 「Nancy」 「The Coffee Song」
「The House I Live In」 「Someone To Watch Over Me」 「Five Minutes More」 「One Fore My Baby」 「Day By Day」
「Mam'selle」 「I'm A Fool To Want You」 「Put Your Dreams Away」 「All Of Me」 「The Birth Of The Blues」

 
発表当時はそれぞれ人気があったようですが…、バラッドはともかく、スィング・ナンバーに物足らないものを感じます。
大抵の曲をキャピタル時代にカバーしていますが、それらは同じ曲とは思えないほど、見事なスィング感に溢れています。
 ライナーには、エヴァ・ガードナーとの恋愛話などが書かれていますが、
この後、どうやら別離とスランプの時期があったようです。
 重く沈んだシナトラのバラードは、昔も今もあまり聴く気にはなりません。


 何はともあれ、シナトラの最も魅力的な歌を聴けるのは、53年以降のキャピトル時代だと思っています。


 その前に、シナトラ以外の男性ヴォーカリストについて、一言…。

■ 「Fred Astaire」


フレッド・アステアについて。
 
リアル・タイムに観た彼のミュージカル映画で今でも憶えているのは、
 「絹の靴下」 「足長おじさん」 
ぐらいですが他にもいくつか観ているはずです。
既に初老の紳士という感じでしたが、上品なダンスと優しい歌声は子供心にもかなりのインパクトがありました。
ストーリーもハッピー・エンドものでしたから、より良いイメージが残っているのかもしれませんが…。

 50年代ハリウッドのミュージカル映画を沢山観ましたが、
彼こそ本物のミュージカル・スターだという印象があったものです。


 彼のアルバム:「Let's Face The Music And Dance / Fred Astaire」
・「Let's Face The Music And Dance」 「Top Hat White Tie And Tails」 「Things Are Looking Up」
 「A Foggy Day」 「Nice Work If You Can Get It」 「The Way You Look Tonight」 「They All Laughed」
 「They Can't Take That Away From Me」 
「Let's Call The Whole Thing Off」 
「Dearly Beloved」
 「I'm Putting All My Eggs In One Basket」 「Cheek To Cheek」 「You Were Never Lovelier」
 「Pick Yourself Up」 「A Fine Romance」 「Never Gonna Dance」 「Slap That Bass」 
「Shall We Dance」
 「One For My Baby」 「Beginner's Luck」 「Change Partners」 「Isn't This A Lovely Day?」 「Let Yourself Go」
 
「Night And Day」 「Puttin' On The Ritz」 
 


 
全ての曲に聴き覚えがあります。
 当然彼の30年代のミュージカルなど観ていませんから、ほとんどが後のアーティストのカバーでですが…。
特にシナトラやエラの歌ったものの中には、それがオリジナルだと思って聴いていたものがいくつかありました。
 彼のステップも見事に録音されていて、一流のダンサーであることを想い出させますが、
それより彼のヴォーカルがなんともあか抜けているのです。
若い頃のハリと艶のある歌声は、私が当時映画館で聴いたものより数段魅力があります。

 それにしても、現在スタンダード・ソングと言われているほとんどの曲が、
ブロードウェイ・ミュージカルのために作られたようで、チョッと不思議な感じがします。
もっとも、劇場かラジオしかない時代ですから、ガーシュインも、ロジャース&ハートも、カーン&ハマーシュタインも、
コール・ポーターも、ブロードウェイが一番の稼ぎ場所だったのでしょう。

 そんな古い時代既に大活躍していたスターに、映画館とはいえリアル・タイムで巡り会えたのは幸せというものです。
      
  
■ 「Bing Crosby」

ビング・クロスビーについて。

・「Dinah」 「Shine」 「White Christmas」 「Paper Doll」 「Sweet Geogia Brown」
 「When You Are Smiling」 「Cheek To Cheek」
 
 決定版といわれるヒット曲も沢山ありますが、
 …シナトラと違うのは、彼には色気がないということでしょう。
ジャズ・フィーリングはサッチモを参考にしたらしいのですが、歌を聴いてもあまりジャズの香りがしないのは、
活躍した時代が古い、というだけではないはずです。
古くてもフレッド・アスティアからは、未だに男の粋な魅力、艶やかなダンディさを感じていますから…。

 彼のヒット・ソングを集めたCDでは、

 「Begin The Beguine」 「Lave En Rose」 「You Belong To My Heart」 「Play A Simple Melody」
 「Dear Hearts And Jentle People」 「Changing Partners」 「Beyond The Reaf」 「Here Ends The Rainbow」
 「Harbor Lights」 「Sweet Lailani」 「Siboney」 「Autumn Leaves」 「September Song」 「Mona Lisa」
 「It's Been A Long Long Time」 「Swinging A Star」 「I Surender Dear」 「Tea For Two」 「Too-Ra-Ra-Loo-Ral」
 「My Blue Heaven」 「Some Enchanted Evening」 「Where The Blue Of The Night Meets The Gold Of The Day」
 …
30〜50年代のポピュラー・ナンバーが楽しめます。

 どんな歌でも、彼独特のソフトな語り口で歌いこなしてしまう歌唱力は、
さすがヴォーカルの草分けと思わせる説得力がありますが、やや物足らないのも確かです。

 ボブ・ホープとコンビの、珍道中シリーズの映画を何本か観ましたが、あまり面白くなかった憶えがあります。
ボブ・ホープとジェーン・ラッセルの 「腰抜け二挺拳銃」 などのほうが数段笑えました。
基本的に、シナトラが遊び人としたら、クロスビーは牧師さんという雰囲気です。

 ジャズには、“酒・ギャンブル・紫煙・女”といったイメージが、チョッとは欲しいところです。〜かた過ぎてもいけません。

  

 ■ 「Perry Como」

ペリー・コモについて。
 
彼は映画ではなくテレビで顔を知りました。
大学時代、彼の司会の音楽番組がありましたから…。

「パパ・ラヴス・マンボ」 「キャッチ・ア・フォーリング・スター」 
などで抱いていたイメージ通り、優しそうな顔・物腰と家庭的な雰囲気をもった歌手でした。

 癖の無い歌手でしたから、恐らく今でも相当ファンがいるのじゃないでしょうか?。
彼もビング・クロスビーを目指したようですが、リアル・タイムにも沢山のヒット曲がラジオから流れていて、
少なくとも日本では、シナトラよりずっとポピュラーだったと思います。
 ただし、子供心に欠点が無いのが不満だったのか、上手いけれど特別好きでもなかったというのが正直なところです。

 映画:「バラの刺青」の主題歌だけは、なぜか特別気に入っていました。
映画の中で彼が歌ったのかどうかは憶えていませんが、美しいメロディのスロー・ワルツでした。

 彼とエディ・フィッシャーがどうしてもセットで思い浮かんでしまうのは、当時、2人揃ってアット・ホームな雰囲気の歌で
ヒット・チャートを賑わしていたからでしょう。


▽「The Best Of Perry Como」
・「It's Impossible」 「Till The End Of Time」 「Prisoner Of Love」 「“A” You're Adorable」 「A Bushel And A Peck」
 「Don't Let The Stars Get In Your Eyes」 「Papa Loves Mambo」 「The Rose Tattoo」 「Catch A Falling Star」
 「Route 66」 「Smile」 「My Favorite Things」 「What's New」 「The Shadow Of Your Smile」 「Yesterday」
 「Slightly Out Of Tune」 「Dream On Little Dreamer」 「For The Good Times」 「And I Love You So」
 「The Wind Beneath My Wings」

 40年代から80年代までのヒット・アルバムのようですが、
晩年の活躍を知りませんでしたから、CDの解説を読んで随分息の長い活躍をしていた事を初めて知りました。
  
■ 「Mel Torme」


メル・トーメについて。
・「It's Only A Paper Moon」 「Autumn Leaves」 「The Girl Next Door」 
「What Is This Thing Called Love」 「I 've Got You Under My Skin」
 
メル・トーメは、ヴェルヴェット・フォグとかで、実力派の歌手として定評があります。
スタンダード・ナンバーを歌ったテープがそこそこ残っているのですが、未だにあの猫なで声を好きになれません。
 これは好みの問題なのでどうしようもないのですが…。 

 彼のアルバム
 ▽「Swings Shubert Alley」 ▽「Mel Torme Reunion」 等、
器楽奏者のようなジャズ・フィーリングたっぷりな歌い口も、ファンにとってはたまらない魅力なんでしょうが、
買ってから一度しか聴いていません。
 この微妙なかすれ声に違和感を感じなくなる時までお蔵入りということになりそうです。
 
■ 「Dean Martin」


ディーン・マーティンについて。
 同じ柔らかい感じでも、メル・トーメと違って
ディーン・マーティンには男の魅力がたっぷりです。
彼は、ジェリー・ルイスとのコンビで、「底抜けふんだりけったり」 「底抜けニューヨークの休日」 など、
チョッとお間抜けな2枚目役がとても良かったのですが、私の中学時代、コンビを解消してしまい、
とてもガッカリした憶えがあります。

 その後、ジェリー・ルイスだけが喜劇を引き継いでいったのですが、ディーン・マーティンも、随分映画で好演していますし、
彼の場合はスクリーンと歌とのギャップがあまりないところが魅力です。

 彼のラブ・バラッドはダンディで、チョッと危険な男の色気を発散する、独特の味があります。
声質から言ってもビング・クロスビーの影響を強く感じますが、一見チャランポランな雰囲気がなんとも魅力的です。

 
「Everybody Loves Somebody」  は、60年代爆発的にヒットした彼の代表曲です。
シナトラの親友ということが、彼を気に入っている大きな理由でもありますが、技術的なことより、
音楽に最も必要な “くつろぎ” を彼の歌は提供してくれます。
 いつもタバコをくゆらし、手にはウイスキー・グラスというのが彼のイメージですが、
事実映画などではいつもそんなシーンが観られたものです。

▽「The Very Best Of Dean Martin」
「Gentle On My Mind」 「Memories Are Made Of This」 「Little Ole Wine Drinker Me」 「The Door Is Still Open」
 「Volare」 「InThe Chapel In The Moonlight」 「Ain't That A Kick In The Head」
 「You're Nobody 'Til Somebody Loves You」 「Let Me Go Lover」 「Somewhere There's A Someone」
 「Return To Me」 「The Nauty Lady Of Shady Lane」 「Rio Bravo」 「Sway」 「Powder Your Face With Sunshine」
 「I Will」 「Kiss」 「Under The Brigges Of Paris」 「Houston」 「Everybody Loves Somebody」
 

 48年の「Powder Your Face With Sunshine」 から69年の 「Gentle On My Mind」 までのヒット曲がこれ一枚で楽しめます。
  
■ 「Sammy Daivis Jr.」

サミー・デイヴィス・ジュニアについて。
 シナトラ一家のもう1人、サミー・ディビス・Jrは、
優れた才能は理解できますが、
好みから言うと声の硬さがチョッと気になります。
彼の多彩なエンターテインメントぶりは音だけでは満足できないというのも、他の歌手と違うところです。

 気に入っている手元のテープは、サンズ・ホテルのライブ録音のものです。
シナトラが先に歌い、一段と盛り上がったところでサミーが登場、
いきなり
 「ウイズ・ザ・ソング・イン・マイ・ハート」 を高らかに歌い上げ、
「オン・ナ・クリア・デイ・ユー・キャン・セイ・フォーエバー」
 を、例のコンコン・チキコンを入れながら歌うという、
何ともオシャレで楽しいものです。
 続いて 
「ザ・バース・オブ・ブルース」 「アズ・ロング・アズ・シー・ニーズ・ミー」 「ロンサム・ロード」 「イエス・アイ・キャン」
 「アイ・ウオント・ビー・ウイズ・ユー」 「トゥ・クロース・フォー・コンフォート」 「サムスィング・ガッタ・ギブ」 「ヘイゼア」
 …
素晴らしい熱唱ばかりです。
 さすがにこの後、御大シナトラが再び登場して、
「エンジェル・アイ」 「マイ・カインド・オブ・タウン」 を歌って
ステージの最後を飾るのですが、豪華なライブの雰囲気がモロに伝わってきて、十分聴き応えのあるテープです。

 音楽を聴くだけの場合、ライブものはあまり好きではないのですが、
世界のトップ・エンターテインメントのライブとなると話は別です。
 60年代、ラスベガスにはシーザース・パレスのようなホテルも無く、
サンズとリヴィエラあたりでしか、こんな豪華なショウは見れなかったでしょう。

 それだけに今以上にアーティストと観客が一体となってショウの興奮を味えたはずで、
この頃ラスベガス行ってみたかったと、このテープを聴くたびに思います。

▽ 「Best Of Sammy Davis, Jr.」
  
「The Candy Man」
 「What Kind Of Fool Am I」 「Gonna Build A Mountain」 「Bye Bye Blackbird」 「Lady Is A Tramp」
 「Rock-A-Bye Your Baby」 「Mr. Mojangles」 「I've Gotta Be Me」 「The Birth Of The Blues」 「Talk To The Animals」 
 
このアルバムでの出色は、なんと言っても 6曲目の Rock-A-Bye Your Baby」 です。

 ライナーには1977年シドニー・オペラ・ハウスのライブとありますが、
観客が大盛り上がりするような物まねがふんだんに飛び出すのです。
 最初は普通に歌いだし、途中からハンフリー・ボガード、ジェームス・キャグニー、ケイリー・グラント、マーロン・ブランド、
ディーン・マーティン、昔のコンビ:ジェリー・ルイスまで…、
恐らく声を真似るだけでなく、そろぞれのアーティストの仕草を見事に演じているのでしょうが、こういう曲を聴いてしまうと、
彼はライブで観なくては〜、と思ってしまいます。

 ここでも歌っている彼のヒット:
「The Candy Man」 「Mr. Mojangles」  などはあまり好きではなく、
聴くだけなら 
「ヘイゼア」 あたりを歌うサミーが、あまり重くなく気楽に楽しめるようです。

 シナトラやディーン・マーティンと違って、黒人の宿命といった暗さや、生真面目さを感じるところが、
手放しでファンになれない理由かもしれません。
 
■ 「Tony Bennett」


トニー・ベネットについて。
 彼はチョッとマッチョな感じですが、大好きな歌手です。
もう少し欠点があれば申し分ないのですが…。
・1962年の
「I Left My Heart In San Francisco」 は、今や彼の代名詞となったヒット曲で、
私の好みで言えばシナトラ亡き後、彼ぐらいかなと思っています。
・「Fly Me To The Moon」 「It's A Sin To Tell A Lie」 「Speak Low」 「Mam'selle」 「The Shadow Of Your Smile」 …、
彼の歌がベストと言われるナンバーも沢山あります。ベーシー楽団でのアルバムも気に入っています。

▽ 「Tony Bennett 16 Most Requested Songs」
「Because Of You」 「Stranger In Paradise」 「Rags To Riches」 「Boulevard Of Broken Dreams」 「Cold Cold Heart」
 「Just In Time」 「I Left My Heart In San Francisco」 「I Wanna Be Around」 「Who Can I Turn To」
 「For Once In My Life」 「This Is All I Ask」 「Smile」 「Tender Is The Night」 「The Shadow Of Your Smile」 
「Love Story」 「The Good Life」 


 52年のヒット
 「Because Of You」 から70年の 「Love Story/ある愛の詩」 までのポップスを特集したアルバムですが、
彼の落ち着いた歌声に心惹かれます。

▽「The Tony Bennett Bill Evans Album」 
…しっとりとしたスロー・バラッドにも優れた歌唱力を感じます。

  
■ 「七人の愚連隊」 : 1964


 シナトラ一家のまとまりが一番良かったのは
60年代初めの頃だったようで、映画も立て続けに上映されましたが、
当然その全てを観ています。

 シナトラ、ディーン・マーティン、サミー・デイヴィスJr. に加えて
ビング・クロスビーが出演していた事で忘れられないのが
「七人の愚連隊」 というギャング・ミュージカル映画です。
ローリング・トゥエンティ時代のシカゴが舞台で、
私のイメージどおりビング・クロスビーは、ここでもニセ牧師を演じていました。

 「マイ・カインド・オブ・タウン」 をシナトラが歌っていたはずですが、映画としてはイマイチで、
同じシナトラ一家のものでは、西部劇の 「テキサスの四人」 「荒野の三軍曹」のほうが数段面白かったものです。

 シナトラらしい映画といったら 「オーシャンと11人の仲間」 が一番ですが、後で触れたいと思います。

 話が随分わき道へそれましたが…シナトラのアルバムの話に戻ります。

☆シナトラのベスト・アルバムは、53年以降にあります。

▽ 1953年: 「Songs For Young Lovers」

「My Funny Valentine」 「The Girl Next Door」 「A Foggy Day」 
「Like Someone In Love」
 「I Get A Kick Out Of You」「Little Girl Blue」 
「They Can't Take That Away From Me」
 「Violets For Your Furs」 

 
バラッドを特集したものですが、彼の歌唱力、粋なフレージングは、
それぞれの歌のベストの表現だと思います。
当時、女性にとっては、たまらない魅力に満ちたアルバムだったろうと想像します。
「Violets For Your Furs」 など、私もイイなー、と思うのですが、トミー・ドーシー時代に、
すでに、ヒットさせているらしいのです。
60年を経て、なお新鮮な感動を与えてくれということが、素晴らしい歌手の証拠です。

 1954年: 「Swing Easy」
「Just One Of Those Things」 「I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter」 「Sunday」
 
「Wrap Your Troubles In Dreams」 「Taking A Chance On Love」 「Jeepers Creepers」 「Get Happy」 「All Of Me」 

 タイトルどおり、シナトラのスィンギーなヴォーカルが一杯のアルバムです。
ネルソン・リドルのアレンジは、やや大人しく、デリケートなところがあり、後の、
「Come Swing With Me」  で、
バックをつとめる、ビリー・メイのほうが、より陽気なスィング感を表現する時は、適していると思っています。
 どちらにせよ、この二人は、シナトラにとって不可欠な、優れたアレンジャーであることは、間違いありません。

 キャピタルへ移籍してのレコーディング…。彼のベスト・アルバムと言われるのも納得です。
CDでは、この二枚のLPがカップリングされていて、この上ない幸せです。
 
 1956年:  「Songs For Swingin' Lovers!」
「You Make Me Feel So Young」 「It Happened In Monterry」 「You're Getting To Be A Habit With Me」
 「You Brought A New Kind Of Love To Me」 「Too Marvelous For Words」 「Old Devil Moon」
 「Pennies From Heaven」 「Love Is Here To Stay」 「L've Got You Under My Skin」 「I Thought About You」
 「We'll Be Together Again」 「Makin' Whoopee」 「Swingin' Down The Lane」 「Anything Goes」 「How About You」  


 これもネルソン・リドルとのコンビで、アルバム全体が若々しく軽快なスウィング感に溢れています。
タイトルにふさわしいシャレた選曲や、シナトラの優しい語り口に好感が持てます。
 ネルソン・リドルは、トミー・ドーシー楽団でプレイをしていた時にシナトラを観察していたらしく、
このアルバムでも彼の長所をよく引き出しているのだろうと想像できます。リラックスしたシナトラが楽しめる…
好きなアルバムです。

▽ 1956年:  「A Awingin' Affair!」
「Night And Day」 「I Wish I Were In Love Again」 「I Got Plenty O' Nuttin'」 「I Guess I'll Have To Change My Plans」
「Nice Work If You Can Get It」 「Stars Fell On Alabama」 「No One Ever Tells You」 「I Won't Dance」
「Lonesome Roar」
「At Long Last Love」 「You'd Be So Nice To Come Home To」 「I Got It Bad And That Ain't Good」
「From This Moment On」 「If I Had You」 「Oh! Look At Me Now」
「The Lady Is A Tramp」


 ロマンティック・スィングの続きということでしょうが、 「Songs For Swingin' Lovers!」に比べると、
慣れもあるのでしょう…やや歌い方にラフな感じがします。
 オリジナルのメロディや歌詞に忠実に歌って、素晴らしさが発揮されるところが彼の魅力ですが、
崩した感じがリプリーズ時代の彼を思わせます。だから嫌ということは全くありませんが。
 CDにはボーナス・トラックとして「夜の豹」に使われた「The Lady Is A Tramp」 が入っています。
この曲だけは、1957年に録音されたもののようです。

▽ 1957年: 「Come Fly With Me」 
「Come Fly With Me」 「Around The World」 「Isle Of Capri」 「Autumn In New York」 「April In Paris」 「Brazil」
 「Chicago」
 「South Of The Border」 
 世界の都市をテーマにしたアルバムですが、「Come Fly With Me」 「Chicago」 などスィンギーなナンバーは、
やはり特別です。

 「South Of The Border」 は、かなりヒットし、少年時代、私がシナトラを好きになった、思い出の一曲でもあります。

▽ 1958年: 「Come Dance With ME」
 
「Come Dance With Me」 「Something Gotta Give」 「Just In Time」 「Dance In The Dark」
 「I Could Have Dansed All Night」 「Cheek To Cheek」
 

 ビリー・メイをバックに、ごきげんにスィングする、魅力一杯のアルバムです。
声の伸び、歌心、スィング感、絶頂期のシナトラが満喫できます。ここで歌うシナトラが、
これらの歌の決定盤であり続けることでしょう。私の考える、一番シナトラらしいアルバムです。

▽ 1960年: 「Nice 'n' Easy」
♪♪ 「Nice 'n' Easy」 「That Old Feeling」 「How Deep Is Ocean」 「I've Got A Crush On You」 「You Go To My Head」
 「Fools Rush In」 「Nevertheless」 「She's Funny That Way」 「Try A Little Tenderness」 「Embraceable You」
 「Mam'selle」 「Dream」 

 
彼が過去に歌ったものを、あらためてアルバムにしている点では、「Come Swing With Me」 と同様ですが、
こちらは全てゆったりとして温かな感じのラヴ・バラッドばかりですし、「Only The Lonely」 のような暗さもありません。
 人生経験を重ね、声にも深みが増した、円熟期の自信に満ちた歌声で、
シナトラのスロー・バラッド・アルバムの中でも出色だと思います。


▽ 1960年: 「Sinatra's Swingin' Session !!! and more」
♪♪ 「When You're Smiling」 「Blue Moon」 「S'posin'」 
「It All Depends On You」 「It's Only A Paper Moon」
 「My Blue Heaven」
 「Should I」 「September In The Rain」 「Always」 「I Can't Believe That You're In Love With Me」
 「I Concentrate On You」 「You Do Something To Me」
 「Sentimental Baby」 「Hidden Persuasion」 「Ol' Mac Donald」 


 ネルソン・リドルの編曲で、シナトラもいつものようにスィングしているのですが、チョッと物足らなさを感じるアルバムです。
全体に演奏時間が短いせいかもしれませんし、バディ・コレットのテナーや時々みられるソロ・プレイが原因なのかもしれません。
 「Songs For Swingin' Lovers!」 のようなロマンティックな雰囲気が欲しい所ですが、
だからといって、聴き馴染んだスタンダード揃いですから嫌いなわけはありません。   
    
▽ 1961年: 「Come Swing With Me」 「Come xxx With Me」 3部作の一枚ですが、
レコードを持っていたせいもあって、今でも、このアルバムが一番気に入っています。
♪♪ 「Day By Day」 「Sentimental Journey」 「Almost Like Being In Love」 「Five Minutes More」
 
「American Beauty Rose」 「Yes Indeed」 「On The Sunny Side Of The Street」 「Don't Take Your Love From Me」
 
「That Old Black Magic」 「Lover」 「Paper Doll」 「I've Heard That Song Before」 
 全ての曲を気に入っていますし、昔、レコードが擦り切れるほど聴いて、今ではCDで楽しんでいます。

 ステレオ効果を十分考慮した録音で、ビリー・メイのオーケストラをバックに、スウィング全盛時代のヒットナンバーを、
シナトラが気持ちよく歌っています。
 中でも 
「Five Minutes More」 「I've Heard That Song Before」 などゴキゲンなスウィング・ナンバーは、
身も心もリフレッシュしてくれる心地よさです。私には、この時期の声が、スウィングするシナトラが最も好きで、
これを基準にしてボーカリストを評価しています。

※ LPには、当時の想い出が詰っています。CDに変わって、ボーナス・トラックが追加されているものが多いのですが、
ヴォーカルでは特に、突然違ったバージョンが流れてくると違和感があります。ここにも5曲追加されていて、
有りがたいのですがイメージが違いすぎて、あまり聴く気になりません。
  
「South Of The Border」
 70年代に買ったのだと思いますが、このカセット・アルバムは、
何度も何度も聴いて、今では全ての曲が気に入っています。
♪♪「South Of The Border」 「All Of Me」 「I've Got You Under My Skin」 
「Three Coins In The Fountain」 「Nice N' Easy」 「September Song」「Night And Day」
 「Chicago」 「All The Way」 「Hey! Jealous Lover」 「Come Dance With Me」 「My Funny Valentine」


 アルバム・タイトルが、50年代に聴いた懐かしい「国境の南」でしたから手が出たのでしょうが、
選曲が素晴らしく、彼の全盛期の代表曲ばかりが揃っています。
今となっては、CDでないのが悔やまれます。

▽ 1966年: 「Moonlight Sinatra」
  
♪♪ 「Moolight Becomes You」 「Moon Song」 「Moonlight Serenade」 「Reaching For The Moon」
 「I Wished On The Moon」 「Oh,You Crazy Moon」 「The Moon Got In My Eyes」 「Moonlight Mood」
 
「Moon Love」「The Moon Was Yellow」 

 テーマも良ければ選曲も良く、そして当然、演奏・歌も良し。という素晴らしい内容です。
ネルソン・リドルのアレンジも素晴らしく、月にちなんだ歌を、心を込めて歌っています。
円熟した力量での素直な語りかけに、心が洗われる清々しさをおぼえ、夜のひととき、今の私にこのCDは欠かせません。

 メル・トーメにも同様のアルバムがありますが、シナトラの男のロマンに比べて、
猫なで声での、女々しい歌はゴメンナサイという感じです。

▽ 1966年:
 「Strangers In The Night」 
Strangers In The Night」 「All Or Nothing At All」 「You're Driving Crazy」 「On A Clear Day」 「Yes Sir That's My Baby」 

 リプリーズで同じ年に出たアルバムですが、私にとってのシナトラは、ここら辺までということになります。
社会人になってしまってからのアルバムは、感動が薄れてしまうのと同時に、時間の感覚も薄れ、
つい最近の曲のような錯覚に陥ります。

 
■ 「Moonlight Sinatra」

シナトラに関しては、小中学・高校時代に、映画・ラジオ・喫茶店と、
色々なメディアを通して、接する機会がありました。
 映画にもよく出演していましたが、彼の映画は大抵観ているはずです。
ビング・クロスビーとのコメディなどもあったのですが、
幼かったので題名を憶えていません。

・「地上より永遠に」〜地味な戦争映画。アカデミー賞を取ったのですが、
 彼は戦争映画ではよく死んでしまうのでチョッと苦手でした。

・「黄金の腕」〜麻薬中毒のギャンブラーを熱演し、歌はありません。
 キム・ノヴァク、エリノア・パーカーがけなげでした。

・「上流社会」〜脇役で、確か記者の役。ビング・クロスビーとグレース・ケリーの
 「True Love」 が、ヒットしました。

・「抱擁」〜
「All The Way」 映画は地味だったけれど、歌は最高でした。

・「夜の豹」〜
「Lady Is A Tramp」 が、シャレた歌として憶えています。

 (キム・ノヴァクが「ピクニック」「愛情物語」でもけなげでした。)

☆映画:「オーシャンと11人の仲間」。
ディーン・マーティン、サミー・デイヴィスJr.、ピーター・ローフォードという、シナトラ一家総出演の、泥棒映画。
歌はサミーだけだったけれど、最高にオシャレな映画でした。
 マフィアとの関連を連想させるようなアブナイところが、彼の魅力でもあります。

 最近、リメーク版を観ましたが、ジョージ・クルーニーや、ブラビは好きな俳優ですが、
40年前にはあった、キャラクターの自然な描写、ユーモアとペーソス、ストーリーの一貫性などが欠落していて、
つまらない出来栄えでした。
 シャーリー・マクレーンが、酔っ払いのチョイ役で、シナトラに絡むシーンがありました。友情出演ですが、
ちょっとした所にも、粋な演出が感じられ最高でした。
 折角の、ジュリア・ロバーツも、あの程度の役では、納得できません。
…オシャレ感や、男のロマンは、にじみ出るもので、ダイレクトに表現してはいけません。  
        

■ 「オーシャンと11人の仲間」 : 1960


☆ ラス・ヴェガスには、忘れられない想い出があります。
・テンガロン・ハットなどをかぶったアメリカ人のグループが、
到着を待ちきれず、興奮しまくってポーカーなどではしゃいでいる、
ラス・ヴェガスへの機内。
車中から見える、映画で観たとおりの、きらびやかなホテルやライブ・ショウの案内看板。
ホテルに到着し、一歩入るなり目に飛び込んできた、フロア一面のスロットル・マシン…。

「オーシャンと11人の仲間」の世界へいよいよ自分も来たのだという実感で、心ときめいたものでした。

 観光ツアーだったので、他の人たちは、恐らくグランド・キャニオンの観光などを楽しみにしていたのでしょうが、
私は、ディナー・ショウもそこそこに、ギャンブル・フロアを目指したものでした。
 カード・ゲームやルーレットは、歯が立たないと早々にあきらめ、紙コップに入った25セント硬貨を頼りに、
スロットル・マシンに挑みました。

 綺麗な娘が飲み物を持ってきてくれるし、いかついガードマンが巡回しているし、
こんな場所を襲うなんて映画の世界だけだろうな等と、心もウキウキ、安心して遊び続け〜、
気がついたら夜が明けていました。
 
■ 「My Pipe」

 そして、自室にもどって一服しようと思ったとき、
パイプ・セットが無いことに気がついたのです。
当時、パイプ・タバコをやっていましたから、
肌身離さず持っていたつもりでしたが、後の祭りでした。一晩中遊んで、80ドルしか稼げなかったのに、
失ったものはずっと高価なものでした。
 一年かけて、じっくり育てたブライヤーで、お金に換算できない、こだわりのものだっただけに
当時はすごく悔しい思いをしました。
不覚にも一番気に入っていたパイプを持っていってしまったのです。
 今ではそれも、ラス・ヴェガスの懐かしい想い出の一つになっています。

 後年、ロンドンへ行った際、ダンヒル本店で、シリアル・ナンバー入りの高価なブライヤー・パイプを、
相当無理して購入しました。今は自宅でくつろいだ時しかパイプをしませんから、もう、なくす事は無いでしょう。

 シナトラやディーン・マーティンが良く似合う、チョッと不良の街で憧れたものですが、
現在のヴェガスは、家族でも楽しめるアミューズメント施設が沢山出来たようで、時代の流れを感じます。
 もっともあれ以来、私も行ってないので、どうなっているのかは知りませんが、
今でも、シナトラ一家と共演した?、私の懐かしい街に変わりありません。


 フランク・シナトラの魅力は、彼のダンディさにあります。
例えば、「夜の豹」の主人公のように、プレイボーイのクラブ歌手で、いいかげんだけれど歌は抜群…、
本当は、やさしく誠実。男の、艶っぽさ・切なさ・微妙な孤独感、が魅力なのです。

 
 話は、それますが、
「栄光への脱出」で共演したポール・ニューマンにも、それを感じていて、彼は私の大好きな俳優です。
 本格派、ハード・ボイルド私立探偵小説の映画。

▽ ロス・マクドナルド:
「動く標的」の主人公:リュー・アーチャー(映画では,ルー・ハーパー)は、ポール・ニューマンのはまり役でした。

▽ レイモンド・チャンドラー:
「さらば愛しき人よ」の主人公:フィリップ・マーローを、演じた、ロバート・ミッチャム。…好きな俳優です。

▽ ダシィェル・ハメット:

「マルタの鷹」
の主人公:サム・スペードを演じた、ハンフリー・ボガート。…彼は、ややタフなイメージが強い。


 〈 巨匠3人の他は、キワモノばかりが続出。後継者は、線が細いがマイケル・リュウインぐらいかな …。〉

 これらに共通するものは、普段いい加減な生活態度をしていても、いざという時、やせ我慢しても自分を売らない。
切ないけれど、体制に迎合しないで、自分の信念をとことん貫く。…男の美学が…たまりません。

   
■ 「Hard -boiled」 

 ポールニューマンは、
「ハスラー」 「スティング」でも、カッコのよいところを演じていますが、
我が、レスターヤングの魅力が、そのダンディさにあることも付け加えておきます。

 彼については別のところでふれますが、気取った帽子。斜めにかまえたサックス。
繊細な神経と、他人の批判にも、決して変えなかった独特の奏法。そして、白人女性との結婚と中傷。時代に迎合せず、
自分のプレイに苦悩する姿…。見事としか申し上げられません。

 再び、シナトラのアルバムの話ですが…、
▽ 1969年:「My Way」 頃になると、歌の内容・歌唱力共、私好みではなくなってしまいます。
私にとってのシナトラは、どうしても、50年代が中心になってしまいますし、中でも、彼のスィング・ナンバーは、
半世紀近く聴いていて、少しも色あせることなく新鮮です。
 そしてもちろん、これほど心豊にしてくれる歌手は、他にいるはずもありません。

 彼には、スロー・バラッドの良い曲も沢山ありますが、
「Only The Lonely」 などを聴いてしまうと、
それまでのハッピーな気分が台無しになってしまうような重苦しい雰囲気に陥ります。

▼ 1958年: 「Only The Lonely」
「Only The Lonely」 「Angel Eyes」 「What's New」 「It's A Lonesome Old Town」 「Willow Weep For Me」
 「Good Bye」 「Blues In The Night」 「Gues I'.. Hang My Tears Out To Dry」 「Ebb Tide」 「Spring Is Here」
 「Gone With The Wind」 「One For My Baby」 


 ブルー・バラード・アルバムと呼ぶらしく、シナトラのもう一つの顔であることは十分承知していますが、
私の場合、暗く淋しい作品については出来るだけ避けるようにしています。
 だからと言ってこのアルバムが素晴らしくない、というわけでは決してありません。
 
■ 「Only The Lonely
     
      
※ 私の、アーティストや作品の判断基準は、「好き・嫌い・どうでもよい」です。
過去の想い出、自分の思い入れの強さが最優先されますから、
当然偏っています。
 音楽の魅力は、たった一曲の歌や演奏が、いつまでも、
いつでも自分を心豊にしてくれることにあり、音楽に接した状況によって、
人それぞれ、受け取り方が違うのは当然だろうとも思っています。

 ファン気質から言えば、本来あってはならない事でしょうが、
アーティストの、全ての作品を好きになることは、まずありません。
 …結婚相手だったら大変な事になりそうですが、そんな自分勝手が許される気楽さも、
音楽の良いところかもしれないと思っています。…

          
 圧倒的な歌唱力と、音楽に対する深い想いが、ジョー・スタッフォードとフランク・シナトラからは、素直に伝わってきて、
一番好きな歌手ですが、この評価はごく常識的かもしれません。
 特別な二人とは別に、他の、女性ヴォーカリストについては、ページを改めたいと思います。

 ☆ 今回はテーマが違いますが、大好きなハード・ボイルド、スパイ、冒険小説等についても、いつか取り上げたいものです。


   ■ 「My Favorite Novels」


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